【連載】無声記者のメディア批評(浅野健一)

憲法破壊・核武装狙う 安倍晋三元首相を永久追放せよ

浅野健一

・「キエフ」を「キーウ」にするのは愚の骨頂

日本では「ウクライナ=善、ロシア=悪」の二元論で、戦争当事者2国(侵略された国も応戦すれば戦争当事者となる)の片方だけを支援する翼賛体制ができあがっている。米国やNATOによる侵略では、侵略を受けた国が日本から支援を受けたことがあるだろうか。

政府は3月31日、ウクライナの首都の呼称に関し、ロシア語に由来する「キエフ」(Kiev)から、ウクライナ語の読み方に基づく「キーウ」(Kyiv)に変更すると発表した。「ロシアによる侵攻が続くウクライナへの連帯を示す狙い」(共同通信)という。

A news headline that says “Kiev” in Japanese.

 

キシャクラブメディアでは、日本テレビが3月24日、首都キエフの表記を「キーウ」に改めると発表。「日本政府の表記変更に合わせる」などとして、4月2日までに主要メディアはすべて表記を変更した。日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」も4月2日から、「キーウ」に変えた。赤旗は、政府が決めたからと説明した。日本政府が決めたら思考停止で追随するのでは、ジャーナリズムではない。

ウクライナでは、2014年に民主的に選ばれていた親ロシアのヤヌコービッチ大統領がクーデターで追放されるまで、ロシア語も公用語だった。親米の政権に変わってから、ロシア語をめぐって国内で激しい対立が続いている。単にウクライナか、ロシアかではない。

またテレビ各局がマウリポリを防衛するウクライナのアゾフ大隊(連隊)を取材し、説明なしに報じているが、彼らはロシア側がその存在を、「ウクライナの非ナチ化」という侵略正当化の理由にしている極右・国家主義・白人至上主義のネオナチ組織だ。ウクライナ東部ドンバス地方で、親ロシア派(分離派)に占領される過程で生まれた民兵組織がルーツ。2014年のクーデター後、内務省の国家親衛隊に統合され、正式な国家組織の一部となった。

Kyiv, Ukraine – March 13, 2015: Soldier of Azov regiment guards the armored military cars before loading it in trailers and sending to the East Ukraine.

 

公安調査庁(公調)もHPに「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」などと規定し、在日ロシア大使館は4月1日、公調が「アゾフ大隊」をネオナチ組織と認めているとSNSで発信した。これを受け、公調は同8日、「事実と異なる」「誤った情報が拡散されている」として、該当記述を削除した。

・民間人を武装させるゼレンスキー氏は英雄か

多くの論者が、「ロシアは武力行使を禁止した国連憲章などの国際法に違反してウクライナに侵攻した」「民間人への無差別攻撃などが、ジュネーブ条約など国際人道法に違反」「核兵器禁止条約に違反する、核先制使用の威嚇」を挙げてロシア側を非難している。一方、ウクライナの親米政権が2014年以降、東部のロシア系国民を弾圧してきたことを無視している。

前出の伊勢崎氏は今回の戦争には、「民族自決・分離独立」という問題があると指摘し、インドネシア軍占領下の東チモールでの原体験を述べた。

「インドネシアによる軍事支配に抵抗し独立闘争が始まったのは、1970年代。インドネシアによる虐殺はものすごかった。しかし、東西冷戦の真っ只中だったから、独立派の東チモール人たちは“アカ”と見なされ、テロリストとさえ言われ、米国を中心に西側諸国と日本とは、虐殺の張本人であるインドネシアを応援した。

冷戦終結後、西側は、まさしく“手のひら返し”で独立派を応援するようになり、結果、東チモールは1999年、国・国連が主導する国民投票が実施され、住民の8割の賛成で独立を決定。しかしインドネシア軍は悔し紛れに、退却と同時に東チモールを徹底的に破壊しつくし、その後で、国連PKOが暫定政府として介入し、僕が派遣された。2002年に独立した。冷戦時代には、東チモールでの虐殺は西側諸国ではほとんど報道されなかった。インドネシアによる残虐行為に沈黙を貫いたのだ。

東西どちらの陣営に支援されているかによって変わる、民族自決に対する国際社会の色眼鏡、そして『人権』に対する恣意性には、看過し難い問題がある。ウクライナ東部ドンバスの件は、まさにこれに当たると思う。この理由で僕は、ロシア側が開戦の理由にしているドンバスでのロシア系住民に対するジェノサイドの件に、国際社会はもっと耳を傾けるべきだと思う」。

