「植草一秀教授は無実だ」、真相隠す大きな力(1)

高橋清隆

『ライブドアPJニュース』2007年08月16日より連載

経済学者の植草一秀氏は2006年9月13日に起きた痴漢事件の罪に問われ、大学を解雇されている。8月21日に弁論終結を迎えるが、マスコミは依然問題を何一つ取り上げない。事件の不可解さと、これまでの公判で明らかになった矛盾点を7月16日のPJニュース「『植草一秀教授は無実だ』、検察が矛盾とわたしは見る」で指摘した。今5回連載では、前回の記事で触れなかった問題点を紹介する。そこから浮かび上がるのは、事件の真相を隠そうとする大掛かりな力の存在である。

被害者と逮捕者の関係は?

植草氏の容疑は午後10時すぎ、京浜急行下り列車内で女子高校生の尻を触ったとされるもの。報道によれば、被害者が「やめてください」と声を上げたため、異変に気付いた男性2人が植草氏を取り押さえ、駅事務室に連行した。

注目すべきは7月4日の第9回公判で、目撃者が被害者とされる女子高生と取り押さえた男性の一人が知り合いのように見えたと証言していることである。この目撃者は事件のあった電車に偶然乗り合わせ、「テレビで事件を知り、協力したい」と名乗り出た男性である。

06年12月20日の第2回公判では検察側目撃者が、取り押さえた男性のことを「私服」と呼んだ。この「私服」と呼ばれた男は3月28日の第6回公判で、植草氏を捕まえるとき首が絞まらないようネクタイ2本を両方つかんだと証言している。これは訓練された人間でなければできない発想ではないか。

検察側目撃者は電車内で取り押さえたのは一人だったと証言するが、植草被告と初期報道、第9回公判目撃者の証言は「2人」で一致する。被害者と知り合いの男と、捕まえた男(私服警官か)が関係していた可能性もある。

検察側目撃者の相次ぐ証言矛盾

第2回公判で検察側が連れてきた目撃者の証言には矛盾が多い。前回の記事では、電車内での立ち位置関係や友人にメールした携帯電話のバッテリー残量について指摘した。

立ち位置については、被害者と植草氏は進行方向右側に重なるように同じ向きで立っていたとしながら、植草氏の左肩は見えず、右肩が見えたと証言している。

携帯電話で友人に痴漢騒ぎが起きたことを伝えるメールをしたと証言している。午後10時39分の送信画面の写真を提出し、「横浜駅に差し掛かっているあたり」と述べているが、運行ダイヤによれば午後10時30分には横浜駅に着き、39分には上大岡駅の直前まで来ることになっている。

携帯画面の撮影は06年12月18日に検察で行ったと証言したが、これは履歴の閲覧可能期間の93日を過ぎた直後に当たる。

この目撃者は植草被告が眼鏡を掛けていたことを覚えていなかったが、これは極めて不自然である。第9回公判では、弁護側が日本大学のI教授に依頼して心理学実験をしてもらったことが明かされた。

事件当日の状況を再現して被告人が眼鏡を掛け、目撃者の目線から撮影した9枚の写真を学生に1枚につき8秒ずつ、合計72秒間見せた。警察に話したのと同じ3日後に集まってもらい、アンケートを採ったところ、20人中19人が眼鏡をはっきりと覚えていた。

身長が183センチある屈強なこの目撃者は、蒲田警察署で6~7時間話をし、検察庁に4回足を運んだことを公判で明かしている。

一方、第9回公判に現れた弁護側目撃者は初めから植草氏の顔を知っており、眼鏡の形状や持ち物、酔いの程度やつり革につかまりぐったりしていた様子に至るまで、証言が極めて詳細である。時間と場所、逮捕者が2人だったことも植草氏の証言や初期報道と完全に一致する

そして、第3回公判に出廷した男が「車内では一人で取り押さえた」と証言してから警察発表・報道が「一人」に変わった。

7月4日の論告で検察側は「第9回弁護側目撃証人は本件電車に乗車しておらず、仮に証言内容に近い状況があったとすれば、本件とは全く別の機会であったと考えるのが自然だ」と述べている。しかし、信ぴょう性に乏しいのが第2回の検察側目撃者ではないか。【つづく】

高橋清隆 高橋清隆

反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/

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