【連載】無声記者のメディア批評(浅野健一)

憲法破壊・核武装狙う 安倍晋三元首相を永久追放せよ

浅野健一

安倍晋三元首相がロシア・ウクライナ戦争の開戦以降、妙に元気なのは、敬愛する祖父の元A級戦犯被疑者、岸信介・元首相と岸氏の長女である母親の安倍洋子氏(夫は安倍晋太郎元外相)から受け継いだ血が騒いでいるからだろうか。ウクライナの現状を見れば、日本の人々も日本国憲法の非武装・平和主義で国を守れるわけがないとわかると勝手に思っているのだろう。

日本のテレビ・新聞がウクライナ戦争を連日大きく報道するなか、自民党・日本維新の会・国民民主党などの壊憲勢力が「中国が台湾に軍事侵攻する」「日本も攻められる」と煽り、日米同盟の強化・軍事費増・国軍創設を叫んでいる。その精神的支柱、“火付け役”が自民党最大派閥を率いる極右・日本会議・靖国派の安倍氏だ。

・自民党は安倍路線で動いている

安倍氏は2月27日、フジテレビ系の番組で、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有」について、国内でも議論すべきだと発言した。安倍氏はもともと核武装論者だ。国会議員(公務員)である安倍氏の発言は、「憲法尊重擁護の義務」規定(憲法第99条)に違反している。

Heading “Nuclear Sharing”

 

ところが、自民党の高市早苗政調会長ら靖国派や維新の会、そして極右・対米隷従メディアがこの暴言に賛同。報道各社も発言の違憲性を指摘しない。

岸田文雄首相は当初、非核三原則を順守するとして、「『核共有』について、政府として議論しない」(3月2日の参院予算委)と述べていたが、3月10日には、自民党を含む各党が議論することは容認する意向を示した。

3月に行なわれた報道各社の世論調査では核共有について、「議論すべきだ」が60%を超え、「日本の安全保障に不安を感じる」と答えた人は80%を上回った。安倍氏と御用メディアの目論見どおりになっている。

安倍氏は文藝春秋2022年5月号のインタビュー記事で、「核共有」議論を改めて強く促した。安倍氏は、ソ連崩壊後の1991年に独立したウクライナが核兵器を放棄していなければ、ロシアの軍事侵攻はなかったのではないかとの議論があるとして、「核の抑止力は安全保障上の戦略において重要」と述べ、核には核でという危険な報復的打撃の議論をエスカレートさせている。

4月3日には山口市での改憲集会で講演し、「憲法改正ののろしを山口県から上げよう」と訴えた。ウクライナ侵攻や中国の軍備増強といった緊迫する国際情勢に触れ、「今、敵基地攻撃能力ということが言われている。打撃力、私は打撃力と言ってきたが、基地に限定をする必要はない。向こうの中枢を攻撃するということも含むべきなんだろう」「日本が守りを専門にして打撃力を米国に任せる構図は大きく変えないとしても、少しは独自の打撃力を持つべきだと完全に確信している」と主張した。完全に憲法違反の暴言だ。

4月8日に開かれた福井新聞社主催の講演会でも、「最低限の打撃力は持つ必要がある」との認識を示し、「集団的自衛権の行使が可能になれば戦争に巻き込まれると非難されたが、実態は逆。ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に入っていればロシアは攻めなかった」「バルト三国ははるかに軍事力が小さいが、NATOに加盟しているため攻められていない。だからこそ同盟関係は大切だ」と語った。

福井テレビ(4月10日放送)にも出演した安倍氏は、「原子力施設でテロが起こりそうな状況であれば警護出動。有事になれば自衛隊が行く」と発言。日本海沿岸に原発を多数設置していることの危険性が指摘されるなかでの発言だが、法改定なしに自衛隊が原発の警護はできない。

国連職員としてアフガニスタンなどで国際紛争を調停してきた伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授(平和構築学)は開戦前の2月22日、「戦後、アメリカの原子力政策に支配されて、仮想敵国に向けて海岸線に原発を建設してきた日本。原子力産業の中枢にいて、経団連の幹部まで勤めた友人が、生前に僕に語った言葉に、原発は自分に向けた核弾頭、というのがある」と述べている。安倍氏は自公政権が進めた原発政策を反省すべきだ。

4月14日の安倍派会合では、安倍氏は日本の防衛費について「ミサイルの弾数、戦闘機・艦船の維持修理費、隊舎の建て替え費用などが不足している。当初予算で6兆円以上の確保が求められている」と述べた。

自民党はその後、防衛費を5年以内に国内総生産(GDP)の2%以上を目指して増やすことなど、防衛政策に関する提言の原案をまとめた。「敵基地攻撃能力」について、名称を変えたうえで保有することや、攻撃の対象に相手国の指揮統制機能を含めることが記されている。自民党では、「核共有」などについてさらに議論を進めて原案を修正したうえで、政府に提言するという。自民党は安倍路線で動いている。

Tank and stack silver coins military budget concept isolated on white background.

