【連載】コロナ渦の起源についての検証(矢吹普)

第3回 空母ルーズベルトのコロナ感染事件

矢吹 晋

アメリカ起源説が疑われるもう一つの事件は、艦長が解任されるにいたった米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」号の事件である。米原子力空母は、都合4隻の乗組員が新型コロナウイルスに感染した。セオドア・ルーズベルト号の場合は416名の大量患者が発生し、艦長は解任された。同時に艦長解任を強行した海軍代理長官も解任され、海軍は大混乱に陥る一幕があった。

空母ニミッツ号では2名感染、15名が検査中と報じられ、空母カール・ビンソン号も若干名が感染と報告された。横須賀で修理中の空母ロナルド・レーガン号でも乗組員が感染したと報じられた。

空母ルーズベルト号の出航は2020年1月14日だが、約5000名の乗組員の中に「サイレントキャリア(罹患しているが、発病するに至っていない者)」がいた可能性が強い。米CDC(米国疾病管理予防センター)は、米国の「患者1号」を1月21日と発表しているが、これはCDCによる確認が21日という話であり、この7日前にルーズベルト号に乗船した乗組員のなかに、すでに罹患者が含まれていたのが実態と見るべきではないか。

CDC当局が正式に確認した時点では、すでに一定数の「サイレント・キャリア」が存在したと見るのが自然だ。感染症の流行では、往々このような現象が見られる。むろん空母乗艦に際しては、一定の検査が行われる。しかしながら、未だ米国内で発生したか否か、分からないウイルスについて、乗組員だけを特別に検査することがなかったことは明らかだ。

図1(上):https://youtu.be/YGky5g0wVNoのスクリーンショット(米国海軍)
図1(下):https://youtu.be/CqDXS9HTHs4のスクリーンショット(米国海軍)

空母ルーズベルトは、2020年1月14日に「洋上における離着陸訓練」をやっていることから推測すれば、出航は14日当日あるいはその前日であろう。同空母の訓練動画は、上掲のように海軍ホームページで見られる。動画は1月14日付および3月15日付である。

ロイター通信によると、同空母は3月9日ベトナムのダナン港に着き、5日間滞在した[1]。この間に罹患した可能性が小さいことは、米国国防総省のホームページで公表された海軍作戦部長ギルディ提督の次のコメントから察せられる。

すなわち、ギルディ提督は、海軍感染者は86名中、57名は出動中(active-duty service members)、13名は軍属(Navy civilian employees)、11名は軍人家族等(Navy family members and five contractors)と説明し、海軍の約3分の1は海上勤務であり、約300隻のフリートの100隻に乗船していると補足した。さらに空母ルーズベルトは3月9日から5日間ダナン港に寄港したが、感染者3名をダナン港と結びつけて解釈するのは難しい。帰艦に際しては「強化された医療スクリーニング」を行っているからだ、と解説している[2]。

このギルディ解説は意味深長だ。空母ルーズベルトは1月14日の出航以来、ダナンに寄港した5日間を除けば、船員たちは隔離されてきた。そこで620名[最終検査では罹患者は1000名を超えた]にも及ぶ集団感染が生じた事実は、何を物語るか。

これはカリフォルニアの母港サンデェゴ(ノースアイランド海軍航空基地)で約4800名が乗り込んだ中に、「サイレント・キャリアー」(無症候の感染者)がいた事実を示唆している。当時は米国内で新型コロナ情報は広がっておらず、乗艦時に検査キットが用いられたとは想定しにくい。

もう一つ、ダナン寄港という経緯から「港町のバーガール」から感染したと想像されがちだが、当時のベトナムでは、ハノイ周辺に若干の感染者が現れただけで、流行してはいなかった。ここで強調しておくが、ベトナムは20年6月初めに到るまで感染者ゼロを誇っていた。

・感染拡大と艦長の解任

ルーズベルト号では3月24日、3人の感染者が報じられ、まもなくさらに5名に増え、その後200名と報じられた。3月31日、空母はグアムの米軍ドックに入港したが、クロージャー艦長(Capt. Brett Crozier)は30日付の国防総省宛の公開書簡で、「100名以上の水兵が感染した、戦争以外で兵士を死なせてはいけない」と、緊急救助を要請した。しかしこの書簡内容が流出したことを問題視され、クロージャー艦長は4月2日に解任された。

すでに米国にはコロナ感染者の扱いを決めたマニュアルがあり、グアム当局はこれによる扱いを主張したが、200名をすでに超えて、さらに感染が広がる形勢のもとでクロージャー艦長は海軍本部に緊急救援を求めたものである。

艦長は「いまは戦時ではない。この状況下で4000名以上の青年男女の生命を危うくしてはならない」と訴えている。米国海軍は太平洋艦隊2カ月の活動停止を決めたが、閉ざされた空間における感染の急速な拡大は横浜港で発生したダイヤモンド・プリンセス号事件を想起させる。

米国CDC統計による感染者の増え方を見ると、米国の感染者は1月21日の「1号患者(零号患者)」認定以後、1~2月は、足踏みを続けて、3月以後に爆発的な増え方を示している。これは2つの意味で他国のケースと際立った対照を見せている。

一つは、1号患者が発見されて以後の感染速度があまりにも鈍い。もう一つは、3月に入って以後、特にニューヨーク州のケースが示すように、爆発があまりにも急激である。1~2月の「足踏み」は、この間のコロナ患者を誤って「インフルエンザの患者に分類していた」ことを示唆する。

この間にいくつものクラスターが生まれていたために、それらが3月の大爆発をもたらしたと推定できるであろう。コロナ感染者を「インフルエンザと誤認したこと」が第一のミスティクである。

図2 アメリカの感染者数

・ゲノム解析が待たれる

米中間では、周知の通り、ウイルスの武漢起源説と非武漢起源説をめぐって激しい応酬が行われた。米国では2019年夏以来、電子タバコ肺炎説や死者激増の「インフルエンザらしくないインフルエンザ」について、多くの報道が行われてきたが、それらは実は新型コロナウイルスによる可能性の大きなことが、空母ルーズベルトにおける感染という衝撃的な事実を通じて明らかになった。これは明らかに中国経由ではありえない。

ここから分かるように、コロナウイルスは、米国(デトリック生物化学基地閉鎖)、武漢(世界軍人五輪)、欧州(不明)のいくつかの地点で発生した可能性がある。

実際にイタリアでは、1号患者から院内で8人、ほかで5人、都合13人が感染。感染経路は、英ガーディアン紙によると、下図の通り。イタリアの感染ルートは、中国経由ではなく、英国経由ルートとドイツ経由ルートと見られている[3]。

 

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矢吹 晋 矢吹 晋

1938年生まれ。東大経済学部卒業。在学中、駒場寮総代会議長を務め、ブントには中国革命の評価をめぐる対立から参加しなかったものの、西部邁らは親友。安保闘争で亡くなった樺美智子とその盟友林紘義とは終生不即不離の関係を保つ。東洋経済新報記者、アジア経済研究所研究員、横浜市大教授などを歴任。著書に『文化大革命』、『毛沢東と周恩来』(以上、講談社現代新書)、『鄧小平』(講談社学術文庫)など。著作選『チャイナウオッチ(全5巻)』を年内に刊行予定。

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