【特集】沖縄の日本復帰50周年を問い直す

沖縄を戦場にさせないために私達に何ができるか?(2)

与那覇恵子

本稿では、メディアの報道によって派生するウクライナ戦争をどう捉えるかという認識の違いが引き起こす国民間のギャップを具体的に見ていきたい。まず、最初に生じるギャップは、沖縄が戦場になるという危機意識の有無という違いである。危機意識が欠如している人たちの背景には以下の理由があると考える。

Newspapers and Laptop. Different Concepts for News – Social Network or Traditional Tabloid Journals. Data Sources – Electronic Screen of Computer or Paper Pages of Magazines, Internet or Papers

 

①沖縄が戦場になる危機について沈黙を続ける日本の大手メディア

②政権を批判したり、社会問題を討議したりする番組やコメンテーターが安倍政権下でのメディア・コントロールによって一掃された

③娯楽・芸能・食べ物・ファッション中心のテレビ番組

④ネトウヨが支配するネット上からの情報に依存する世代の増加

⑤新聞を取らない、読まない人たちの増加

⑥戦争体験者・米軍占領下経験者の減少

⑦事問題としてコロナやウクライナ戦争だけに焦点を宛てるメディアと社会

⑧選挙戦で嫌なトピック(基地問題など)を避け夢物語の公約を歓迎する傾向

沖縄が戦場になるという危機意識を共通に持っている人たちにおいても、その内容にギャップが存在する。自民党や公明党の政治家やその支持者である人々は、戦争になったとしても「①自衛隊が沖縄や日本を守る。②対中戦争は中国が台湾に侵攻することを防ぐための防衛戦争である」と認識する。しかしながら、それらの主張は証拠をもってすでに反論されている。

①に関しては、自衛隊はすでに「自衛隊に住民を守る力は無い。住民の避難は沖縄県の自治体の責務である」と述べている。本土防衛の捨て石作戦で4人に1人の犠牲を払った沖縄戦の教訓も「軍隊は住民を守らない」であった。

②に関しては、日本政府は敵基地攻撃の選択(先制攻撃)も辞さずとしている。さらに10年以上前のジャパン・ハンドラーのジョセフ・ナイ氏による「米軍が台湾付近できっかけをつくり自衛隊を引き入れ、米軍は徐々に手を引き本格的日中戦争にし、日中両国が疲弊した頃に米国が介入し漁夫の利を得る」との案も知られている。戦争に積極姿勢を示す日本政府の現状は、米軍がきっかけを作らなくても日本がきっかけを作りかねない状況となっている。

一方で、同様に危機意識を持つものの日本のメディアによる情報だけに依存しない人たちの場合は、「①戦争になれば再び沖縄県民が犠牲となる。②日中戦争は、日本(自衛隊)を利用した米国の対中代理戦争である」との認識であり、それは上記の反論によって支えられている。

さて、物事の本質をつかむには、何が必要か。金・利権の動きと過去の事実(歴史)の2つがキーワードだと考える。金と利権の動きにおいては、そのことで得をして利を得ているのは誰なのかという視点であり、ウクライナ戦争での犠牲者は、ウクライナの一般国民と兵士、ロシア兵士であり、ウクライナ経済、ロシア経済である。

一方で武器売却や欧州におけるNATOの団結・勢力拡大やロシアの疲弊による弱体化で、経済的にも世界覇権においても利を得ているのは、米国である。

そうした出来事の背景として、過去に何が起こったのかという歴史的視点からは、敗戦直後から現在までの米国とウクライナの関係(1945年、戦勝国米国はナチス・ドイツは厳しく罰したが、ウクライナのネオナチは温存し関係を続けてきた)、冷戦終焉後のNATO拡大(NATOに対抗して作られたワルシャワ条約機構は消滅したがNATOは16ヵ国から30ヵ国へと拡大し続けた)、04年のオレンジ革命や14年のマイダン革命の顛末(イラク戦争でも影響力を発揮した国務省のウクライナ担当、ネオコン、ビクトリア・ヌーランド氏が暗躍したとされる。自由・民主主義を掲げる革命の結果が単なる親米政権の誕生である例は多い)が例示される。

歴史の事実として、ロシアの国境近くのウクライナの東の親露の地域のロシア語を話す住民に対するウクライナ軍の攻撃・殺戮が8年間も続いているという背景は無視出来ない。

事件の起こった当時はわからなかった本質が、後からわかるということがある。それを教えるのは「朝鮮戦争の正体」(孫崎享2020年)である。知識人らしい(?)抽象的表現で無難に指摘するのはバートランド・ラッセル氏(1955年)だ。

Washington DC, USA – April 9, 2008: Statues at the Korean War Memorial, located adjacent to the Lincoln Memorial, on a beautiful spring day

 

「人間の大きい集団が一見したところ高邁な動機によって動かされているのを見る時、表面の下を見て、これらの動機をこのように効率的にしているのは何であろうかと自問したら良い。見かけ倒しの高邁さに騙されることは極めて容易だからである」。

孫崎は、「軍産複合体が不当な影響力を持つことに警戒しなければならない」との1961年のアイゼンハワー大統領のスピーチを紹介するとともに「朝鮮戦争の起源」(1989年)の著者、ブルース・カミングス氏の「朝鮮戦争が朝鮮人にとって総力戦だったとすれば、アメリカ人にとっては自国の覇権を構築し再編する契機だった」との弁を引用する。ここで朝鮮戦争をウクライナ戦争に、朝鮮人をウクライナ人に置き換えて考えてみることが必要だと思う。

“Richmond, Virginia, USA – December 4th, 2012: Cancelled Stamp From The United States Featuring The 34th President Of The USA, Dwight D. Eisenhower.”

 

孫崎はさらに「米国は朝鮮戦争後、戦争を続ける国となった。戦争を行うことに利益を見いだす層がアメリカを動かすようになった」とし、「戦うための口実が作り出される時代に入った」と述べる。まさにそうである。

「9.11」がアフガニスタン戦争開始の口実であった。タリバン政権は「米国が証拠を出せばビン・ラディンを差し出す」と述べたが「証拠は無い」と発して米国は侵攻し20年間、戦乱が続いた。いまだにビン・ラディン氏が実行したとの証拠は無い。

イラク戦争開始の口実の大量破壊兵器も結局見つからなかった。当時、小泉首相は「見つからなかったからと言って無いという訳ではない」との国会答弁で煙に巻いたが、その程度の理屈で多くの国民が虐殺され国土が破壊されても許されるのだろうか?国際社会とはそのようなレベルか?と疑問と怒りを覚えたものだ。

さて、ウクライナ戦争が米国による対露代理戦争であるとの本質を捉えれば、次の米国による対露代理戦争である日中戦争を是非とも防がなければならない。そのためには、まず、これまで述べてきた国民間のギャップを埋めることが必要となる。

具体的行動として「講演会、学習会を通して沖縄県民間の現状認識と危機意識を共有する」、「平和を求めるための行動に繋げるため他県や他国との連携をつくる」。「戦争につながる政治家を拒否し、平和につながる政治家に政治を委ねる」というシンプルだが、以上のことを念頭に行動していきたいと考える。権力を持たない私達市民ができることは限られている。

しかしながら、それでも、自分達の未来を守る、積み上げてきた文化を守る、何より子供や老若男女全ての人々の尊い命を守るために、利己主義の塊と化した強者の思うがまま、黙って犠牲となることを断固として拒否したい。

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与那覇恵子 与那覇恵子

独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。

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