与那覇けい子さん詩集:ギャップ
琉球・沖縄通信ギャップを埋めなければ・・
必死に 言葉をくり出した
すきま無く 詰めていけば 埋まる
隙間に怯え 止まることに怯え
次々と 吐き出されていった言葉たち
ゴミのようになった言葉の山に埋もれ
敗北感と 罪悪感と 無力感に
埋もれていきながら
積み上げれば 積み上げるほど
軽くなっていく言葉は 紙切れのように
天井に舞った
ありったけを出し切ったあとに
残っていたものは 漂っていたものは
空しさ と 自己嫌悪 と ため息 と
ギャップ
それは 目の前に 在るのだった
さらに 大きな口を 広げて
まだ そこに
ただ そこに
在ったのだった
力尽き 沈黙で埋めようとした隙間は
口をあけたまま 冷え固まってしまった
そうか
言葉は くり出されるものではなかった
吐き出されるものではなかった
積み上げていくものでもなかった
そうだ
言葉は 効率の良い大量生産ではなく
時間のかかる手作業で紡ぎ出されるものだった
あなたと わたしの間を
行き来するごとに
熱量をもらい エネルギーを蓄え
少しずつ 重さを増していく糸だったのだ
細い糸は寄り合って 少しずつ太くなる
さあ
手元の針を舐め舐め 目を細めながら
目の前のギャップを見すえて
埋める作業にとりかかろう
最後の隙間を埋めるように
差し出されるだろう
手と手を取り合うために
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独立言論フォーラム・理事。沖縄県那覇市生まれ。2019年に名桜大学(語学教育専攻)を退官、専門は英語科教育。現在は非常勤講師の傍ら通訳・翻訳を副業とする。著書は「沖縄の怒り」(評論集)井上摩耶詩集「Small World」(英訳本)など。「沖縄から見えるもの」(詩集)で第33回「福田正夫賞」受賞。日本ペンクラブ会員。文芸誌「南瞑」会員。東アジア共同体琉球・沖縄研究会共同代表。