日航123便墜落事故:ボーイング社のエンジニアたちもボイスレコーダーの内容に疑問を感じていた
社会・経済今回の記事では、アメリカの雑誌に記載された情報について紹介する。
アメリカでは『Aviation Week & Space Technology』という航空宇宙専門誌が発行されている。
実は、当該雑誌の1985年8月26日号に、ボーイング社のエンジニアたちもボイスレコーダーの内容に疑問を感じていたことがわかる情報が掲載されている。具体的には、以下の通り書かれている。
●『Aviation Week & Space Technology』1985年8月26日号
29ページ
≪‘Questionable’ Occurrence
Information made available so far from the cockpit voice recorder has raised several questions in the minds of Boeing engineers. Reports that the flight crew did not don oxygen masks until 10-12 min. after decompression is thought to have occurred are puzzling. Equally baffling is the indication that the crew reported total loss of hydraulic pressure early in the incident, yet continued to fly the aircraft for some 30 min.─an occurrence one Boeing engineer labeled “questionable.” In addition, the indication on the tape of a problem in the cargo area does not yet fit into the picture.≫
以下、筆者による翻訳
≪「疑義のある」出来事
これまでにコックピットボイスレコーダーから得られた情報は、ボーイング社のエンジニアたちの頭にいくつかの疑問点を浮かび上がらせた。発生したと考えられている減圧が起きてから10-12分後まで、乗組員が酸素マスクを装着しなかったという情報は不可解である。同様に不可解なのは、事故の早い段階で乗組員は油圧を全喪失したと報告したにもかかわらず、機体を30分ほど飛ばし続けたとボイスレコーダーは示していることだ。ボーイング社のあるエンジニアは、この出来事を「疑義がある」とした。さらに、テープが示している貨物エリア内の問題は、その状況とは辻褄が合わない。≫
上記の通り、ボーイング社のエンジニアたちも、ボイスレコーダーの内容に疑問を感じていたのだ。やはり、日航は生のボイスレコーダーを完全に公開すべきである。
なお、上記記事の文中に≪a problem in the cargo area(貨物エリア内の問題)≫とあるが、これは、事故調査報告書の「別添6 CVR記録」に記載されている航空機関士の「荷物の収納スペースのところがおっこってますね」との発言を指していると思われる。航空機関士が言及した「荷物の収納スペースのところ」とは、貨物室のことなのかもしれない。
ところで、1985年8月14日付『読売新聞』朝刊3面には、以下の通り書かれている。
≪緊急信号を発信した時、事故機は七千二百㍍の高度を飛んでいたが、飛行管制官に六千六百㍍への降下を要求した。これは貨物室で火災が発生した時にとる対策である。もし急激な機内の気圧減少が起きていれば、三千九百㍍に降下することに決まっている。≫
事故機が6600メートルへの降下を要求したことと、上で紹介した『Aviation Week & Space Technology』の記事に記載されている≪a problem in the cargo area(貨物エリア内の問題)≫との文言は、関連している可能性もあるのではないだろうか。
いずれにせよ、なぜ事故機は貨物室で火災が発生した時にとる対策である6600メートルへの降下を要求したのか、今一度考察する必要があるだろう。
また、6600メートルへの降下が、貨物室で火災が発生した時にとる対策であることは、現在あまり知られていない。この情報は、より広く周知されるべきではないだろうか。
なぜ事故機は6600メールへの降下を要求したのか。貨物室に何か問題があったのか。改めて深く調査すべきである。
一刻も早く事故の真相が明らかになることを願っている。
付記:「事故調査報告書別冊」を参考文献としている1991年出版の博士論文について
実は、「事故調査報告書別冊」を参考文献としている1991年出版の博士論文(博士学位分野名:工学博士)があるので紹介する。
川地俊一氏による1991年出版の博士論文『高サイクル疲労における微小き裂の進展特性に関する研究』の76ページに、以下の通り記載されている。
≪参考文献
(中略)
(3)運輸省航空事故調査委員会,航空事故調査報告書,62-2(1987).
運輸省航空事故調査委員会,航空事故調査報告書付録,別冊(1987).≫
上記の通り、川地氏は事故調査報告書別冊を自身の博士論文の参考文献としたのである。
川地氏は「異常外力の着力点」について記載されている事故調査報告書別冊の116ページにも目を通したものと思われるが、そうだとすれば、川地氏自身は「異常外力の着力点」について、当時どのように考えたのだろうか。
また、仮に川地氏が現在、「異常外力の着力点」に対する青山透子氏の見解について知っているのであれば、川地氏は青山氏の見解についてどう考えているのだろうか。
専門的な知識を持つ川地氏から見て「異常外力の着力点」はどう映るのか、非常に気になる。
今後、有識者の方々が「異常外力の着力点」に対する自身の見解を公表してくださることを願っている。
付記その2:現在あまり知られていない目撃情報について
実は、1985年8月13日付『東京中日スポーツ』2面には、現在あまり知られていない目撃情報が記載されている。具体的には、以下の通り書かれている。
≪「勤め帰りだった。午後七時ごろかなあ、西武新宿線南大塚駅を出て自転車で自宅に向かう途中だった。いつも高度が高くて、ジャンボ機が飛んでいるなあと、くらいにしか分からない機影が、この時に限ってジャンボ機とはっきり分かるほどの低空を飛んでいた。しかもキューンというジェット音ではなく、何か車が不完全燃焼を起こしているような音だった」(埼玉県川越市新田・久保田和市さん)≫
この目撃情報は、123便の真の飛行経路や墜落前の機体の状態を割り出す際に役立つと思われる。
上記の情報が、真相を究明する方々の役に立つことを願っている。
【参考文献】
• A McGRAW-HILL PUBLICATION. “JAL Crash Inquiry Team Examining Damage in Aft Pressure Bulkhead”. Aviation Week & Space Technology. August 26, 1985. p.28-30.
• 運輸省航空事故調査委員会. 航空事故調査報告書 日本航空株式会社所属 ボーイング式747SR-100型JA8119 群馬県多野郡上野村山中 昭和60年8月12日. 1987. p.309-343. https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/download/62-2-JA8119-11.pdf (参照 2024-10-09)
• 社説 ジャンボ機はなぜ落ちたか. 読売新聞. 1985-08-14. 朝刊. p.3.
• 川地俊一. 高サイクル疲労における微小き裂の進展特性に関する研究. 1991. p.76. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/3056350/1/85 (参照 2024-10-09)
• 運輸省航空事故調査委員会. 航空事故調査報告書付録(JA8119に関する試験研究資料)別冊. 1987. p.116. https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/download/62-2-JA8119-huroku.pdf (参照 2024-10-09)
• 墜落!爆発!炎上!私は見た. 東京中日スポーツ. 1985-08-13. p.2.
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