【高橋清隆の文書館】( 2024年11月19日): 薬事承認の期間短縮「一定の国の圧力ではない」と福岡厚労相、「国内問題」と強弁

高橋清隆

 新薬や海外で使われている医薬品の承認期間が短縮された背景について福岡資麿(たかまろ)厚労相は19日、「わが国の医薬品の承認の迅速化は、一定の国の圧力ではない」と述べ、あくまでドラッグロスなどを解消する「国内問題」だったと強調した。閣議後の記者会見で、筆者の質問に答えた。


👆12:21~筆者の質問(『藤江チャンネル』より)

 米国からの『年次改革要望書』には、「新薬申請(NDA)の迅速化」などが毎年のように書かれてきた。

 福岡氏とのやり取りの発端は、12日の会見。筆者が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の利益相反性についてただした際、「PMDAは米国が自国の製薬企業の製品を日本に早く承認させるため『年次改革要望書』を通じてわが国に創らせた機関」と前置きしたところ、福岡氏は「それにのっとって創られた組織ではない」と否定した。

 筆者は『年次改革要望書』の該当箇所を特定記録郵便で大臣に送付した上、次の15日の会見で改めてただすと、福岡氏はドラッグラグ解消と特殊法人の整理合理化の動きを背景に01年11月には閣議決定していたとして、「PMDAは『年次改革要望書』に基づいて設置されたということは当たらない」と改めて米側の圧力を否定している。

 そこで今回は、「新薬申請(NDA)の迅速化」などの要求が、確認できるだけで1997年版から記載されていることや、1999年版では「NDAの承認期限を12カ月とする」「2000年4月までに実現する」などと厚かましくも具体的な要求をしていることを指摘した上で、「2000年7月の『共同現状報告』には、『厚生省は、2000年4月1日から新医薬品の承認審査の標準的な処理期間を12ヶ月に短縮した。』とあることから、わが国における新薬の承認期間短縮は、米国の圧力によるものだったと理解してよいか?」とただした。

 これに対し、福岡氏は国民の健康向上と、約2.5年の差があるとされるドラッグラグ解消を背景に『革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略』を2007年に策定したことを挙げ、「その計画にのっとってPMDAの人員を拡充し、審査業務の充実に取り組んだ結果として、審査期間が短縮されたもので、わが国の医薬品の承認の迅速化は、一定の国の圧力ではない」と強弁した。

 筆者が「これだけ明白なのに、なぜ、認めないのか? 政府が米国の言いなりであることを認めることが、かっこ悪いと思っているのか? 国民は基本的に日本政府を応援したいと思っている。日本の独立に向け、国民の後押しを受けるためにも、まずは現状をお認めにならないか」と促した。

これに対し、福岡氏は「国内問題としての重要な課題として、ずっと取り組んできた。海外からの圧力からどうのこうのということではない」と強弁した。

 会見時間も限られている手前、筆者は「ぜひ、ビッグ・ファーマの圧力に翻弄(ほんろう)されずに進んでいただきたい」と要望するのが精一杯だった。

 福岡氏は『5か年戦略』にのっとってPMDAの人員を拡充し、審査業務の充実に取り組んだ結果と説明したが、その前年の06年(PMDA設立の翌年)の『年次改革要望書』には、「III-A-1. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の人員を大幅に増やし、特に薬事および生物統計においての人員を増やすことにより、PMDA が世界同時開発を促進できるようにする。」との記述がある。

 これは、同節の前文から、米国企業が日本市場で医薬品開発するための要求と読める。そもそも、医薬品や医療機器の規制緩和は1985年から始まったMOSS協議(market-oriented sector-selective talk, 市場重視型個別協議)の重点分野になっていて、米レーガン政権は日米貿易不均衡の問題と捉え、攻撃してきた。1984年当時、日本は医薬品で1900億円の輸入超、医療機器(当時は医療用具)は1600億円の輸出超だった。

 「承認を早めるための人員増加」はむしろ、医療機器の項目で『年次改革要望書』でも当初から挙げられていた。一方、医薬品については米国企業が日本に現地法人を置く形が多く見られていった。

 巨大製薬企業に突き動かされた米国政府からの圧力を隠し、「国内問題」「海外からの圧力からどうのこうのということではない」と頬かぶりし続ける限り、わが国に独立の機運は生まれないだろう。

※なお、この記事は「高橋清隆の文書館」2024年11月19日のブログ記事
「薬事承認の期間短縮「一定の国の圧力ではない」と福岡厚労相、「国内問題」と強弁」http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/2064714.htmlからの転載であることをお断りします。

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高橋清隆 高橋清隆

反ジャーナリスト。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。元ローカル新聞記者。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&K プレス)、『山本太郎がほえる~野良犬の闘いが始まった』(Amazon O.D.)など。翻訳にデーヴィッド・アイク『答え』第1巻[コロナ詐欺編](ヒカルランド)。2022年3月、メディア廃棄運動を開始。 ブログ『高橋清隆の文書館』http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/

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