私が共同通信のジャカルタ支局長だった1989年から1992年、東チモールに数回取材に入ったが、インドネシア軍の弾圧はすさまじかった。国連は武力併合を認めず、東チモールは国連の地図でずっとポルトガル領だったが、日本は米国に追随してインドネシアの実効支配を積極的に認めていた。

しんぶん赤旗日曜版(4月17日号)は〈いま国内の一部に、ロシアとウクライナ双方に問題があるとする「どっちもどっち」論がある。(略)「どっちもどっち」論は結局、侵略国を免罪し国連憲章に基づく平和の秩序を否定する議論につながる〉と断定している。

共産党から見ると、私も「どっちもどっち」論者に入るのだろうが、米国の肩入れでクーデターを起こし、民主主義的に選ばれた政権を倒して生まれたのが現在のウクライナ政権で、国内に住むロシア系国民、ロシア語を話す国民を差別・弾圧してきたことに、共産党が触れないのは不可解だ。

ゼレンスキー政権はロシアとの外交に失敗し、国民総動員法を発令、親ロの政党など11政党を活動禁止にし、国民に火炎瓶の作り方を教え、武器を与えて戦闘員にしている。これは国際法に違反しているのではないか。

また、米国率いるNATO諸国が軍用ヘリや重火器を提供し、総額13億ドル(約1700億円)の追加軍事支援を決めた。日本政府は4月19日、新たに防毒マスク、ドローン供与を決定、ウクライナの避難民の支援のため自衛隊機を周辺国に派遣する。ところが、インドが自衛隊機の受け入れを拒否し、混迷している。アジアの大勢は中立的だ。米欧日対ロシアの戦争になっているのである。

・大政翼賛体制の打破を明言した山本太郎氏

自民党から共産党までゼレンスキー大統領を英雄視する大政翼賛体制のなか、れいわ新選組の山本太郎代表が4月15日、衆議院に辞職願を提出し、7月の参院選に選挙区(複数区)から出馬する意向を表明した。

山本氏は記者会見で「参院選のあと3年間、国政選挙のない政治的な空白期間に、政治が暴走する」「大きく警鐘を鳴らしブレーキになれるような勢力を拡大する必要がある。永田町の中で、空気を読まない、厄介な人間たちの勢力を拡大したい」と述べ、「岸田政権は、放火しながら消火器を売りつける商法と一緒。この国を衰退させ続けたうえに、資本家に金が流れるように法人税減税を与えている。統計偽装しまくっている国、公文書を改ざんする国はほかにあるのか。国としてもう壊れている」と断じた。

さらに山本氏は「今は大政翼賛会政治になっている」と強調。「愚かなオッサンたちが、資本家の意思で動いている。軍事で、オフショアで儲けさせる。ウクライナ戦争でも、各国が武器の供与をしている」。

韓国のオーマイTVの記者は、ゼレンスキー大統領の演説に、れいわ議員を除く国会議員全員がスタンディングオベーションをしたことに触れたうえで、「日本の岸田政権とメディアは、韓国の次期大統領を親日大統領の誕生と見ているが、親日・反日ではなく、両国の政府を監視するのが野党やメディアの役割と思うがどうか」と聞いた。

山本氏はこう答えた。

「ウクライナ問題では、政治が一方の国に好都合な動きをしている。日本の報道は一色。これだけ長く戦争報道があったことはない。戦争と同じぐらい重大な問題が山積しているのに、一気に吹き飛び、見えなくなった。一番取り組むべき問題に関心が高まらない。韓国の新政権は、まず、国内の問題をやってほしい。ナショナリズムを煽るのではなく、人間の尊厳を守ることだ。それが平和な東アジアをつくる」。

ウクライナ戦争が続くなかで、参院選が実施される可能性が高くなっている。自公・維新・国民の翼賛政党が3分の2を超える議席を獲れば、日本の軍拡が急速に進むだろう。北海道の防衛強化と、すでに進んでいる南西諸島の軍事化が加速する。れいわの議員が増えることが今、最も重要になった。

(月刊「紙の爆弾」2022年6月号より)

 

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浅野健一 浅野健一

1948年、香川県高松市に生まれる。1972年、慶應義塾大学経済学部を卒業、共同通信社入社。1984年『犯罪報道の犯罪』を出版。89~92年、ジャカルタ支局長、スハルト政権を批判したため国外追放された。94年退社し、同年から同志社大学大学院メディア学専攻博士課程教授。2014年3月に定年退職。「人権と報道・連絡会」代表世話人。主著として、『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、講談社文庫)、『客観報道』(筑摩書房)、『出国命令』(日本評論社)、『天皇の記者たち』、『戦争報道の犯罪』、『記者クラブ解体新書』、『冤罪とジャーナリズムの危機 浅野健一ゼミin西宮』、『安倍政権・言論弾圧の犯罪』がある。

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