【高橋清隆の文書館】2024年04月23日02:23 「麻布米軍ヘリ基地」撤去集会開かれる ヘリ騒音の中80人が気勢
国際政治東京都港区の青山公園で18日、隣接する「麻布米軍ヘリ基地」の撤去を求める集会が開かれ、約80人が都心の基地の危険性と不法性を訴え、「六本木にも米軍基地はいらないぞ!」などとシュプレヒコールを上げた。主催したのは「麻布米軍ヘリ基地撤去実行委員会」(共同代表筆頭・川崎悟)。57年目の集会で、コロナ騒動による活動自粛期間を経て5年ぶりの実地開催となった。
首都中心の米軍の不法占拠に抗議続ける
同施設は「赤坂プレスセンター」と公称されているが、主催団体はその実態的機能から「麻布米軍ヘリ基地」と呼ぶ。敷地内には約1万平方キロメートルのヘリポートや米軍準機関誌『星条旗新聞』極東支社、宿舎、第500軍事情報旅団はじめ陸海空3軍の諜報(ちょうほう)機関が置かれている。日米合同委員会に出席する米軍高官将校や米国諜報機関員などは横田・厚木・横須賀の各基地からヘリでここに降り立ち、送迎車に乗り換えてニューサンノー米軍センターや米大使館、外務省などに向かう。
もともと旧日本陸軍第1師団歩兵第3連隊(麻布第3連隊)があった場所で、敗戦後連合軍が接収し、「ハーディ・バラックス」と名付けた。サンフランシスコ講和条約締結後の1957年、日米首脳会談で「ハーディ・バラックス」を含む都内の旧軍用施設は全面返還されることで合意している。
「麻布米軍ヘリ基地」撤去を求める運動が始まったのは1967年。当時隣接していた東京大学の生産技術研究所と物性研究所の職員組合が、春闘の要求項目の一つに同基地の撤去を掲げた。4月18日はその記念日に当たる。同年7月には港区議会に請願し、全会一致で「米軍ヘリポート撤去に関する意見書」が採択されている。
70年には東京都議会でも基地撤去の請願が全会一致で採択された。港区は毎年、防衛省や米国大使館、東京都に基地撤去の要望を繰り返している。「麻布米軍ヘリ基地撤去実行委員会」は1996年に発足。港区に住民へのアンケートと騒音調査を実施させている。
1983年の都道環状3号線の「六本木トンネル」建設に際し、米軍は青山公園の一部を盛り土して「臨時ヘリポート」を造った。東京都・東京防衛施設局(当時)・在日米陸軍司令部の3者協定で完成後は返還される約束だったが、米軍はこれを占拠し続ける。同委員会は「臨時ヘリポート」の返還を求め、東京都への監査請求と裁判の提起も行っている。
違法な低空飛行、米軍守る日本の行政と警察
集会は冷たい雨が降る中、トランペットの演奏で始まった。童謡『さくら さくら』など花のメドレーが一帯に響き渡る。川崎悟共同代表が「基地撤去の運動が始まってから今日で満57年。八重桜が満開の下、集会が開けることを喜び合いたい」とあいさつした。
「国連憲章により戦争が違法であり、武力行使と武力による威嚇を禁止する流れが進んだ」と概観し、ロシアによるウクライナ侵攻とイスラエルによるパレスチナへの攻撃を非難。「日本がなすべきは、両国に即時撤退と即時停戦を求めること。日本政府には、憲法9条を生かした平和外交を展開してもらいたい」と訴えた。
その上で、昨年11月の鹿児島県・屋久島沖での米軍輸送機オスプレイ墜落事故に言及。「米軍は原因が特定されないまま、3月に飛行停止措置を解除した。日本側もこれを追認し、自衛隊オスプレイが飛行を再開している。米軍と日本政府に抗議する」と表明した。
首都圏で米軍ヘリが低空飛行している問題について、「総理は国会で『ルールに基づいて飛行するのは当然だ。事実関係に基づいて防衛省などにしっかり対応させる』と答弁してから3年がたつ。しかし、依然として東京では低空飛行が続けられている」と告発した。
在日米軍は1999年1月の日米合同委員会で、低空飛行訓練に関して「日本の航空法が定める最低安全高度を用いることで合意した」として、その内容を公表している。わが国の航空法は、最も高い障害物の上端から300メートル以下での飛行を禁じている。ところが、100メートル台の低空飛行が何度も目撃されている。
川崎氏は「米軍側に合意をきちんと守らせるのは当然のこと。その姿勢もなく米軍の勝手な運用に任せるとしたら、日本政府にも責任の半分はあると言わざるを得ない。対等な日米関係をつくっていく上で、米軍の特権を許しているのは、日本政府のスタンスが全くだらしないから」と糾弾した。
共同代表の板倉博氏は、この1年間に実行委員会4人で東京都や防衛省、外務省を回って同ヘリ基地の撤去や当面の安全策・騒音対策を要請したことや、同基地の「フィールドワーク」(現地調査)を8回実施し、計百数十人が参加したことなどを報告。「米軍ヘリウォッチング」を呼び掛けた。
