【特集】日航機123便墜落事件

日航123便墜落事故とさまざまな矛盾(市民記者記事・小幡瞭介)

市民記者:小幡瞭介(おばた りょうすけ)

第一弾、第二弾の記事では、海外紙が報道した記事や柳澤秀夫氏に関する情報などを紹介した。

この記事では、日航123便墜落事故に関する複数の資料が互いに矛盾していることについて紹介する。紹介する情報は以下の通りである。

①米軍輸送機C-130が火災を発見した時刻について
②フジテレビに入った事故の第一報の情報源について
③NHKが放送した事故の第一報について

上記の3点について順に解説する。

①米軍輸送機C-130が火災を発見した時刻について
まず、米軍輸送機C-130が火災を発見した時刻の矛盾について解説する。

2011年に運輸安全委員会が公開した「日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説」では、米軍C-130が火災を発見した時刻は19時15分とされている[1]。

ところが、全運輸省労働組合(現在の国土交通労働組合[2])の季刊誌『航空ふぉーらむ』第27号(1985年12月発行)には次のように記載されている。

≪18時59分、東京管制部に横田から情報が入った。「米軍輸送機C130が横田の北西三〇五度、三十四マイルの位置で航空機が墜落炎上しているのを確認」この情報は19時2分までに、RCCなど関係機関に伝えられた。≫[3]

『航空ふぉーらむ』に記載されている内容が事実であれば、米軍C-130が火災を発見した時刻は18時59分以前ということになる。

19時15分と18時59分以前では16分以上も差がある。米軍C-130が火災を発見した正確な時刻は何時何分だったのだろうか。

なお、1985年8月13付『サンケイ新聞(大阪本社版)』には≪墜落の直前を、米軍のC-130輸送機のパイロットが目撃していた。「秩父市の西北西約三十㌔地点。飛行機が炎上しながら落下していた」≫と記載されている[4]。

②フジテレビに入った事故の第一報の情報源について
次に、フジテレビに入った第一報の情報源に関する矛盾について解説する。

まず、事故当時フジテレビ報道局報道センター社会担当部長だった山村喜昭氏が、1985年9月3日付『民間放送』で述べた内容を紹介する。『民間放送』は日本民間放送連盟の機関紙である。

山村氏が述べた内容は以下の通りである。
≪「乗客乗員五百二十四人を乗せた日航ジャンボ機がレーダーから消えた」という一報は、十二日午後七時二十分ごろ、成田空港駐在のカメラマンから伝えられ、直ちに情報を確認後、「日航機がレーダーから消え、現在調査中」というニュース速報を流した。≫[5]

山村氏によると、フジテレビに入った第一報の情報源は自社のカメラマンだったとのことだ。

しかし、事故当時フジテレビアナウンサーだった露木茂氏は、『日本記者クラブ会報』2005年10月号で次の通り述べている。

≪20年前、8月12日午後7時過ぎ、報道センターでは中央の円卓を囲み、1日の反省会と泊まりの担当者への引き継ぎが行われていた。夏休暇中の変則シフトで、私は夕方の「スーパータイム」と昼の「FNNニュース11・30」双方のキャスターを担当していた。
会議終了間際、「日航123便がレーダーから消えた」というフラッシュが飛び込んできた。「オペセンへ急行!」「位置を確認しろ!」「航空専門家に連絡だ!」。≫[6]

なんと、露木氏によるとフジテレビに入った第一報の情報源はフラッシュ、つまり至急報だったというのだ。露木氏のいうフラッシュ(至急報)とは、時事通信が配信したフラッシュのことだと思われる。

フジテレビに入った第一報の情報源はフラッシュ(至急報)とフジテレビカメラマンのどちらだったのだろうか。

なお、フジテレビが放送した事故の第一報については、1985年8月13日付『報知新聞(大阪本社版)』に≪民放ではフジテレビ(関西テレビ系)が「女子プロレス」の終了間際に臨時ニュースのテロップを流した。≫と記載されている[7]。

ところが、こちらについても矛盾した情報がある。

事故当日、フジテレビでは19時から「女子プロレス」、19時30分から「月曜ドラマランド」が放送された[8]のだが、『週刊TVガイド』1985年8月30日号には、フジテレビが第一報を流した時刻は19時31分だった旨が記載されている[9]のだ。

