第4回 武漢ウィルス研漏洩説デッチ上げの細部(完)
社会・経済◎中国科学院が21年9月22日に発表した「ウィルス起源米中比較」(定性的定量的モデル分析)について
中国科学院は21年9月22日、「ウィルス起源米中比較」(定性的定量的モデル分析)と題した分析報告を発表した。これによると、米国における最も早いコロナ感染は、ロードアイランド州の19 年4月26日であり、最も遅いのはデラウエア州19年11月30日であった。
ところで、米国政府の公式発表は、20年1月20日とされている。科学院分析と比較すると、デラウエア州では、公式発表より50日早くウィルスが発見され、ロードアイランド州では、公式発表より9カ月早くウィルスが発見されていたことになる。すなわち、いずれも武漢市における19年12月20日報告、浙江省における19年12月23日報告よりも早く、米国で流行が始まった、という分析になる(新华社北京21年9月22日)。
筆者には、この分析は米中起源論争に決着をつける上で、極めて重要な分析報告と思われる。遺憾ながら、新華社報道は、この一つだけで、続報は一切ない。これは奇妙である。原因として考えられるのは、この分析報告に方法論あるいは分析結果に関わる疑問が残ること。もう一つは、発表後に予定されていた習近平-バイデン電話会談への影響を避けるため。これら二つの要素が考えられる。こうして米中間のウィルス起源論争は、まだ決着がつかない。
【脚注】
[1] 矢吹晋『コロナ後の世界は中国一強か』花伝社、2020年7月。
[2] 原載はMichelle Cortez記者、2021年6月28日、ブルームバーグ報道。豪ウイルス学者のアンダーソン氏は2019年11月まで武漢研究所に勤務した。
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1938年生まれ。東大経済学部卒業。在学中、駒場寮総代会議長を務め、ブントには中国革命の評価をめぐる対立から参加しなかったものの、西部邁らは親友。安保闘争で亡くなった樺美智子とその盟友林紘義とは終生不即不離の関係を保つ。東洋経済新報記者、アジア経済研究所研究員、横浜市大教授などを歴任。著書に『文化大革命』、『毛沢東と周恩来』(以上、講談社現代新書)、『鄧小平』(講談社学術文庫)など。著作選『チャイナウオッチ(全5巻)』を年内に刊行予定。