【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.09.16 櫻井春彦 :ネオコン主導で戦争へ向かうNATO諸国に対し、ロシアは全面戦争の覚悟を示した

櫻井春彦

アメリカは韓国と8月19日から29日にかけてウルチ(乙支)フリーダムシールド合同演習を、また8月26日から9月7日までにかけて両国は双竜水陸両用上陸演習(海と空の両方)を実施した。
9月6日にはドイツと韓国が黄海で合同海軍演習を行なっているが、そのドイツの艦船2隻、フリゲート艦バーデン・ヴュルテンベルクと補給艦フランクフルト・アム・マインが台湾海峡を通過、中国を挑発している。

9月5日にはフォーマット2+2会議がオーストラリアのビクトリア州クイーンズクリフで開催され、同国のペニー・ウォン外相とリチャード・マーレス国防相、そして日本の上川陽子外相と木原稔防衛相が参加。
アメリカはオーストラリアを西太平洋における彼らの軍事的な拠点にしつつある。

アメリカは2017年11月、オーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更したが、これはインド洋から太平洋にかけての海域を一体のものとして考えるということだろう。

2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。
そして2021年9月にアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国は太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があり、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。
そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。

その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。

こうした動きに対し、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘しているが、その通りだ。

岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにしている。

2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道​があった。
亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。自力開発が難しいのか、事態の進展が予想外に早いのだろう。

トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。
中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。
「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。

そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。
当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。

太平洋におけるアメリカの軍事拠点になりつつあるオーストラリアでは言論統制が強化されている。
同国のアンソニー・アルバニージ首相はソーシャル・メディア・プラットフォームへの誤情報対策法案を提出した。
これが成立すると、基準を満たさなかった企業に年間売上高の最大5%の罰金を科す権限を規制当局は持つことになる。

プラットフォームXを所有するイーロン・マスクはこの法案を提出したオーストラリア政府をファシストと呼んだ。
アルバニージは激怒しているが、オーストリア政府が言う誤情報対策とは、政府にとって都合の悪い情報を封印する仕組みにほかならず、検閲法案だと言わざるをえない。
マスクの表現は間違っていないということだ。

オーストラリアをコントロールしているアメリカやイギリスの支配層はウクライナの戦況やガザの惨状、あるいは「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の深刻な副作用に関する情報を隠蔽しようとしてきた。こうした情報も誤情報対策法の対象になるはずだ。

アメリカやイギリスでは外交部門がロシアとの全面戦争へ向かっている。
彼らはすでに戦時体制下にあり、情報統制を強化しているとも考えられる。

NATO諸国から供与された長距離精密ミサイルをロシア国内の重要な軍事目標に対して使用することを認めることをアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とイギリスのデイビッド・ラミー外務大臣はキエフで強く示唆したと報道された​際、ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ軍に西側諸国から供給された最先端の高精度長距離システムを使用する能力はないと指摘、事実上、NATOとロシアが直接的な軍事衝突を意味すると警告している。ロシアがNATO諸国を直接攻撃する局面がありうるということだ。

そうした中、ロシアは9月10日から16日までオーシャン2024と名付けられた演習を太平洋、北極海、地中海、カスピ海、バルト海で実施、大西洋に原子力潜水艦11隻を配備したとも言われている。
ロシアに対する大規模な攻撃をアメリカが始めたなら、ロシアはアメリカ本土を攻撃すると警告していると見られている。

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※本稿は、櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/の下記の記事からの転載であることをお断りします。

「ネオコン主導で戦争へ向かうNATO諸国に対し、ロシアは全面戦争の覚悟を示した」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202409160000/

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