【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年4月 3日 (水) 川勝・吉村両知事発言を比較

植草一秀

静岡県の川勝平太知事は4月1日の新規採用職員への訓示の場で、

「県庁というのは、別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、物を作ったりということと違って、基本的に皆様方は、頭脳、知性の高い方たちです」

と述べた。

職業差別と受け取られ、県に批判が殺到。

川勝知事は辞意を表明した。

その川勝知事が4月3日午後、県庁で記者会見して次のように述べた。

「この15年間、静岡県民のために奉仕してきたことを大変光栄に思います。

特に、第一次産業、農業、酪農、水産業、これは最も大事にしてきた。

第一次産業に従事する皆さんを傷つけ、心から申し訳ありませんでした。

私の不徳の致すところです。

どうか皆さんの仕事に誇りをもって続けてください。」

冒頭の発言は不適切のそしりを免れない。

真意としては県庁に入庁した新規職員の仕事が高度な頭脳労働であることを伝えたかったということになるだろう。

「県庁というのは、別の言葉で言うとシンクタンクです。

世の中には実にさまざまな仕事があって、どの仕事もすべてが貴重でかけがえのない仕事です。

どの仕事が上でどの仕事が下などということはまったくありません。

人気ブログランキングへ

すべての仕事はかけがえがなく、どれも貴重な仕事ですが、そのなかで、県庁での仕事においては、みなさんの頭をフルに活用してもらわなければならないものです。

この大切な仕事に対して、誇りをもって一生懸命に取り組んでいただきたいと思います。」

などと述べていたら問題にはならなかっただろう。

各方面への敬意と配慮を欠いた発言であったため問題視された。

この失言に対して川勝知事は辞職という責任の取り方を示した。

メディアが川勝知事発言を大きく取り上げて報道したが、、こうしたメディア報道に関して二つの留意点を指摘しておきたい。

一つは、他の政治家の発言に対する批判報道とのバランス。

川勝知事の発言には批判されるべき点が含まれていた。

発言が問題視され、責任が追及されることは当然だった。

問題は、他の政治家の問題ある発言、問題行動に対して、メディアが同様に公正な対応を示しているのかということ。

もう一つは、川勝知事がリニア新幹線建設に対して静岡工区の建設着工に反対してきた実績を持つことに関しての対応である。

基本的に今回の問題発言とリニア建設に対する川勝知事の反対姿勢とは別の問題である。

この点を明確にしておく必要がある。

人気ブログランキングへ

大阪府の吉村洋文知事は、3月23日に茨木市で開かれた日本維新の会の会合で

「いま、批判しているね、名前は言いませんけど『(羽鳥慎一)モーニングショー』の玉川とかね。

いま、批判するのはいいけど、入れさせんとこうと思って」

「『入れさせてくれ』『見たい』といっても、もう、モーニングショーは禁止。

玉川徹は禁止と、言うたろうかなと思う」

と発言した。

吉村知事は『モーニングショー』に出演する玉川徹氏が2025年大阪・関西万博について批判的なコメントをしているとして、玉川徹氏と、同氏が出演する番組名を名指しして、同氏を大阪・関西万博に「出禁」にしようかと思うとの発言を示した。

吉村氏は「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会」の理事・副会長の職位にある。

大阪・関西万博主宰団体の最高責任者の一人。

この事業には巨額の公金が投入されている。

大阪・関西万博は公的事業である。

この公的機関の最高幹部が一民間人を出禁にすると発言したことは極めて重大である。

この吉村知事発言を主要メディアが大々的に報道しているか。

発言内容の悪質性では吉村発言の方が重いと見られる。

相対的な比較を行うことが極めて重要だ。

植草一秀の『知られざる真実』2024年4月 3日 (水) 川勝・吉村両知事発言を比較
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2024/03/post-c4d187.html
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

スリーネーションズリサーチ株式会社
http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html

メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
http://foomii.com/00050

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –

2024.03.24 ★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!
真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち
https://isfweb.org/post-34309/

2024.05.20 ISF公開シンポジウム:小沢事件とは何であったのか ~司法とメディアの共犯関係を
問う~☆ISF主催トーク茶話会:原一男監督を囲んでのトーク茶話会のご案内
https://isfweb.org/post-35051/

2024.05.18 ISF主催トーク茶話会:孫崎享さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
https://isfweb.org/post-35054/

2024.05.19 ISF主催トーク茶話会:吉田敏浩さんを囲んでのトーク茶話会のご案内
https://isfweb.org/post-35060/

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