平和友の会講演会 (2022年4月29日資料):ウクライナ戦争再々論
国際〇おわりに
「平和友の会」のOさんから送られてきたメールには、次のように書かれていました。
「戦争が始まって1週間後くらいでしたか、NHKがロシアはなぜウクライナに侵攻したかの背景を探る番組をしました。ニュースではなかったです。そこで、ソ連が崩壊したあと、冷戦時の軍事同盟ワルシャワ条約機構は解散したが、一方のNATOは続き、独立して行った東欧諸国を加盟させる動きが強まっていったので、ロシアはこれ以上NATOの加盟国を増やすなと要求していたという事実を知りました。勿論だからといって武力で解決することは絶対に許せることではありません。でもこの点を不問にしてただロシアだけを責めるのはおかしいのではないか と思いました。こ の裏にはアメリカがいるのでは?とかんぐりました」。
おそらくOさんは、 NHK が2月28日(ロシアの軍事侵攻から4日目ぐらい)に放映した石川一洋解説委員(元モスクワ支局長)による解説番組「ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか?背景は?」をご覧になったのでしょうが、この「かんぐり」は健全な懐疑精神というべきでしょう。
私はかつて「ジャパン・スケプティクス」(Japan Skeptics 、超自然現象を批判的・科学的に究明する会)という学会の会長を務めていましたが、 skeptic というのは「懐疑論者」のことですか ら、私はいわば「日本疑い深い人連盟」の会長だったことになります。何でもかんでも疑ってかかるのは余りにも寂しいことですが、大事な問題については世上流布している情報を一方的に信じる前に、「よき懐疑論者」であって欲しいと思います。 Be a skeptic!
(「2022年3月~5月ウクライナ戦争論集」より転載)
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1940年、東京生まれ。1944~49年、福島県で疎開生活。東大工学部原子力工学科第1期生。工学博士。東京大学医学部助手、東京医科大学客員助教授を経て、1986年、立命館大学経済学部教授、88年国際関係学部教授。1995年、同大学国際平和ミュージアム館長。2008年より、立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長。現在、立命館大学名誉教授。専門は放射線防護学、平和学。2011年、定年とともに、「安斎科学・平和事務所」(Anzai Science & Peace Office, ASAP)を立ち上げ、以来、2022年4月までに福島原発事故について99回の調査・相談・学習活動。International Network of Museums for Peace(平和のための博物館国相ネットワーク)のジェネラル・コ^ディ ネータを務めた後、現在は、名誉ジェネラル・コーディネータ。日本の「平和のための博物館市民ネットワーク」代表。日本平和学会・理事。ノーモアヒロシマ・ナガサキ記憶遺産を継承する会・副代表。2021年3月11日、福島県双葉郡浪江町の古刹・宝鏡寺境内に第30世住職・早川篤雄氏と連名で「原発悔恨・伝言の碑」を建立するとともに、隣接して、平和博物館「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」を開設。マジックを趣味とし、東大時代は奇術愛好会第3代会長。「国境なき手品師団」(Magicians without Borders)名誉会員。Japan Skeptics(超自然現象を科学的・批判的に究明する会)会長を務め、現在名誉会員。NHK『だます心だまされる心」(全8回)、『日曜美術館』(だまし絵)、日本テレビ『世界一受けたい授業』などに出演。2003年、ベトナム政府より「文化情報事業功労者記章」受章。2011年、「第22回久保医療文化賞」、韓国ノグンリ国際平和財団「第4回人権賞」、2013年、日本平和学会「第4回平和賞」、2021年、ウィーン・ユネスコ・クラブ「地球市民賞」などを受賞。著書は『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞)、『だます心だまされる心』(岩波書店)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』(新日本出版、全5巻)など100数十点あるが、最近著に『核なき時代を生きる君たちへ━核不拡散条約50年と核兵器禁止条約』(2021年3月1日)、『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』(2021年3月11日)、『戦争と科学者─知的探求心と非人道性の葛藤』(2022年4月1日、いずれも、かもがわ出版)など。