与那覇けい子さん詩集:COVID-19

与那覇恵子

不安が うずくまり始めた
朝刊を手にする人の瞳の奥で
人の消えた通りの片隅で

ふわふわと 漂っていた不安が
あちらこちらで 固まって
ぶくぶくと 形になってきた
脅威が生み出す日々の不安が
はっきりと 見えてきた

世界の向こうで
日本のここで
人が 死んでいく
痛む心を 抱え込む朝

けれど
見えてきたものがある

この国を牛耳る者達の
悲しいまでのおろかさと
この国をおごってきた者達に
つきつけられたこの国の
ありさま

見えてきたものがある

この地球を牛耳る人間の
悲しいまでのおろかさと
この世をおごってきた人間に
突きつけられたこの星の
ありさま

やっと
見えてきたものがある

人が消えた通りにひろがる
あの空の青さ
人が消えた通りに横たわる
あの動物たちの優雅さ

そう
コロナは ひもといて見せた
人間が地球で繰り広げてきた
おろかさを
鮮やかに 端的に

この国を手玉にとってきた者達の
おろかさを
手のひらを 広げて 見せた

「どうせ国民はすぐ忘れる」
首相に言われた国の人々は
記憶に刻み込めるだろうか

積み上げられた弱者の死体と
恐怖と不安の中に閉じこもり
怯え続ける人間達と
人が消えた空のすがすがしさと
大地にくつろぐ動物達のはれやかさを

そして

アジアの国々や隣国を見下し
つかの間の成金に舞い上がってきた
この国の三流国ぶりと
修飾語と忖度に隠されてきた
この国に座する者達の
恥ずかしいまでの
おろかさを

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与那覇恵子 与那覇恵子

独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。

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