正確な史実を後世に伝えるためにも、フジテレビ関係者には事実を公表していただきたい。

③NHKが放送した事故の第一報について
最後に、NHKが放送した事故の第一報に関する矛盾について解説する。

まず、事故当時NHK社会部記者だった池上彰氏が『文藝春秋』2013年2月特大号で述べた内容を紹介する。

池上氏が述べた内容は以下の通りである。
≪「いま入ったニュースです。羽田空港から大阪空港に向かっていた日本航空123便が、レーダーから消えました」
NHKの夜七時のニュース。終わりに近づいたところで、この原稿を読む松平定知アナウンサーの顔が緊張している。
一九八五(昭和六〇)年八月一二日のこと。この原稿は、私が大慌てでなぐり書きしたものでした。
(中略)
羽田空港詰めのNHK記者から電話で情報を聞きながら、近くにあった原稿用紙を引き寄せて書いたのが、冒頭の第一報でした。≫[10]

池上氏によると、NHKが放送した第一報は、アナウンサーの原稿読み上げだったとのことだ。

また、先ほど紹介した『週刊TVガイド』1985年8月30日号にも、NHK第一報はアナウンサーによる口頭アナウンスだった旨が記載されている[9]。

しかし、当時NHKに勤めていた塚田祐之氏は著書『その情報、本当ですか?―ネット時代のニュースの読み解き方』で、≪放送では、字幕で一報を伝えたあと、「19時ニュース」の中で伝えましたが、一報の内容以上にほとんど情報がない状況でした。≫と述べている[11]。

つまり、塚田氏は「第一報はテロップだった」と述べているのだ。

NHKが放送した第一報は、原稿読み上げとテロップのどちらだったのだろうか。

また、NHKに事故の第一報が入った時刻についても両氏の証言は矛盾しており、池上氏は「19時のニュース」が終わりに近づいたころに一報が入った旨を述べている[10]一方で、塚田氏は「19時のニュース」の放送直前、つまり18時台に一報が入った旨を述べている[12]。

NHKには、事故の第一報が入った正確な時刻や、NHKが放送した第一報に関する正確な情報を公表していただきたい。

まとめ
ここまで、時刻や情報源、NHK第一報に関する矛盾について解説した。

特に米軍輸送機C-130が火災を発見した時刻については、重要な情報であるにもかかわらず、「解説書」と『航空ふぉーらむ』では16分以上も差があり、非常に不可解である。

正確な情報を知っている人や組織は、事実を公表すべきだ。

参考文献
[1]運輸安全委員会. 日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説. 2011. p.18-20. https://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kaisetsu.pdf (参照2024-04-25).

[2]国土交通労働組合. “国土交通労働組合とは”. 国土交通労働組合公式ホームページ.
https://kokkoroso.org/about (参照2024-4-25).

[3]全運輸省労働組合. 日航123便事故 その時地上では…. 航空ふぉーらむ. 1985. 27. p.6-19.

[4]薄暮の山に赤い玉2つ. サンケイ新聞. 1985-08-13, 朝刊, p.20.

[5]成功した日航機事故報道. 民間放送. 1985-09-03. p.4.

[6]露木茂. リレーエッセー 日航ジャンボ機墜落③1985. 8. 12. 「生きてる!」本番3分前に映像が. 日本記者クラブ会報. 2005. 428. p.11.
https://s3-us-west-2.amazonaws.com/jnpc-prd-public-oregon/files/2005/10/jnpc-b-200510.pdf  (参照2024-04-25).

[7]NHKテレビ第一報. 報知新聞. 1985-08-13. p.13.

[8]テレビ番組表. 上毛新聞. 1985-08-12. p.16.

[9]東京ニュース通信社. レポートスペシャル テレビ各局が総力戦で臨んだ日航機墜落大惨事. 週刊TVガイド. 1985. 8月30日号. p.26-27.

[10]池上彰. 日航機墜落事故 NHKの第一報を報じた. 文藝春秋. 2013. 2月特大号. p.274-275.

[11]塚田祐之. その情報、本当ですか?―ネット時代のニュースの読み解き方. 岩波書店. 2018. p.62.

[12]同上. p.61.

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