【特集】新型コロナ&ワクチン問題の真実と背景

コロナとワクチンの問題に取り組む学生団体(インカレサークル)・三日月の会:「社会の病院化」に抗うために、学問の力を生かす

嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員)

三日月の会のシンボルマーク

(同会のXアカウントよりhttps://twitter.com/Mikazuki_stus

ISFはご存じの通り、1940年生まれの安斎育郎先生や、44年生まれの寺島隆吉先生ら、大ベテラン世代に牽引していただいている状況です。
そうした状況の中、東京大学の駒場キャンパスを中心に、コロナとワクチンの問題について学び、考え、行動する学生団体である「三日月の会」が今年から活動を始めました。
3月末、東京大学2年の男子学生のAさんと、明治大学2年の男子学生のBさんと面会する機会を得ました。
匿名を希望するとのことですので、以下で発言者を特定しない形で、活動内容やお考えを紹介します。

三日月の会が制作した立て看板。同会の24年2月7日付X投稿から転載。

Xでの発信、チラシやビラ配り、読書会の開催が活動の中心に据えています。

顔ぶれは東京大学以外も含む学生12人で、会員を募集しているとのことです。
駒場キャンパスの教養学部には、先に挙げた寺島先生も学ばれた「科学史・科学哲学」という薬害問題にも関わりが深いはずの専攻科があるのですが、残念ながらその系統のメンバーはいないのだそうです。

死生学、生命倫理、医療社会学といった学問の視点からコロナとワクチンの問題について考えています。
団体名の「三日月」を、生死を象徴する月の満ち欠けから取ったというところに、格調の高さを感じました。

コロナ禍の4年間を批判的に振り返る猫ミーム動画は、X上で200万回閲覧されるという反響がありました。
コミカルながらも、どれだけ不条理なコロナ政策とワクチン政策が我々に半強制的に押し付けられたのかが、時系列で体系的に配列され、回顧されています。
「面白い」「その通り」といった声と、「猫ミームの政治利用反対」「ただの反ワク」といった声とが交錯し、賛否両論だったと聞きます。
それでも、コロナはとにかく全員に対して恐ろしい病気で自粛は必須、ワクチンは非常に安全で有効、といった主流の物語とは別の見方が存在することを提示し、社会の中でコロナ禍についての論争を起こしたかったのだそうです。

三日月の会のユーチューブサイトから転載。

映像内にあるワクチン接種後死亡問題について、三日月の会はビラを作って問題提起してきました。

なお私が補足しておきますと、補償金の給付に関わる予防接種健康被害救済制度の認定件数は、コロナワクチンだけで2023年11月29日時点で5357件に上り、過去45年間のコロナワクチン以外の救済認定数の3522件を超えました。
この事実については、コロナワクチン問題に詳しいサンテレビが報道しました。
しかも他のワクチンの接種回数の方が倍以上に及び、コロナワクチンの方が接種回数が多いから、救済件数が多くても仕方がない、というよくある言い訳は全く通用しない状況です。

サンテレビ:「【特集】新型コロナワクチン接種後に妻を亡くした加古川市の男性の訴え~自らも闘病中で迅速な健康被害救済制度の審議結果を求める~」、2023年12月04日。
https://sun-tv.co.jp/suntvnews/news/2023/12/04/74137/

2023年のコロナワクチンの被害救済制度については、当初予算の3億6000万円が補正予算で397億7000万円、つまり約110倍に跳ね上がったという事実を知っておかねばならないと思います。

厚労省:「武見大臣会見概要」、2024年2月13日。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00661.html

私がお会いしたお二人とも西日本出身で、東日本大震災の原発事故の影響を感じなかったことから、今回のコロナ禍を初めての「緊急事態」として経験したそうです。
そして法的拘束力のない「要請」になぜ大多数の人々が従うのかについて、単なる「空気」で済ませず、学問的に考えることを目指すようになりました。
元々、マスクや自粛の強制に違和感を抱き、専門家同士の意見が大きく割れていることにも注目していたのだそうです。

