能登地震で高まる万博中止論──維新が直視すべき夢洲震災リスク(後)

横田一

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維新も本心では夢洲リスクを承知しているとしか思えない

「世界最大級の無駄ではないか」と疑問視された大屋根リング(350億円)をめぐる論戦を振り返っても、巨大地震時に大惨事となる“夢洲リスク”は容易に想像できる。

昨年9月9日の吉村知事会見で私は、当初の2倍に膨らんだ会場建設費のコスト削減策として「商店街アーケード方式」を提案した。未完成部分に安価な素材を置き換えることを勧めたのだが、次のような反論が返ってきた。「(大屋根リングは)清水寺の舞台にも採用されている『貫(ぬき)工法』で地震に強い。釘を使わずに安全で強い木造建造物を建てる日本の伝統建築技術の魅力を世界に発信していく」。

しかし森山浩行衆院議員(立民)が11月24日の予算委員会で「大屋根にクギやボルトなどが使用されている」との答弁を経産省から引き出し、吉村知事のウソがばれてしまった(本サイトの11月30日の「万博の国民負担増で『国民の身を切らせる』の正体露呈の維新」で紹介)。

素朴な疑問が浮かぶ。地震に強い「貫工法」採用の大屋根リングになぜ耐震補強が必要なのか。約400年間も清水寺は大地震に耐えているのに、万博開催中の半年間しか使わない大屋根リングの金属補強が必要なのか。並べ合わせてみると、地震に脆弱な夢洲という特殊事情を考慮したものとしか考えられない。

・清水寺(内陸) 釘なしで約400年耐震
・大屋根(夢洲) 金属使用で耐震補強

「夢洲は軟弱地盤で、地震で大揺れをするので内陸部よりもさらに高いレベルの耐震補強が必要で、だから大屋根リングに金属使用をした」と考えられる。能登地震で大きな被害を受けた珠洲市正院町と同様、夢洲も高リスク震災被害地域として位置づけられていたともいえる。

しかし吉村知事は8月2日の会見で、夢洲よりも内陸のほうが安全と真逆の主張をした。南海トラフ地震が万博開催時に襲ってきた場合の被害想定について聞くと、吉村知事は「夢洲が地震に弱いというものではないし、南海トラフ巨大地震が出たときにむしろ注意しなければならないのは、内陸の人が住んでいるほうのエリアです」と答えた。

これも虚偽発言である可能性が高い。内陸の清水寺は金属補強なしで大地震に耐えてきたのに、夢洲の大屋根リングは耐震補強が必要なことを対比すれば、夢洲のほうが内陸よりも地震に弱いことは明らかではないか。能登地震では軟弱地盤エリアで大きな被害が出たこととも一致しない絵空事を吉村知事は口にしていた可能性が極めて高い。

大阪の成長率は全国平均以下なのに「成長を止めるな!」と大阪都構想の住民投票でアピールするなど、維新の虚言癖は今に始まったことではない。共同代表の吉村知事や音喜多政調会長らに引き継がれ現在に至っている。

「身を切る改革」が看板倒れとなって、いまや「国民の身を切らせるバラマキ政党(第二自民党)」のような正体が露わになった維新関係者の言動は、信ぴょう性が非常に疑わしい。すでに万博の前売券販売は始まってしまったが、巨大地震襲来時の安全性が十分に保証されているとは言い難い。軟弱地盤エリアで大きな被害が出た能登地震を受けて万博震災リスクの再検証がなされるのかを注目する必要がある。

(了)

【ジャーナリスト/横田一】

(本記事は2023/11/30、NetIB-NEWSの転載原稿です。)

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横田一 横田一

1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。

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