「米軍ヘリウォッチング」は、米軍ヘリの飛行状況をリアルタイムで報告し合い、情報共有する活動。これを踏まえ、「ヘリが飛んで来るのは木曜日が多い。時間帯としては、12~13時台と15~16時台が多い。日米合同委員会への送迎のためではないか」と指摘した。
板倉氏は同ヘリ基地が他の米軍基地と比べ小さく、暴行事件など直接の被害も少ないとした上で、「しかし、東京のど真ん中で撤去運動をやる意義は大きく、日米関係の本質が見えてくる。占領状態が続いていることが分かる」と吐露。
1951年のサンフランシスコ条約締結後も、米軍と日本政府の協議機関として日米合同委員会が残され、政治勢力としても自民党が創られて占領状態が継続していると指摘。「この基地撤去運動を、世論を変える運動につなげたい」と展望した。
東京都議や市民連合のメンバーなどから連帯のあいさつが続く中、米軍ヘリがけたたましいごう音を上げ、飛来する。この日も木曜。演説の声もかき消された。何人かが坂を駆け登り、基地をのぞこうとすると、フェンスの前に日本の警察官が5人ほど待機している。米軍基地をわれわれの抗議から守るためにそこに張り付いているのだ。
「うるせえんだよ、文句言ってくれよ米軍に。どこの国の警察なんだ?」
参加者の一人が怒りをぶつけた。
筆者がフェンスの隙間からカメラのレンズを向ける。と、警官が近付いて来て、注意する。
「中に、入らないでよ」
あぜんとした。
「柵があるのに、どうやって入るんですか?」
日本の警察は1945年8月30日、厚木飛行場に降り立ったマッカーサー元帥らの沿道警備の任を仰せ付かって以来、日本人から米国を守るために働いているのだ。
わずか15分の間に、3機もの米軍ヘリが発着した。
返還妨害する「維新」、ニュー山王周辺は「注視地区」で監視
連帯あいさつの中で、港区議の福島宏子・風見利男の両氏(いずれも共産)が興味深い事実を明かした。福島氏は、港区長、同議長、副議長とともに毎年東京都と防衛省に同ヘリ基地撤去の要請行動に取り組んでいることを報告。しかし、これに対し、会派「港区維新・無所属」が「賛成できない、やめるべき」と妨害の声を上げ始めているという。
風見氏は、港区南麻布のニューサンノー米軍センターの周辺1キロの範囲が土地利用規制法(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律。内閣府は「重要土地等調査法」と呼ぶ)に基づく「注視地区」に指定され、区民の日常生活が監視下に置かれる問題に触れた。4月12日に指定され、5月15日から施行される。
同法は安全保障上重要な施設や国境離島の機能を阻害する土地・建物の利用を防止する名目で重要施設周辺や国境離島などを「注視区域」「特別注視区域」に指定することができると定めたもので、2022年9月に施行された。国は区域内の土地などの利用状況などの調査を行い、阻害行為が認められた場合は利用者に対し、行為の中止などを勧告・命令できる。命令に違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される。
風見氏は、「住所や氏名、年齢、職業、その土地を持っているのか借家か、米軍基地反対の活動をしていないかなどが調査され、国に報告される。日米合同委員会が行われるニューサンノー米軍センターが極めて重要な施設である証明だ。麻布ヘリ基地と合わせ、この2つを撤去しろという声をさらに強める必要がある」と訴え、「そうだ」の掛け声と大きな拍手を浴びた。
「4・18麻布米軍ヘリ基地撤去集会決議」が採択された。決議文は占領状態を73年も続けている米軍と、この状況を許している日本政府を非難するとともに、4月10日の日米首脳会談で「安保3文書」による大軍拡予算や敵基地攻撃能力の強化を得意げに米国に報告した岸田首相の姿勢を「日本の国土を戦争に巻き込む非常に危険な路線」と批判。「日本の主権者は、私たち国民です。アメリカではありません」「日本中から米軍基地をなくすまでたたかい続けます」とつづる。
最後の自由マイクに、ニューサンノー米軍センター前で3回抗議集会を開いた「#みちばた」の「YouTuber.JT3Reload」こと川口智也氏が登壇。「右も左も関係ない。日米合同委員会を廃止しない限り、日本は永遠に植民地です」などと、5月23日午前の大規模集会への参加を呼び掛けた。
約70人の参加者は雨の中、「六本木にも米軍基地はいらないぞ!」「米軍は約束通り、青山公園を返せ」などとシュプレヒコールを上げながら、東京ミッドタウン前や六本木の街頭をデモ行進した。
※なお、この記事の原文は、こちらです⇒【高橋清隆の文書館】2024年04月23日02:23 「麻布米軍ヘリ基地」撤去集会開かれる ヘリ騒音の中80人が気勢
反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/