様々な文献を学ぶうち、オーストリア出身の哲学者、イヴァン・イリイチ(1926~2002年)の「社会の病院化」論等(金子嗣郎訳『脱病院化社会』、晶文社、1998年を参照)の読解を通して、次のような考えに至りました。

警察国家では、事件を未然に防ぐためとして、国民全体が犯罪者予備群とみなされます。
それに対して、病院は、病気を防ぐためと称して、健康な人も含めて集団として監視し、全員が患者予備群とみなされます。
かつての医学は、患者が痛いと言い始めてから治療しましたが、近代以降の医学は予防という大義名分のもと、常に人々を管理しようとします。
自粛もまた、病が起きる前の管理であり、かくして社会全体が病院のようになっていきます。

こうした行き過ぎた予防医療への配慮が生んだ悲劇を生んだ、と三日月の会メンバーが解釈して問題視しているのが、能登半島地震でやけどを負った男児が、発熱していたことを理由に治療を断られ、長らく待たされた挙句に死亡した事件です。
この事件については、目の前のやけどという症状を治療するよりも、別の問題であるかもしれない病気(コロナ)への対策を重視したことで起きた、近代医学の末期症状のようなものだ、という解釈を示していただきました。

この事件の事実関係については、次の共同通信配信の『日経』掲載記事を参照してください。
巣鴨千石皮ふ科(東京)の小西真絢院長は、「新型コロナウイルス禍以降、発熱者の診察を後回しにせざるを得ない傾向がある」と指摘しています。

「災害時医療の困難浮き彫り 犠牲5歳の母、整理つかず」、2024年2月1日。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE31CZ00R30C24A1000000/

先程言及した猫ミーム動画が一部の人々に叩かれた関連では、ネットではマスク着用等に関して多数派とは違う振る舞いをする人が非難されるなど、ネットが監視に一役買っている側面もある、というお話を伺いました。

さらに、「社会の病院化」という問題に関連しては、雑誌『表現者クライテリオン』2023年11月号の特集「病院文明のニヒリズム 過剰医療の構造」(ビジネス社)にも学びつつ、政治・経済・文化の次元にも病院的なものが入っていることを、より明示的に意識するようになったとのことです。

政治については、医師会の政治献金、医師免許という国家資格。

経済については、病院へと流れていく社会保険料や、医療資本の膨張。

文化については、安心・安全を求めすぎる雰囲気が醸成され、清潔・健康のために全てが規制されるようになります。

参考として、「製薬産業政治連盟」によるパーティー券購入の実態をうかがい知ることができる、令和4年度の収支報告書を挙げておきます。
こちら

また、3月には同じイリイチが編集した『専門家時代の幻想』(尾崎浩、新評論、1984年)についての読書会を開いたと伺いました。

国会図書館では、この著作の電子データが無料で公開されています。
https://dl.ndl.go.jp/pid/12127467

この本には、まさに「顧客となった市民」「病棟となった世界」(17頁)といった表現が出てきます。
この本の英語の原題は“Disabling Professions”であり、専門家が人々を支配し、自律的な能力を奪うことを表しています。
かつては僧侶が持っていた権威を現代では医師が持つようになり、しかも国家権力と結びついて従わない人を処罰することすらありえます。

こうした話題と関連して、三日月の会が、WHOのいわゆるパンデミック条約への警戒を促したことも伺いました。

参考:「ISF独立言論フォーラム主催公開シンポジウム 第1部:WHOパンデミック条約の狙いと背景〜差し迫る人類的危機〜」(2023年11月29日公開、全3部)
https://isfweb.org/post-30764/

私が補足しておくと、パンデミック条約については、WHOに批判的な国際医療団体WCH(World Council for Health)の日本支部が、関連する国際保健規則(IHR)の書き換え問題と併せて、緊急事態宣言やワクチン接種等が、より強制的な仕方で行われるようになりかねないことについて、警告してきました。
これも私の補足ですが、国際条約に直接的な強制力があるわけではないですが、国際条約に整合するように国内法を書き換える仕方次第で、そのようになる恐れがある、とまではいえるでしょう。
日本はコロナ禍において、WHOに大変忠実な国だったことも想起しておきましょう。
なお日本は、パンデミック条約について、副議長国として議論を推進してきたことも、知っておかねばならないでしょう。

