分断・分裂国家アメリカの大統領選挙の行方
社会・経済国際政治その他現在、アメリカを覆う「分断と分裂」の嵐を見るにつけて、1968年と2023年の類似性を感じざるを得ません。1968年といえば、ベトナム戦争の真っ最中でした。また、白人対黒人の人種対立も激化し、マーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺も起きれば、ロバート・ケネディ上院議員も凶弾に倒れた年。貧富の格差も拡大し、庶民とエリート富裕層の乖離や世代間の対立も目立ったものです。
そして2023年です。格差による対立・分断はさらに悪化しています。さらにいえば、CIAや情報機関によるメディア・コントロールも加速する一方です。はたまた、青天井の国防予算はアメリカの財政破綻をもたらしています。ウクライナ戦争による対ロシア代理戦は核戦争の可能性を秘め、中国とも対立することになれば、戦争のリスクも増大するばかり。
とはいえ、「戦争特需」に潤う軍産複合体もあれば、コロナのおかげでmRNAワクチン製造販売が急拡大し暴利を貪る製薬会社もあります。要は、当時も今も、「不都合な真実」を隠ぺいする政治と世論を誘導するメディア工作が功を奏していると言っても過言ではありません。
連日、悪意に満ちたニュースに辟易するアメリカ国民。結果的に、希望のもてない時代に戸惑い、ホームレスや自殺者の数は鰻登り。こんな社会は誰もが望んでいないものです。しかも、そうした分裂国家に輪をかけているのが人工知能(AI)の進化に他なりません。
AI やビッグデータを駆使し情報や世論をコントロールする側はますます力をつけ、コントロールされる側はますます考える力も働く意欲も失うという極端な分断現象が生まれています。これがアメリカの現実です。日本もその後を追っているように見えます。他人事と済ませるわけにはいきません。
さて、現在、アメリカでは2024年に向けて大統領選挙が真っ盛り。現職のバイデン大統領は80歳を超え、言動が懸念される毎日です。一方、返り咲きを狙うトランプ前大統領も77歳となり、日々、自己中ぶりを発揮し、物議を醸しています。
いわば「老老対決」の可能性が高いわけですが、これでは、どちらが勝利しても、分裂と分断は解消されず、ますますアメリカは「没落への道」を突き進むことになるでしょう。
そうした現状に危機感を強め、挑戦しているのがロバート・ケネディ・ジュニアです。言わずと知れた「ケネディ神話」の後継者。叔父も父も暗殺されました。しかし、それらの暗殺の真相はいまだに闇のなかです。
RFKジュニアはCIAの関与を確信し、真相究明を公約に掲げています。そのためバイデン政権からも抹殺の対象になってしまいました。主要メディアは無視してきましたが、人気が出てきたため偽情報で足を引っ張る動きが顕著になっています。
とくにネット上ではRFKジュニア潰しの偽情報が急増中です。そのためもあり、RFKジュニアはデジタル監視社会への警告も発しています。彼曰く「もはや隠れる場所はない」。その延長線上に世論操作を展開するCIAの解散を主張しています。
さらには財源のないまま浪費に走るバイデンを全面的に批判。実際、アメリカの財政赤字は31.8兆ドルに達し、200兆ドルが政府保証なしの借金頼みという有り様です。
この数年で小規模企業330万社は倒産し、コロナのロックダウンで16兆ドルが損失しました。とはいえ、その間、4兆ドルは中間層から超富裕層へ流れ、格差の拡大は止まるところがありません。
こうした課題を公にし、アメリカの政治を変えたいと主張するRFKジュニアですが、肝心のバイデン大統領も民主党本部も候補者同士の公開討論を否定しています。これでは「民主主義に反し、民主党の伝統にも反する」と糾弾するのがRFKジュニアです。
はたして、彼の運命や如何に?
次号「第346回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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国際未来科学研究所代表、元参議院議員