【連載】紙の爆弾

【コリアン・ジェノサイド/裕仁最初の犯罪を問う(6)/前田朗(朝鮮大学校講師)】

前田朗

 前回紹介した資料「神奈川方面警備部隊法務部日誌」(姜徳相・山本すみ子編『神奈川県関東大震災朝鮮人虐殺関係資料』三一書房、2023年)から判明することを確認しておきましょう。

第1に調査です。

戒厳令下、陸軍法務官が神奈川県横浜で「朝鮮人犯罪」(実際は虐殺被害)を調査したのです。戒厳令は東京北部・東京南部・神奈川(横浜)・小田原の戒厳4地区を指定しました。そのうち神奈川(横浜)で調査がなされたのです。他の3地区でも調査が行われたはずです。3地区についても陸軍法務官等が任命され、各地で「朝鮮人犯罪」調査をし、報告書を提出したことでしょう。いずれも秘密とされたまま公表されていません。

第2に報告書提出です。

鈴木忠純法務官は戒厳部に多数の報告書を提出しました。鈴木法務官は9月16日、19日、24日、28日、30日、10月3日、5日に報告書を提出しました。9月16日、19日、24日、28日、30日、10月5日は「犯罪容疑者処理報告書」です。10月3日は「法務ニ関スル概況報告書」です。

9月19日の日誌には「災害ニ基因スル鮮人ニ関スル事件調査報告書提出方ヲ各部隊ニ通達シタリ」と記載されています。戒厳部で報告を共有したのです。

第3に「鮮人ニ対スル内地人迫害」「鮮人虐殺」です。

9月30日、「鮮人ニ対スル内地人迫害ニ干スル件及犯罪容疑者報告」、10月4日、「横浜市青木町栗田谷岩崎山鮮人虐殺ノ跡ヲ視察シタリ」、10月5日、「陸軍法務官鈴木忠純ハ憲兵長植木鎮夫ト共ニ横浜市青木町栗田谷岩崎山二到リ再ヒ鮮人虐殺ノ跡ヲ視察シ憲兵長ト種々打合ヲ為シタリ」とあります。

鈴木法務官は「朝鮮人犯罪」調査のために横浜に赴いたのですが、「鮮人ニ対スル内地人迫害」「鮮人虐殺」の証拠を発見したのです。

鈴木法務官だけでなく植木憲兵長も同行して「鮮人ニ対スル内地人迫害」「鮮人虐殺」の現場を視察しました。日誌において「鮮人虐殺」という言葉が2度用いられています。戒厳部内で「鮮人虐殺」という言葉が用いられたことがわかります。

第4に摂政裕仁の横浜視察です。

10月10日、「摂政宮殿下横浜横須賀震災状況御視察ノ為来浜セラレ」、司令官から状況報告を聴取しました。震災から40日を経た時点で摂政裕仁がわざわざ横浜を訪れたのです。報告の内容はわかりませんが、「鮮人ニ対スル内地人迫害」「鮮人虐殺」が報告された可能性が高いと考えられます。最重要事項だからです。

従来、日本政府が調査をしなかったかのように考えられてきましたが、誤りです。日本政府は朝鮮人虐殺を調査し、いくつもの報告書を保持していたのです。速やかに調査して悲惨な虐殺を確認したからこそ徹底的に隠蔽したのです。隠蔽後に摂政裕仁は安心して横浜を訪問しました。

「週刊MDSの2024年04月12日 1817号転載

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前田朗 前田朗

(一社)独立言論フォーラム・理事。東京造形大学名誉教授、日本民主法律家協会理事、救援連絡センター運営委員。著書『メディアと市民』『旅する平和学』(以上彩流社)『軍隊のない国家』(日本評論社)非国民シリーズ『非国民がやってきた!』『国民を殺す国家』『パロディのパロディ――井上ひさし再入門』(以上耕文社)『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『憲法9条再入門』(以上三一書房)『500冊の死刑』(インパクト出版会)等。

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