【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第152号:日米による「東アジアでの戦争態勢構築」に抗する―沖縄の〈現場〉から愛媛に帰って、再び、考える―

ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会

いま琉球弧では、中国軍を攻撃するためのミサイル基地群が島々につくられ、米日にNATO主要国を加えた合同軍事演習が中国の近くで、中国に圧力を加える形で、頻繁に行われている。中国軍を攻撃する「日米共同作戦計画」が両国間で策定・承認され、それに基づく実際の戦闘訓練も行われている。
さらに、昨年末から今年にかけて、沖縄・九州を中心に、自衛隊基地司令部の「地下化」のもくろみが明らかにされた。これは、琉球弧の戦場化を前提とし、その状況下で軍司令部だけの生存を目指す計画だと言える。
これら、いま、日米政府が進めている中国への攻撃的軍事態勢は、琉球弧を再び戦場―「捨て石」とし、奄美・沖縄の人びとの命の犠牲を当然の前提とする、常軌を逸した恐ろしいものである。
そして、台湾にはすでに米国の軍事顧問団が駐留し、米軍と台湾軍との合同軍事演習の実施を米議会が促す事態にまで至っている。日本軍(自衛隊)も、いま、台湾軍との連携に向けた動きを加速させている。
つまり、中国の近くで、日本・米国・台湾・NATOの合同軍による中国への攻撃的軍事態勢が構築され、さらに、昨年、大統領が交代した韓国・フィリピンもその輪に加わりつつある。いま、東アジアで、「戦争への導火線」が着々と敷設されている。

沖縄の現場を訪れて
このような状況の中、7月上旬の数日間、「ノーモア沖縄戦・えひめの会」の仲間と共に、沖縄を訪れた。辺野古新基地阻止の闘いの現場に行き、夜は、名護や本部の島ぐるみ会議の人たちと交流し、新基地に抗する闘いの状況などについて、お話を伺った。
今年の5月に愛媛に講演に来ていただいた照屋寛之さんら、うるま島ぐるみ会議の人たちに案内してもらって、陸自・勝連分屯地の視察もした。ここは、琉球弧のミサイル基地群構築の中で新たに対艦ミサイル部隊が配備され、かつ、それらミサイル部隊を指揮する連隊本部が置かれる予定のところである。今年度中の開設に向けて、すでに、新部隊用の隊舎が建築中であった。
「ノーモア沖縄戦・命どう宝の会」の新垣邦雄さんに嘉手納基地を案内してもらい、その後、今後の闘いにつながる貴重な意見交換をすることもできた。
これら数日間の滞在中に強く感じたことは、沖縄の現場で闘っている人たちは、もうこれ以上はできないというレベルで日々闘い続けているということである。辺野古への土砂搬入阻止の闘いへの持続的参加など、もともと、基地をめぐる闘いで手一杯な状況の上に、「琉球弧の戦場化」を阻止する新たな闘いを展開しなければならない過酷な状況に置かれている。沖縄の運動・メディア・人びとの新たな戦争への危機意識とそれを止めようとする意志の強さと広がりは「本土」(ヤマト)と全く違う状況だが、活動する人びとは、それでもまだまだ足りないと、いま、「戦場化に反対する全県組織」の構築へと向かっている。

戦争へと至るしかない国内状況
それに比べて、「本土」では、進行する日米による中国への攻撃態勢構築の事実はほとんど知られておらず、「日本が中国に攻撃される危機」のみが語られ、論じられている。そこからは、琉球弧の軍事態勢の強化・拡大は「日本防衛」のためと捉えられ、やむを得ないとされているように見える。
戦争の準備と開始は、その国の国民に、自分たちの国が攻撃されそうであるという「虚偽の現実」を示し、そして、それを防ぐには軍事的手段しかないと思わせることによって可能となる。いま日本では、「中国が攻撃して来る」という「虚偽の現実」が国民に提示され、多くの国民は、それを「本当の現実」だと信じ、そして、それを防ぐには軍備の拡大しかないと思わされ、思っている。このような状況は、戦争へと至るしかない状況である。
多くの人が信じているのは「虚偽の現実」であることを、そして実際にはどのような事態が進行しているのかを、あらゆる方法を使って人々に伝え、語りかけ、発信し、まずは、このような「認識状況」を急ぎ、変えていかなければならないと思う。