 

・朝日新聞編集委員の週刊誌記事介入事件

安倍氏の「核」暴言を巡っては、朝日新聞の“エース記者”峯村健司編集委員(4月20日退社)が安倍氏のパシリとして、週刊ダイヤモンド(3月26日号)が安倍氏に行なったインタビュー記事を公表前に見せるよう同誌に要求していたことがわかり、朝日新聞は4月7日付紙面で、峯村氏を停職1カ月の懲戒処分にすると報じた。

Tokyo, Japan – March 21, 2019: Sign of Asahi Shimbun in Japanese on the building Tokyo, Japan. The Asahi Shimbun is widely regarded for its journalism as the most respected daily newspaper in Japan.

 

ダイヤモンド編集部は3月9日、安全保障に関するテーマで安倍氏を取材。峯村氏は翌十日夜、取材を担当した副編集長に電話し、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「ゴーサインは私が決める。ゲラ(誌面)を見せてください」などと語った。

峯村氏は社内調査に、「安倍氏とは6年ほど前に知人を介して知り合った。取材ではなく、友人の一人として、外交や安全保障について話をしていた」と説明した。安倍氏に峯村氏を紹介したのは甘利明・前自民党幹事長だ。

安倍事務所は朝日新聞社の質問書に「ダイヤモンド社の取材を受けた際、質問内容に事実誤認があり、誤った事実に基づく誤報となることを懸念した。峯村記者が個人的に(副編集長を)知っているということだったので、(安倍氏が)マレーシア出張で時間がないこともあり、確認を依頼した」と回答している。

峯村氏は1998年の和歌山毒カレー事件で、林眞須美さん(再審請求中)夫妻の家に一週間上がり込み、「無実を信じます」などと言って取材。夫妻が逮捕されると彼らを犯人視した記事を連発した。峯村氏は当時、新人記者で、大津支局から応援出張していた。彼らは、林夫妻逮捕報道で新聞協会賞を取ったと自慢している。

今回の行動を峯村氏は反省するどころか、ネットの「note」(4月7日付)で、〈朝日新聞社は2014年、慰安婦報道を検証した特集紙面で誤報を取り消しながら謝罪をしなかったことや、東京電力福島第一原子力発電所事故にかかわる「吉田調書」をめぐる報道などで、読者や社会の信用を大きく傷つけた〉などと述べ、朝日新聞の彼への〈取り調べは始めに「処分」の結論ありき〉として不公正な処分と主張した。峯村氏のこの朝日批判は不当だ。法的対応まで示唆しているが、それなら記者会見して説明するべきだ。

・盟友プーチン氏になぜ停戦を求めないのか

安倍氏は中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との話し合いは困難で、力による抑止しかないと強調するが、今、日本中が悪魔と見るプーチン大統領と27回の首脳会談(首相在任中の訪ロは11回)を重ね、「ウラジーミル」「シンゾー」と呼び合う仲を自慢していたのを私たちは忘れない。

2014年、ロシアがクリミア半島を併合し、欧米が経済制裁をかけた最中にも、安倍氏はプーチン大統領と、地元・山口県長門市で3時間も会談し、経済協力プランに合意している。安倍氏は4月19日付の仏紙ルモンドでは、「国際社会はクリミア併合を黙認した」と語った。

「ウラジーミルとは赤い糸で結ばれている」と言ってきただけに、プーチン氏が始めた戦争について行動を起こすべきだという意見が自民党内にもあるが、安倍氏は全く動かない。

一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領が3月23日、日本の国会でオンライン演説した翌日、安倍氏はツイッターを更新し、2019年に来日したゼレンスキー氏との写真を公開。4月17日、福島県郡山市で講演した際には、プーチン大統領に関して、「ウクライナの『祖国を守る』という決意の強さを見誤った。そして自分の力を過信した結果、こういうことになった」と指摘した。プーチン氏を過度に信頼したのは安倍氏本人ではないか。

自分の盟友が米大統領から「戦争犯罪者」「大統領を止めるべき」などと攻撃され、日本でも悪玉にされているのだから、恥ずかしくて街を歩くこともできないと思うが、安倍氏は岸田首相の特使としてマレーシアを訪問。3月12日には国際イスラム大学で「東方政策」40周年記念講演を行なった。東方政策はマハティール前首相(2020年退任)が1982年に開始した、日本を手本に国の開発を進める「ルックイースト政策」のことだ。

