【連載】ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 メールマガジン
ノーモア沖縄戦

メールマガジン第187号:軍事化迫る空と海 11・23県民集会>下/軍民分離原則触れず/国際法無視、沖縄戦の再現

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琉球列島の軍事化について安保関連3文書では、執拗(しつよう)までに「2027年」までの態勢づくりが主張されていることに注目すべきだ。
例えば、「5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する」と。
21年3月、当時のインド太平洋軍司令官デービッドソンが吹聴した「2027年中国の台湾侵攻説」が、政府・防衛省の公文書にまことしやかに明記されるという、とんでもない状況がつくられている。

有事収用へ調査

さて、安保関連3文書には、PFI船舶等の民間輸送力を最大限活用という耳慣れない言葉がでてくるが、これは、「ナッチャンWorld」などの民間フェリーを活用した自衛隊の戦時の海上輸送(機動展開)のことだ。これについては、すでに14年に統合幕僚監部「自衛隊の機動展開能力向上に係る調査研究報告書」(情報公開請求の提出文書)という調査が行われている。
この報告書では、「本土―鹿児島・名瀬港」から「前線基地・先島諸島」までは、PFI船舶が輸送を担当し、「前線基地」(先島諸島)から「戦闘地域」(交戦状態)への輸送は、自衛隊輸送艦が担うとされ、このためのPFI船舶の活用が謳(うた)われている。
重要なのは、報告書においてはこの時期に、「南西諸島の港湾施設所要概要」とし、「現在、沖縄県には重要港湾6港、地方港湾35港合わせて41港ある」として、「重要港湾は沖縄本島の那覇港、運天港、金武湾港、中城湾港、平良港、石垣港である。宮古島・石垣島までは、1万トン級の船舶が入港可能だが、与那国島は最大でも3千トン級までとなっている」と港湾の名前を挙げて調査し、さらに各港の水深、岸壁長、特徴を明記し、これらの有事収用に向けた態勢づくりを始めていたことだ。
つまり、ここで調査提言されているのは、空港だけでなく、沖縄―琉球列島の主要な港湾までもが、軍民共有にされる、軍事化されるということなのだ。

実戦的発動態勢

結論から言えば、閣議決定の「特定重要拠点空港・港湾」の指定は、自衛隊の南西シフトの一環として、宮古島などのミサイル基地化と合わせて、その完成を待って始まった対中国の戦時態勢づくりであり、その実戦的発動態勢ということだ。そして、これらは、琉球列島各基地の抗堪(こうたん)化―地下化、各種弾薬(庫)の大量備蓄・大量増築と合わせて、現在、急ピッチで進められている。
同時に琉球列島の実戦化は、見てきたように、その前戦基地司令部となり、後方兵站(へいたん)拠点となる九州・中四国の徹底した軍事化としても進行し始めたのである。

沖縄戦の教訓

しかし、私たちは、ここで問わねばならない。この沖縄―琉球列島の軍事化は、沖縄戦の再現ではないのか? 軍隊が住民を守らないどころか、住民を巻き込んで戦争体制をつくるという、とんでもない状況が始まろうとしているのではないのか?
そう、このデュアルユース(軍民両用)という名目で進められている琉球列島の空港・港湾の軍事化は、戦時において「軍民分離」を規定したジュネーヴ諸条約第1追加議定書について、何ら言及していないのだ(同条約第48条など)。離島住民の唯一の避難手段である空港・港湾の軍民共用化は、まさしく住民を戦火にたたき込むに等しいのだ。
最近、防衛省では、今さらながら先島諸島住民のシェルター(防空壕)づくりや住民避難などを謳い始めているが、安保関連3文書においても、特定重要拠点空港・港湾の閣議決定においても、この重大な戦時下の軍民分離の原則に触れないということは、国際法さえ無視した軍事政策であり、沖縄戦を全く教訓化していないということだ。
日米の南西シフトは、政府・自衛隊において沖縄―琉球列島での島嶼(とうしょ)戦争(島嶼破壊戦)―海洋限定戦争として想定されているが、初期の戦争においてはともかく、これが局地戦として限定されることはあり得ない。想定される戦争は、沖縄・琉球列島から九州―日本全国へ、そしてアジア太平洋の全域を巻き込む戦争に広がることは必至だ。
だからこそ、この戦火を止めるためには、琉球列島の軍事化、現在進行しつつある空港・港湾の軍事化という、本格的戦争態勢づくりを阻む、大きなたたかいが重要になっているのである。
予定されている11月23日の全県民集会を皮切りに、この炎が全国に広がることを強く願う。沖縄戦の再現を許さない、二度と戦争を許さないと誓うためにも、今こそこの沖縄全県民集会に連帯し、全国で連帯する行動を起こそう。そして、沖縄―奥武山公園へ全国から集まろう!

小西誠(軍事評論家)

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