政治経済学者・植草一秀が読み解く 株価高騰の裏で何が起きているのか(紙の爆弾2024年5月号掲載)
社会・経済政治#財務省 #ワクチン #コロナ #日経平均 #株価 #インフレ #賃上げ
3月4日に日経平均株価が初めて4万円を超え、岸田文雄首相は「日本経済が動き出していると市場が評価」と歓迎してみせた。
しかし、3月下旬にも1ドル=約151円と円安は止まらず、物価高が私たちの生活を圧迫し続けている。
「今の株高」が示す日本の状況を、昨年末に『資本主義の断末魔』(ビジネス社)を上梓した政治経済学者の植草一秀氏が語る。(構成・文責/編集部)
日本経済は27年間停滞したまま
日経平均株価について、私は2022年末の時点で、3万6000円を突破すると予測しました。当時は信じる人がいませんでしたが、今年2月22日に史上最高値を34年ぶりに更新し3万9098円に、3月4日には4万円突破という動きを見せています。
日本の株価上昇の要因は3つ挙げられます。
1つ目は、日本の株価が割安であること。
2つ目は、企業利益が増加傾向にあること。
3つ目は、大幅な円安です。たとえばマクドナルドのビッグマックの価格で、日本は米国の半値。
まるでバーゲンセールであり、これは株価にも当てはまります。
1つ目の割安な株価については、日経平均で1株あたりの純利益を株価で割った、株の「益利回り」は6%強で、驚くほど高い利回りになっています。
一方、長期国債(10年)の金利はまだ非常に低く、最近上がってきたといっても0.8%程度。
両者を比べると、株の利回りが圧倒的に高い。株が買われ、株価が上昇するのはおかしいことではありません。
株価が上昇すると、「経済政策がうまくいっている証拠」と政治家は喧伝しますが、株高をもって日本経済が順調であるとか、経済が成長しているとは必ずしもいえません。
株式はあくまで企業利益だけを反映するものです。
実際、日本経済全体は、1995年から現在に至るまで、全く成長していません。
1995年以降の国内総生産(GDP)をドル換算した推移を見ると、日本は1995年を100とすれば2022年は76。
27年前に比べて4分の3に縮小しています。
同じ期間に米国経済は3.3倍に拡大し、中国に至っては24.5倍。
つまり、世界を見ると日本経済だけが成長できずに4半世紀以上も停滞を続けてきたのです。
賃金統計でも、日本の1人あたりの実質賃金は、1996年~2023年で17%減少。
世帯所得の中央値も、1994年から2019年までの25年間で、505万円から374万円へと約130万円も減少しています。
OECD(経済協力開発機構)が発表する各国の平均賃金(購買力平価ベースでの賃金所得)で、1995年に日本はG5(先進5カ国)で第3位でした。
それが現在ではG5と韓国を含めても第6位。
つまり、経済も賃金も大幅に悪化した中で、企業利益を反映する指標だけが良くなっているのです。
財務省発表の法人企業統計を見ても、第2次安倍政権時の2012年から2017年の5年間だけで、法人企業の当期純利益は2.3倍に拡大しました。
経済活動の結果として生まれる果実は資本と労働に分配されますが、資本側の取り分が拡大し、労働側の取り分が減少したということです。
つまり、労働者の賃金減少という犠牲の上に企業の利益が拡大し、株価が上がっているというのが現在の図式です。
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050