【特集】終わらない占領との決別

編集後記──終わらない占領と植民地主義との決別(後)(完)

木村朗ISF編集長

それでは、こうした流れを阻止して東アジアの平和と共生を実現するには何が必要なのでしょうか。

最大の問題は今の保守化・右傾化している日本の政治状況を根本的に変えることが出来なければ、憲法改悪と日本の核武装化や日米vs中露の本格的対立、最悪の場合は沖縄だけでなく日本全土が戦場となる大きな戦争にもなりうるということです。私たちは今こそ大きな理想と長期的なビジョンを持ちつつ現在の危機的な国際状況に極めて現実的に対処していかなければなりません。

その長期的なビジョンが東アジア不戦共同体の構築、軍事力に基づかない平和の構築に他ならないのです。対米自立と脱植民地主義、すなわち終わらない占領との決別、琉球・アイヌに対する植民地支配の克服、朝鮮半島・中国・東南アジアへの過去の植民地支配の精算を行うことがいまの日本の最大の課題です。

もちろん、それを実現するためには細川政権、鳩山政権に続く本格的な対米自立政権を樹立するための三度目の政権交代を成し遂げるしか選択肢がないことは明らかです。また、それを実現することがいかに困難であるのかは、ロッキード事件や小沢事件に象徴されるようなかたちで、これまで対米自立を志向する政治家や政権が米国の圧力や官僚の意向、メディアの情報操作と検察の国策捜査などによって次々と潰されてきた負の歴史が示しています(孫崎享著『アメリカに潰された政治家たち』河出文庫、2021年、平野貞夫『ロッキード事件「葬られた真実」』講談社、2006年、鳥越俊太郎/木村朗共編著『20人の識者がみた「小沢事件」の真実──捜査権力とメディアの共犯関係を問う!』日本文芸社、2013年、鳩山友紀夫/白井聡/木村朗共著『誰がこの国を動かしているのか』詩想社新書、2016年、平野貞夫/高野猛/木村朗共著『昭和・平成戦後政治の謀略史』詩想社、2018年、等を参照)

こうした歴史の教訓を踏まえて、そうした大きな壁を乗り越えるだけの強い意志を持った新たな政治勢力の結集が今こそ求められているといえます。

また、いまの日本の深刻な危機を克服するためには、現在思考停止に陥っている国民の意識と世論を変えていくことが特に必要です。既存の主流メディアではなく権力(政府・国家)と大資本(国際金融資本、多国籍・世界企業)から独立した新しい市民による独立したインターネットメディアの構築が喫緊の課題となっています。今年(2022年)4月にスタートする「ISF:Independent Speech Forum(独立言論フォーラム) 」はそうしたことを可能にするための一つの挑戦です。

まず私たち一人一人が、多様な情報の主体的批判的分析・評価を通じてさまざまな物事の真偽を見極めることができるようなメディアリテラシーを地道に身に着けることから始めなければならないと思います。

最後に、本書の企画を最初に提案してもらっただけでなく、ISF(独立言論フォーラム)の創設に尽力していただいた岡田元治氏に深く感謝申し上げます(完)。

 

●砂川平和ひろば「砂川闘争66周年記念集会 緒方修氏・木村朗氏による講演(2021.10.10)」

https://youtu.be/fIPjb1J03_U

 

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https://isfweb.org/2790-2/

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木村朗ISF編集長 木村朗ISF編集長

独立言論フォーラム・代表理事、ISF編集長。1954年北九州市小倉生まれ。元鹿児島大学教員、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会共同代表。九州大学博士課程在学中に旧ユーゴスラヴィアのベオグラード大学に留学。主な著作は、共著『誰がこの国を動かしているのか』『核の戦後史』『もう一つの日米戦後史』、共編著『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』『昭和・平成 戦後政治の謀略史」『沖縄自立と東アジア共同体』『終わらない占領』『終わらない占領との決別』他。

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