【特集】コロナ&ワクチン問題の真実と背景

電脳社会主義を導くビッグデータ政策

矢吹 晋

さて、新暴支膺懲と日本の議員たちが誤認した中国の実情を一瞥しよう。そこでは電脳社会主義への歩みが急ピッチだ。

2017年にサイバー安全法を作り、20年9月にグローバル安全イニシャテイブを発表した。王毅国務委員兼外相によれば、「他国の重要インフラを破壊し、重要データの窃取に反対する」よう呼びかけたものだ。21年11月には個人情報保護法を施行した。中国流の個人情報保護論からは、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)の規定を大いに参照していることが読み取れる。

Paper tag with individual information word in Japanese in shredded documents

 

21年6月にはデータ安全法も公布した。こうして 2017 年 6 月に公布された❶「インターネット安全法」および❷21年9月のデータ安全法、❸21月11月の個人情報保護法により、データ規制の枠組みが整った。これらの法律は、海外へのデータ持ち出しを厳しく制限する点に特徴があるが、むろん折からの米中衝突がその背景にあることは、いうまでもない。

Network security concept. Cyber protection. Anti virus software.

 

21年11月30日、中国当局は「ビッグデータ産業 5カ年計画」を発表し、工業情報化省が地方政府に通知した。これによると、20年現在 1兆元規模に育ったビッグデータ産業を、25年までに年率 25%の速度で発展させる目標を掲げている。この新たなデータ5カ年計画においても、外国の制裁の影響を受けないビッグデータ産業体系の構築を目標に盛り込んでいる。

中国は米中覇権争いの核心の一つが「データ主権」にあることを熟知しており、一連の法整備を進めているが、国内的にはアリババ集団やテンセントのような中国 IT の有力企業への規制も強化している。これは共同富裕論を意識した課税強化策でもあるとともに、これらの企業のもつビッグデータの外国流出防止も視野に入れている。

この文脈で注目されるのは、配車アプリの大手、滴滴出行(デイデイ)に対するニューヨーク取引所の上場停止措置であろう。滴滴については、21年7月末にも米紙WSJ が「株式の非公開化」を検討中と報じたが、有力 IT 企業のニューヨーク上場停止は、IT 覇権争奪戦がより一歩進んだことを意味している。

・極度に少ないコロナ死者数が示す電脳社会の合理性

一例を挙げよう。人口100万人当たりのコロナ死者は、米国 2363 人、日本145人に対して、中国は3.2人にすぎない。米国、日本の死者は、それぞれ中国の738倍、45倍だ(札幌医大コロナ統計:2021年12月1日現在)。

<中国電脳社会主義>の優位性は、コロナ対策に関するかぎり、一目瞭然ではないか。コロナ禍に直面して G7諸国(旧植民地に支えられ、現在は移民労働者に支えられる帝国主義諸国)は、日本を含めて、異口同音に中国の<権威主義体制あるいは専制主義>を批判しつつ、G7諸国こそが<人権を守り、民主主義に依拠しつつ、コロナ対策を進めている>と繰り返した。日本政府は<価値観を共有する G7諸国と共に歩む>と繰り返した。

しかしながら、彼らの説く<人権>や<民主主義>は、コロナ死亡率とどう関わるのか。中国と比べて2桁も多い死者を数えている国に他国の人権状況や政治制度を批判する資格はあるのか。米国や英仏等旧帝国主義諸国でなぜ人口比死亡率が高いのか。

最大の要因は、旧植民地から宗主国へ移民労働者として渡っ人々の劣悪な、人権無視の生活条件であろう。彼らは罹患しても病院に行き、治療費を払うことができない。それどころか罹患のままで3K職場へ働きに行き、コロナウイルスを拡散している。

米国の黒人等の非白人市民が治療費を払えない現実は、即所得階級・経済格差の問題であり、福祉国家の矛盾をコロナ禍が暴露したと読むことができよう。第2次世界大戦後声高に語られてきた福利・福祉政策の恩恵は旧植民地から出稼ぎにやってきた<2級市民>には届いていない。この現実をコロナウイルスが暴いた形ではないか。

国民への福祉政策はなるほど存在している。問題はその政策のカバー範囲が白人社会に限られている現実だ。コロナウイルスは忖度せずに、その虚飾をはぎ取ったのだ。コロナ死亡率の著しい格差の意味するものを今こそ、事実に即して再考すべきだ。

中国で行われているゼロ・ウイルス作戦が妥当な戦略か否かについては、筆者は異なる見解をもつが、それはさておき、中国における対策の有効性は、単にコロナ対策にとどまらないはずだ。ウイルスの流行をオンタイムで把握して、必要な対策をオンタイムで行う試みに成功したことは、中国全社会のガバナンス(治理)において、ビッグデータの活用が正しく行われて始めたことを示唆する。

これは単なる<上からの管理>ではない。それぞれの地域・職場の実態を当該地の人々が正しく認識して行動した総体としての成功、すなわち<ガバナンスの成功>だ。これを単なる監視社会、強権支配と矮小化すべきではない。人々がそれぞれの情況を的確に理解した上で生まれた、的確な情報に支えられた行動を根拠としており、電脳社会主義の一断面を鮮やかに示したものと筆者は解する。

コロナ対策の成功体験が中国社会全般に及ぶこと――これこそが電脳社会主義の全体像にほかならない。コロナ対策における中国の成功は、この効率的システムを全社会のあらゆる分野に応用する可能性を示唆しており、電脳社会主義の可能性は、コロナ対策を通じて大きく前進した点に筆者は着目している。

(「善隣中国塾での2022年2月8日の講演録」より転載)

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矢吹 晋 矢吹 晋

1938年生まれ。東大経済学部卒業。在学中、駒場寮総代会議長を務め、ブントには中国革命の評価をめぐる対立から参加しなかったものの、西部邁らは親友。安保闘争で亡くなった樺美智子とその盟友林紘義とは終生不即不離の関係を保つ。東洋経済新報記者、アジア経済研究所研究員、横浜市大教授などを歴任。著書に『文化大革命』、『毛沢東と周恩来』(以上、講談社現代新書)、『鄧小平』(講談社学術文庫)など。著作選『チャイナウオッチ(全5巻)』を年内に刊行予定。

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