WCH:https://wch-japan.org/?page_id=1637

外務省:「パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(WHOCA+)作成のための政府間交渉(INB)起草グループ会合 結果概要(9月4日~6日及び22日 於:ジュネーブ)」(令和5年9月)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100564192.pdf

三日月の会のメンバーからは、民主的正統性に乏しいWHOが、医療と公衆衛生を名目に、各国の主権を侵害する可能性に対して、懸念が示されました。
本来健康政策は地域ごとに違いがあってしかるべきであるにもかかわらず、一元的な医療権力がグローバル化し、教育レベルで健康の定義までも決めている、とも指摘されました。

最後のテーマとして、コロナ禍での大学のオンライン化について、ご意見をお聞きしました。
これに対しては、東京大学はデジタル化が強制的に進展したことを進歩と捉えているが、これは学生の生活の利便を考えていない、という答えをいただきました。
確かにオンライン化は便利な面もあるが、一部ゼミや実習までオンラインになったのは、本当の学生のためになったのでしょうか。
こういったコロナ禍の悪条件の中でもせいいっぱい頑張るというのが、「優等生的リアリズム」かもしれないが、そうした苦しみ自体が不要だったのではないか、という根源的疑問が提起されました。コロナ禍がリモート化の口実になったのではないか、という鋭いご意見も伝えていただきました。

この問題についての東大の文書としては、次の資料をご覧ください。

「新型コロナウイルス対策タスクフォースの解散にあたって」、2024年3月25日。
https://www.u-tokyo.ac.jp/covid-19/ja/policies/message-taskforce-23.html

大学の内部から、こうしたコロナ禍とワクチン禍を巡る数々の不条理な状況への根源的な異議がほとんど上がってこない中、そもそも「古き良き昔の大学」はもう戻らないだろう、という見通しをお二人は示していました。
むしろ、ご自分達が実践している自主的な勉強会をはじめ、在野的な場所で学び続けていきたい、という展望があるそうです。
先に挙げたイリイチには、『脱学校の社会』(東洋・小澤周三訳、東京創元社、1977年)という著作もあります。

そうであるならば、政府や大手メディア、学会といった主流の議論の場所とは遠いところで、コロナとワクチンの問題の解明に力を入れてきたISFとしても、三日月の会と協同できることはあるはずです。茶話会・シンポジウム等の催しにおいでいただく他、ご寄稿をいただくことなどを想定しています。

私が20歳前後のころ、これだけ深くかつ広く学問を学び、しかも現状の理解と分析に役立てることは、到底できていませんでした。
ワクチン接種後の謎の死者急増問題、接種後死亡問題、多種多様な後遺症の問題、mRNAワクチン工場の新設問題、新型のレプリコン(自己増殖)型ワクチンを巡る問題、パンデミック条約とIHR改定問題等が山積する困難な状況の中、こうした志のある稀有な若者らの登場を喜びつつ、本稿を閉じさせていただきます。

※三日月の会はXに加えてnoteでも発信しており、とりわけ死生学・生命倫理・医療社会学についての文献案内は、大変参考になります。
https://note.com/mikazuki_stus/n/n83278543e540

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嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員) 嶋崎史崇(市民記者・MLA+研究所研究員)

しまざき・ふみたか 1984年生まれ。MLA+研究所研究員。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科修士課程(哲学専門分野)修了。著書に『ウクライナ・ コロナワクチン報道にみるメディア危機』(本の泉社、2023年6月)。記事内容は全て私個人の見解。主な論文に「思想としてのコロナワクチン危機―医産複合体論、ハイデガーの技術論、アーレントの全体主義論を手掛かりに」(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』第39号、2024年)。論文は以下で読めます。 https://researchmap.jp/fshimazaki 記事へのご意見、ご感想は、以下までお寄せください。 elpis_eleutheria@yahoo.co.jp

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