【連載】横田一の直撃取材レポート

政治に大きな変革は起こせるのか泉・明石前市長の「救民内閣」構想(後)(データマックス2024.3.6)

横田一

写真:和泉前市長と小野塚候補(現・市長)

政治に大きな変革は起こせるのか泉・明石前市長の「救民内閣」構想(前)(データマックス2024.3.5)はこちら

 

内閣支持率が過去最低を更新中の岸田政権にパーティ券問題が直撃、いまや政権末期状態に陥る一方で、立憲民主党など野党も低迷するなか、政権交代の牽引車役として注目されているのが泉房穂・前明石市長だ。3期12年の間に子ども予算を倍以上に増額し、10年連続人口増を達成した。市長辞任後も支援候補が連戦連勝している。2023年11月26日の東京新聞のインタビューで「救民内閣」を提唱、次期総選挙での政権交代可能とも指摘した。今年の政治は泉前市長を中心に動く──そんな予感を抱かせる発信力を誇っているのだ。

「救民内閣」構想をどう具体化するか

所沢市長選で地方選挙支援をいったん打ち止めにすると宣言した後、泉前市長は次期総選挙での政権交代に向けた活動を本格化させた。12月7日には立民議員らの「直諌の会 オープン勉強会」で講演し、国民負担増を狙う岸田政権を批判しながら「救民内閣」構想を紹介した。翌8日にも、同党の原口一博衆議院議員らが主催する「日本の未来をつくる勉強会」で講師を務め、ここでも救民内閣構想についての意見交換をしたのだ。

24年に「救民内閣」構想をどう具体化していくのか。注目点は、泉前市長は先の東京新聞のインタビューで「既存政党とは別の新党を立ち上げるというよりも、すべての既存政党を壊すイメージ」と述べつつ、「国民の負担増を許さない勢力を1つにまとめるのか、連合軍で戦って勝つのかは、いずれでも良い」とも語っていること。イメージとしては既成政党を壊すとしつつも「連合軍」、つまり野党との連携を否定していないことだ。

2つの選択肢がある。泉前市長が総監督に専念する場合と監督兼選手(プレイングマネージャー)の一人二役をこなす場合だ。前者なら、救民内閣に賛同する現職議員や新人候補を応援、自公連立政権を下野させることを目指す。後者なら政権交代実現のシナリオづくりをすると同時に、次期衆院選で明石市を含む兵庫9区(西村康稔前経産大臣が現職)などの小選挙区や比例区から出馬する。この場合は、「泉総理の救民内閣を誕生させよう」と呼びかけることが可能だ。

いずれも荒唐無稽な絵空事ではない。(「NETIB-News」23年6月30日「総理待望論が出始めた泉前明石市長に立民代表がラブコール」で紹介)、泉健太代表は実質的な出馬要請をしていた。「子ども・若者応援本部合同会議(有識者ヒアリング)」に泉前市長を招き、岸田政権の少子化対策を論評してもらったときのことで、最後に泉代表はこんな挨拶をしたのだ。

「恐らく今日ここにいる仲間たちの思いを私が代弁すると、『ぜひ、一緒にやっていただきたい』という思いをみんな持っていると思います。これはラブコールです」。

参加議員から大きな拍手が起こるなか、泉前市長も出馬要請に呼応する発言で締めた。

「政治は希望ですよ。政治家があきらめたら終わりです(参加議員から『そうだ』の声)」「今の状況が残念なものである以上、一番期待されているここにいる皆さまだと思います。期待しています。よろしくお願いします」。

今の政治を変えたいと考える野党議員との連携に前向きな泉前市長は、次期総選挙に出馬予定の元国会議員主催の集会で講演している。7月29日には、山口二区補選で岸のぶちよ候補(現・衆院議員)に僅差まで迫った平岡秀夫・元法務大臣の後援会主催の集会で講演。タイトルは「政治を変えれば、生活は良くなる」だった。なお平岡氏は次期総選挙で立民公認候補として出馬する予定だ。

9月3日にも泉前市長は、岡山三区で立民から出馬予定のはたともこ元参院議員の集会でマシンガントークを披露。こちらのタイトルは「今の政治は裸の王様」。このころから泉前市長は、志を同じくする「救民内閣」賛同議員を増やすべく、全国講演行脚を始めていたようにみえるのだ。総選挙が確実視される24年の政治決戦に向けて、23年から着々と布石を打っていたのは間違いない。

泉前市長の基本戦略は「横展開」と「縦展開」の二方面作戦。明石市政での成功事例を他の地方自治体に広げるのが横展開で、兵庫県三田市を皮切りに東京都立川市や埼玉県所沢市で実践、支援候補の勝利に貢献。なかでも所沢市長選では、元衆院議員の小野塚勝俊候補(現・市長)の出馬会見にも同席して告示前後に何度も現地入りをするほど全力投入した。その狙いを泉前市長はこう語った。

「小野塚勝俊という人の可能性、所沢という街の可能性、二重の可能性があるから、ここを全面的に応援して当選だけではなくて、その後の所沢が変わっていく姿も共に見ていきたいと思っている。それを周りの街も見てくれれば、まさに横展開が一気に加速する」(「NETIB-News」2023年10月10日「泉房穂・前明石市長が支援する小野塚勝俊・元衆院議員 所沢市長選」で紹介)。

もう1つの縦展開は明石モデルの施策を国政に反映させることだが、横展開が加速すれば、縦展開の追い風になるのは確実。所沢市長選などの地方選挙でも、救国内閣誕生に向けて布石を打っていたように見えるのだ。

支援候補が連戦連勝して岸田首相との“応援演説対決”も制した後、政権交代への道筋を具体的に語り始めた泉前市長──野党がどう連携して「救民内閣」誕生の気運を高めていくのかが注目される。今年は、泉前市長の言動から目を離すことはできない。

(了)

【ジャーナリスト/横田 一】

 

本記事は「政治に大きな変革は起こせるのか泉・明石前市長の「救民内閣」構想(後)(データマックス2024.3.6)」の転載になります。

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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