マレーシアの民族衣装を着た安倍氏は講演を学生向けのクイズで始めた。
「まず、第一問。今から遡ること65年。1957年、独立直後のマレーシアに、初めて日本の総理大臣が訪問しました。この総理大臣が誰だかご存じでしょうか。岸信介。私の祖父です。

続いて第二問。東方政策が始まった1982年、日本の外務大臣に就任した人物をご存じでしょうか。安倍晋太郎。私の父です。

最後に第三問。2007年、東方政策25周年、また日・マレーシア外交関係開設50周年の年に訪問した日本の総理大臣は誰でしょうか。私、安倍晋三です」(外務省HPから抜粋)

マレーシアは日本軍が真珠湾攻撃の直前に侵攻した国だ(当時は英領マレー)。岸氏は東条英機内閣の商工相として東南アジア侵略の首謀者だった。

Malaysia vector map. Editable template with regions, cities, red pins and blue surface on white background.

 

安倍氏はマハティール氏が2019年12月、日本について、「米国の衛星国だとみなされて影響力を弱めている」「日本に学ぶことはまだあるとすれば、特に日本の失敗からだ」と述べていることを知らないのだろうか。

またマハティール氏は同年8月7日には、訪問先の福岡市で共同通信と単独会見し「日本は核兵器で苦しんだ世界で唯一の国だ」と述べ、核兵器禁止条約(マレーシアは署名)を支持するよう訴えた。日本の憲法9条については「戦争を紛争解決の手段とすることを禁じており、他国も見習うべきだ」と評価し、維持すべきだとの考えを示している。

外務省の官僚たちは、マハティール氏の日本観を知ったうえで、安倍氏の演説テキストを作成している。恥を知れと言いたい。

・モリ・カケ・サクラ・カワイ・セイゴウ疑獄は終わっていない

安倍晋三・菅義偉両政権の「国政私物化」の犯罪嫌疑は今も消えていない。

学校法人森友学園・安倍晋三記念小學院(安倍昭恵名誉校長)をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自死した赤木俊夫氏の妻雅子氏は4月11日、日本記者クラブで会見し、「夫はすごい圧力の中で改ざん作業をさせられた」と述べ、国に損害賠償を求めた大阪地裁での訴訟で引き続き闘うと表明した。

加計学園事件では、岡山理科大学獣医学部新設に関する行政文書を国が開示しなかったのは不当として、情報公開請求をした東京都の翻訳者・福田圭子氏が開示を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(足立哲裁判長)は4月14日、訴えを退けた一審東京地裁判決を変更し、一部の文書開示を命じた。

私が「税金私物化を許さない市民の会」の仲間と共に、総務省幹部らの接待問題を巡り、東京地検特捜部に菅前首相、山田真貴子・前内閣広報官、菅正剛・前東北新社統括部長ら12人を贈収賄罪で告発した事件では、全員不起訴とした処分を不服として4月8日、東京検察審査会に審査を申し立てた。

また、安倍元首相の後援会が「桜を見る会」の前日に催した夕食会費用補填問題を告発した弁護士らも同13日、東京地検特捜部の安倍氏不起訴処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てている。

河井克行前衆院議員(元法相)と妻・案里前参院議員の公職選挙法違反事件の裁判は終結したが、広島地検が3月14日、検察審査会議決を受けて、夫妻から現金を受け取った地方議員ら34人を一転して起訴した。

安倍氏による約9年の国政私物化、金権政治、言論統制によって日本は壊れてきた。他国の専制・独裁政治を批判すると同時に、日本国の首相経験者の疑獄事件の追及も続けたい。

 

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浅野健一 浅野健一

1948年、香川県高松市に生まれる。1972年、慶應義塾大学経済学部を卒業、共同通信社入社。1984年『犯罪報道の犯罪』を出版。89~92年、ジャカルタ支局長、スハルト政権を批判したため国外追放された。94年退社し、同年から同志社大学大学院メディア学専攻博士課程教授。2014年3月に定年退職。「人権と報道・連絡会」代表世話人。主著として、『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、講談社文庫)、『客観報道』(筑摩書房)、『出国命令』(日本評論社)、『天皇の記者たち』、『戦争報道の犯罪』、『記者クラブ解体新書』、『冤罪とジャーナリズムの危機 浅野健一ゼミin西宮』、『安倍政権・言論弾圧の犯罪』がある。

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