【櫻井ジャーナル】2024.12.08/櫻井春彦 : 西側メディアの偽報道が押し付けるイメージが世界を破滅へ向かわせる
国際政治シリアの戦乱は2011年3月から始まった。その翌年の6月、メルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教は現地を調査、ローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語れば、シリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。西側有力メディアの情報操作を批判したのだ。
クロス大主教も反シリア政府軍の戦闘員はサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)とムスリム同胞団であり、出身国はリビア、レバノン、ペルシャ湾岸諸国、アフガニスタン、トルコなどだと指摘、イスラム教徒とキリスト教徒の間に伝統的に存在した友愛関係を破壊しようとしているとも語っている。
こうした戦闘集団は事実上の傭兵で、雇い主はアメリカ、サイクス・ピコ協定コンビのイギリスやフランス、トルコやカタールといったムスリム同胞団と関係の深い国など。こうした構図は現在のシリアでも基本的に変化していない。
現地の住民を含め、現実を知っている人びとは西側の有力メディアを信頼しなくなっているが、西側諸国では今でもこうしたメディアの流す話を信じている人が少なくない。こうしたメディアは人びとに刷り込まれたイメージをたくみに利用し、彼らが心地よく感じる物語を語るからだろう。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、西側の有力メディアは富豪たちのプロパガンダ機関として機能してきた。例えば、1860年代にニューヨーク・タイムズ紙の主任論説委員を務めたジョン・スウィントンは83年4月12日にニューヨークのトワイライト・クラブで次のように語っている:「アメリカには、田舎町にでもない限り、独立した報道機関など存在しない。君たちはみな奴隷だ。君たちはそれを知っているし、私も知っている。君たちの中で正直な意見を表明する勇気のある人はひとりもいない。もし表明したとしても、それが印刷物に載ることはないことを知っているはずだ。」
第1次世界大戦に参戦したアメリカでは1917年6月に「1917年スパイ活動法」を制定したが、この法律の矛先は当初からスパイだけでなく反戦平和を訴える人びとにも向けられていた。CIAの元オフィサーで内部告発者のジェフリー・スターリングや内部告発を支援する活動をしていたジュリアン・アッサンジに対する攻撃にもこの法律が使われている。
アメリカの場合、1948年頃から情報機関が「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトを開始、ウォーターゲート事件でワシントン・ポスト紙の記者として活躍したカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞め、「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。
その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)
それでも1970年代までは気骨あるジャーナリストが活動する余地は存在していたが、1980年代以降、そうした余地は消えていく。規制緩和でメディアの集中支配が容認され、支配者にとって目障りなジャーナリストが排除されていったのだ。
「規制緩和」によってメディアは寡占化が進み、メディアの9割程度が6つのグループに支配されている。つまりCOMCAST(NBCなど)、FOXコーポレーション(FOXグループなど)、ウォルト・ディズニー(ABCなど)、VIACOM(MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、CBSだ。日本では電通をはじめとする巨大広告会社によるメディア支配が指摘されている。
寡占化が進んでいた当時、経営の苦しいメディアになぜ資本を投入するのかと言う人がいたが、大企業にとってメディアの赤字は広報費としては安く、その効果を考えると問題はない。
その一方、ロナルド・レーガン大統領は1983年1月にNSDD11へ署名して「プロジェクト・デモクラシー」や「プロジェクト・トゥルース」がスタートした。「デモクラシー」という看板を掲げながら民主主義を破壊し、「トゥルース」という看板を掲げながら偽情報を流し始めた。
こうして強化された言論統制システムは21世紀に入ってからフル稼働状態。シリアなど中東の戦乱だけでなく、ウクライナに対する西側の侵略、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動でも人びとを操るために使われているのだが、「やりすぎ」でシステムが疲労、崩壊の危機にある。
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【Sakurai’s Substack】
※なお、本稿は櫻井ジャーナルhttps://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
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