【連載】社会学作家・秋嶋亮の「リアリティ・オブ・ジャパン」

秋嶋亮(社会学作家)連載ブログ/3:カルトが日本を軍国化させる

秋嶋亮

公明党が戦闘機の第三国輸出に賛成したのだが、これには創価の信者たちも驚いたことだろう。

 

安倍政権が武器輸出を防衛装備移転という言葉にすり替え、(紛争を助長する兵器の禁輸を定めた)武器輸出三原則はとっくに骨抜きにされているが、それにしても「平和の党」を自称する宗教政党が、殺傷兵器の輸出を主導するという錯乱的な撞着には声を失ってしまうのだ。

 

ウクライナ戦争ひとつ取ってみても、NATO国は紛争地域に膨大な兵器を供給しており、むしろそれは国策化されたビジネスモデルなのである。どのような詭弁を弄したところで、日本が共同開発した戦闘機が殺人に用いられることは確実であり、「戦争とはテクノロジーに依存した暴力である」というアーレントの洞察の普遍を証明するのだ。

 

そもそも公明党はこれに先立ち、西南諸島の軍事基地化や、軍需産業の国有化や、敵基地攻撃能力の保有など、戦争法案を続々と成立させていることを忘れてはならない。

 

これがどういうことかと言うと、政教一致によって日本のミリタリゼーション(軍国化に体制変化させる運動)が加速しているということだ。より抽象的に言えば、宗教権力と軍需産業が結びつき、平和憲法の価値秩序を解体しているのだ。

 

平和学の提唱者であるJ・ガルトゥングによると、暴力は①直接人に危害を加える「直接的暴力」、②貧困や抑圧を加える「構造的暴力」、③①②の状態を正当化する「文化的暴力」の三タイプに分類されるという。この知見に照らせば、軍国化に信徒の合意を促す創価学会の諸力は「文化的暴力」の最たるものと言えるだろう。

 

「文化的暴力」とはシンボル(教祖の権威や教団旗などの象徴)の操作によってイデオロギーを内在化≒内心化させる洗脳であり、これにより信徒のディボーショナル(宗教的献身)な意識態度が最大限に引き出されるわけだ。

 

つまり「池田大作の後継者たる我々が兵器を輸出するのだから、これにかかわる行為の一切は正しいのであり、学会員はこの方針に従わなくてはならない。疑問を持つ者は信心が足りないのだ」と下意識に働きかけ説得するわけだ。

 

もっとも政教一致によるミリタリゼーション(軍国化に体制変化させる運動)は今に始まったことではなく、明治の開国に伴う廃仏毀釈によって神道が国教化され、天皇を最高神官とする疑似宗教国家が(近代化のため欧米の支配モデルに倣い)樹立された当時から繰り返されていたのだ。

 

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秋嶋亮 秋嶋亮

☆秋嶋亮(あきしまりょう:響堂雪乃より改名) 全国紙系媒体の編集長を退任し社会学作家に転向。ブログ・マガジン「独りファシズム Ver.0.3」http://alisonn.blog106.fc2.com/ を主宰し、グローバリゼーションをテーマに精力的な情報発信を続けている。主著として『独りファシズム―つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?―』(ヒカルランド)、『略奪者のロジック―支配を構造化する210の言葉たち―』(三五館)、『終末社会学用語辞典』(共著、白馬社)、『植民地化する日本、帝国化する世界』(共著、ヒカルランド)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―15歳から始める生き残るための社会学』(白馬社)、『放射能が降る都市で叛逆もせず眠り続けるのか』(共著、白馬社)、『北朝鮮のミサイルはなぜ日本に落ちないのか―国民は両建構造(ヤラセ)に騙されている―』(白馬社)『続・ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへ―16歳から始める思考者になるための社会学』(白馬社)、『略奪者のロジック 超集編―ディストピア化する日本を究明する201の言葉たち―』(白馬社)、『ニホンという滅び行く国に生まれた若い君たちへOUTBREAK―17歳から始める反抗者になるための社会学』(白馬社)、『無思考国家―だからニホンは滅び行く国になった―』(白馬社)、などがある。

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