「本土」―ヤマトで何をするか
琉球弧を利用した対中戦略を平気で描き実行しようとする冷酷な日米政府であるが、後方拠点の確立を含む中国への戦争態勢の構築自体は全国的に展開される。私たちは、差別とレイシズムに基づく奄美・沖縄の「捨て石化」戦略そのものを当然、批判し反対していかなければならない。同時に、各地で展開されるこの「戦争態勢構築」を許さない闘いを通して、「琉球弧の戦場化」戦略を骨抜きにし、阻止していくことも目指さなければならないと思う。
たとえば、ここ愛媛・四国では、2019年10月ころから低空飛行が一気に増え始め、20年から21年にかけて年間目撃回数は以前の数十倍レベルにまで増えた。飛行コースも従来の「オレンジルート」から変化し、機種も輸送機が増えるなどの特徴を持つ。超低空飛行下の集落では、保育所の子どもたちが米軍機の音におびえて泣き出し、夜間飛行の騒音で子どもが寝つけない。夜間にも及ぶ低空飛行の急増というこの酷い変化は、琉球弧の島々での戦闘や、そこへの輸送を前提として行われ始めた訓練によるものである。
(沖縄で新垣邦雄さんに会ってすぐ教えられたことだが、報道によれば、米軍オスプレイの飛行訓練の高度制限が、日本政府の許容によって、これまでの150m以上から60mにまで下げられた。まさに、すぐ頭の上をオスプレイが飛ぶ訓練が全国各地で展開されることになる。)

大分市の住宅地での新たな弾薬庫の建設はじめ、日米の対中戦略における後方備蓄・輸送・訓練拠点化を原因とする激しい「変化」は各地に存在しているはずである。このような「本土」各地の状況と闘いをつなげ、つながる。その他、新たな戦争を止めたいと思う各地・各人もつながり、連携・連帯運動の態勢を創り出していく。そうして、沖縄に比べて圧倒的に弱い「本土」での反対運動を早急に強め高めていかなければ、臨戦態勢の完成は早まるばかりである。

戦争は止められる!
ところで、地図を見れば一目瞭然であるように、中国に対する軍事封鎖態勢の構築は、日本が共に行うことによって、初めて可能なことである。言い換えれば、日本が共に行わなかったら、できないものである。また、米・NATOは、日本が参加・協力しなければ、中国に対する戦争は行い得ない。米国政府・軍部は、はるか遠くからの遠征軍だけで中国に勝利できるという展望を持っていない。したがって、日本が抜ければ、アメリカは中国との戦争ができない――戦争をしないのである。
つまり、日本政府の意思―動き方次第で、この軍事封鎖態勢の構築を頓挫させることができ、東アジアでの戦争を未然に防ぐことができる。東アジアの一国、日本さえ変われば、それができるのである。日本は、東アジアでの平和の破壊者―戦争の推進者であったこの150年の歴史の反省に立って、この平和の方向への転換を選択し決断しなければならない。私たちは、政府にそれをさせなければならない。むろん、目前の現実を見れば、それは容易ではない。しかし、琉球弧・日本―東アジアでの戦争を防ぐには、そうしなければならないのである。

反対運動の全国化を! 東アジア反戦民衆大会を! 
早急に、「本土」―ヤマトでの運動を創り出し、前を行く沖縄の人びととつながって、反対運動を全国化しなければならない。そして、台湾・韓国・フィリピンはじめ東アジア各地・各国の人びととつながり連帯して、東アジア反戦民衆ネットワークを構築し、東アジア反戦民衆大会を開いて日米政府に東アジア民衆の強固な反戦の意思を誇示できないか。さらに、戦争阻止に向けた東アジアピープルとしての共同行動が展開できないかと思う。
さまざまなこと、あらゆることをしながら、私たち民衆の力で、国家による戦争を、必ず、止めたいと思う。

高井弘之(ノーモア沖縄戦・えひめの会運営委員)

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