【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2024.11.17/櫻井春彦 :トランプがマスクをイランの国連大使と会談させ、イランとの開戦計画を阻止か

櫻井春彦

 ドナルド・トランプ次期米大統領はロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官(HHS)に任命、タルシ・ガッバード元下院議員を国家情報長官候補に指名、イーロン・マスクをニューヨークへ派遣してイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたという。

 HHSを構成する部局の中にはCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で中心的な役割を果たしたCDC(疾病管理予防センター)やFDA(食品医薬品局)も含まれている。アメリカを支配している人たちは医療システムを支配の道具として利用、COVID-19騒動の背後に国防総省が存在しているので、HHSは重要な省だと言える。

 国家情報長官は情報機関を統括する重要な役職だが、それだけに情報部門を支配しているネオコンがガッバードをすんなり受け入れることはないと見られている。

 トランプは前回、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン元DIA(国防情報局)局長を選んだのだが、この人物が局長だった当時のDIAは、バラク・オバマ政権が中東で進めていたアル・カイダ系武装集団への支援を危険だと指摘していた。

 オバマ大統領はムスリム同胞団を使い、地中海沿岸国で体制転覆作戦を展開するため、2010年8月にPSD-11を承認。「アラブの春」はその結果だ。

 その作戦ではムスリム同胞団だけでなくサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)も投入、リビアではNATOも連携させた。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月に倒され、カダフィ本人を惨殺された。

 シリア軍はリビア軍と違って強く、アル・カイダ系武装勢力だけではバシャール・アル・アサド政権を倒せない。そこでオバマ政権はリビアから兵器や戦闘員をシリアへ移動させるだけでなく、新たな軍事支援を実行した。

 ​DIAはオバマ政権が支援している「反シリア政府軍」の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと実態は同じだと指摘、その中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと報告している​。

 報告書の中でDIAは、オバマ政権の政策によってシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域が作られると警告しているが、2014年にそれがダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になった。そのダーイッシュは残虐さを演出してアメリカ/NATOの介入の口実を作ろうとしたが、2015年9月末にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。

 トランプはこうした背景を持つフリンを国家安全保障補佐官に任命した人事をヒラリーを支えていたネオコンや戦争ビジネスは怒り、フリンに最も近い副補佐官とされていたロビン・タウンリーがNSC(国家安全保障会議)で働くために必要なセキュリティ・クリアランスの申請をCIAは拒否、フリンは2017年2月に解任された。ガッバードを国家情報長官に据えられるのか、長官に据えても仕事をできるのか、不明だ。

 2015年の6月に欧米の一部支配グループはヒラリー・クリントンを次期大統領にすることを内定していたと言われている。この月の中旬にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合へジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたからだ。

 オバマ大統領は2015年12月にロシアの外交官35人の追放を命じ、アメリカとロシアとの関係を悪化させようとした。アメリカの大統領選挙に介入しようとしたからだとされているが、この「ロシアゲート」は民主党幹部がCIAやFBIと手を組んで仕掛けたでっち上げであることは明確になっている。

 ヒラリー勝利の流れが変わったとする噂が流れ始めたのは2016年2月10日。この日、ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問し、ウラジミル・プーチン露大統領と会談している。ドナルド・トランプが注目されるようになるのはその後だ。

 その一方、3月16日にウィキリークスがヒラリー・クリントンの電子メールを公表、その中にはバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるものがあり、サンダースの支持者を怒らせることになる。民主党幹部たちが2015年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールもあった。こうした情報はサンダースを支持していた人びとを怒らせることになる。

 オバマ政権で副大統領を務めていたジョー・バイデンはオバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めた。2016年の大統領政権でヒラリーが勝利していたならオバマやバイデンと同じようにロシアとの軍事的な緊張を高めていただろう。もっとも、トランプもネオコンの好戦的な政策を変えることはできなかった。

 トランプは今回、エリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツというシオニストを要職につけた。トランプがイスラエルと親密な関係にあることは否定できない。そこで注目されているのがマスクの動きだ。

 トランプが大統領選挙で勝利した3日後、FBIはイラン系アメリカ人のファルハド・シャケリの話を発表した。ファルハド・シャケリがイランの革命防衛隊に指示されてトランプを暗殺しようと計画していたというのだが、​ラリー・ジョンソンによると、この話はCIAの工作である可能性が高い。​

 シャケリは2019年にスリランカで逮捕された。92キロのヘロインを運ぼうとしていたのだが、この逮捕にはアメリカのDEAが協力、その後DEAはシャケリを情報提供者として採用、シャケリをイランの情報機関員だとする話に信憑性を持たせるため、彼をイランに移住させ、職を得るよう指示したという。シャケリの話を利用し、トランプが大統領に就任する前にイランを攻撃しようとしていた疑いが持たれている。

 このストーリーはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際に使われたシナリオに似ている。当時、軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画、それを正当化するため、ソ連やキューバが暗殺の黒幕だとする話が流されていた。

 シャケリの訴追が発表された後、マスクをイランの国連大使と会談させたのは、イランと間接的な協議しか行わなかったバイデン政権と対照的だ。マスクの派遣は好戦派のシナリオを潰すことが目的で、それは成功したのではないかと言われている。

 少なからぬシオニストを抱えたトランプ次期大統領はイスラエルを支援すると見られているが、マスクの動きに関する分析が正しいなら、和平に向かう可能性もある。

**********************************************
【​Sakurai’s Substack​】
※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「トランプがマスクをイランの国連大使と会談させ、イランとの開戦計画を阻止か」(2024.11.17XML)からの転載であることをお断りします。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202411170000/
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

★ISF(独立言論フォーラム)「市民記者」募集のお知らせ:来たれ!真実探究&戦争廃絶の志のある仲間たち

※ISF会員登録およびご支援のお願いのチラシ作成しました。ダウンロードはこちらまで。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202410130000/

ISF会員登録のご案内

「独立言論フォーラム(ISF)ご支援のお願い」

櫻井春彦 櫻井春彦

櫻井ジャーナル

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

Recommend Movie

columnist

執筆者

一覧へ