【連載】植草一秀の「知られざる真実」

【連載】知られざる真実/2024年8月15日 (木)早田選手の知覧発言について

植草一秀

パリ五輪で卓球女子団体銀メダル、シングルス銅メダルを獲得した早田ひな選手が、帰国会見で「特攻資料館に行きたい」と発言して話題になっている。

早田選手は

「鹿児島の特攻資料館に行って生きていること、そして、卓球ができることが当たり前ではないということを感じたいと思う」

と述べたが、深い真意は不明である。

このことについてさまざまな論評がなされているが、日本が突き進んだ戦争について正しい認識を持つことが重要だ。

敗戦間際の特攻は究極の人権蹂躙である。

日本は戦争に突き進むべきではなかった。

戦争に突き進んでしまったあとも、早期に敗戦の決断を示すべきだった。

国家の誤りによって多数の国民が犠牲になった。

国民が犠牲になっただけでなく、他国の人々に多大な犠牲を強いた。

この過去を直視して見解を示したのが村山富市首相。

1995年8月15日、「村山談話」が発表された。

村山首相は次のように述べた。

「平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。

私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。」

 

さらに、こう述べた。

「われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。」

早田選手がこの思いで知覧に行きたいと述べているなら正当だ。

村山談話の核心は以下の部分にある。

「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。

私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」

日本は、遠くない過去の一時期、

「国策を誤り、戦争への道を歩んで」

「国民を存亡の危機に陥れ」、

「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」

たのである。

このことについて、村山首相は、

「疑うべくもないこの歴史の事実」を謙虚に受け止め、

「ここにあらためて痛切な反省の意」を表し、

「心からのお詫びの気持ち」を表明いたします

と述べた。

 

過去の過ち=疑うべくもない歴史の事実を直視し、

「痛切な反省の意」を表し「心からのお詫びの気持ち」を表明した。

このことを私たち日本国民は忘れてはならない。

この上で、村山首相は、

「この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます」

と述べた。

「植民地支配と侵略」によって近隣諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことについて、「痛切な反省の意」を表し「心からのお詫びの気持ち」を表明したことが重要だ。

しかし、談話の意味はそれだけではない。

村山首相は「国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ」たと述べた。

「国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ」た象徴のひとつが特攻である。

国家が国策を誤り、国民の人権を奪い、国民のかけがえのない命を奪った。

国家による犯罪行為=殺人行為である。

その犠牲者を追悼し、哀悼の意を捧げることが重要だ。

未来ある若者が国家によって犠牲にされた。

このような過ちを二度と繰り返してはならない。

この思いを確認する場として特攻記念館があるなら意味はある。

 

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植草一秀 植草一秀

植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050

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