【櫻井ジャーナル】2024.12.15/櫻井春彦 : 朝鮮半島で戦争を引き起こす可能性があった尹大統領の戒厳令宣言と米国の役割
国際政治韓国の尹錫悦大統領に対する弾劾決議案が12月14日に議会で可決、大統領の職務は停止、憲法裁判所がこの問題を審議することになるようだ。
弾劾決議の理由は尹錫悦大統領の戒厳令宣言だが、これに絡み、呂寅兄中将が注目されている。この宣言で重要な役割を果たした金龍顯は当時大統領警護室長を務めていたが、この金は大統領や呂寅兄中将と今年の初夏頃に食事を共にし、そこで戒厳令を話題にしたとされている。その後、金龍顯は9月に国防部長官(国防大臣)となる。3名とも冲岩高校の出身だ。
戒厳令によって国会、地方議会、政党の活動、そして政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じ、すべてのメディアと出版は戒厳司令部によって統制されると尹錫悦は宣言しているが、こうしたことを個人的な問題のために行うという説明は説得力がない。韓国とアメリカの関係を考えれば、アメリカ政府が関与していないとも思えない。
戒厳令が宣言された直後から抗議活動が始まり、宣言から数時間後に議員300人のうち190名が議会へ入り、戒厳令を撤回させる動議を全会一致で可決した。その際、体当たりで議場へ入ろうとした兵士を阻止した人もいたという。
韓国陸軍の郭種根特殊戦司令官が10日に国防委員会で語ったところによると、可決に必要な議員が集まる前にドアを壊して議会の中にいる人を引っ張り出せ」と尹錫悦大統領から命じられた。韓国軍は事実上、アメリカの国防総省に指揮されていると言われているが、議会へ派遣された部隊の司令官も大統領の命令を拒否して作戦を停止、金龍顕国防部長官に撤収すると報告したという。同じ日に朴安洙陸軍参謀総長も委員会で証言、尹大統領や金国防部長官が極秘保安施設の決心支援室で会議を開いていたしている。
現在、韓国駐在のアメリカ大使はフィリップ・ゴールドバーグ。この人物は2006年10月からボリビア駐在大使を務めていた。そのゴールドバーグを当時のボリビア大統領、エボ・モラレスは2008年9月、クーデターを支援したとして国外追放している。また2013年12月から16年10月にかけてフィリピン駐在大使を務めていた際、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領からCIAがドゥテルテの追放、あるいは暗殺を企てていると非難されていた。
アメリカは東アジアを支配する仕組みとして、2017年にオーストラリア、インド、日本とQuad(日米豪印戦略対話)を復活させたが、その前年に自衛隊は与那国島にミサイル発射施設を建設している。2019年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させた。その間、2017年4月に韓国へもTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器を強引に持ち込んでいる。
また、2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)の事務総長を務めていたイェンス・ストルテンベルグがオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。
2021年1月にジョー・バイデンが大統領に就任、翌年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表。その年の9月にはオーストラリア、イギリス、アメリカでAUKUSなる軍事同盟を発足させるという発表があった。また2022年12月にアメリカではNDAA2023(2023年度国防権限法)が成立、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。
今年11月にはアメリカ軍が南西諸島とフィリピンに臨時基地を設置、HIMARSシステムなどで装備した海兵隊を南西諸島に派遣する予定だと報道された。自衛隊が南西諸島にミサイル発射施設を建設したのもアメリカの戦略に基づくもの。島に駐留している日本の自衛隊はアメリカ海兵隊に兵站支援と物資を提供するのだという。
また、アメリカ陸軍はMDTF(マルチ-ドメイン・タスク・フォース)なる看板を掲げた部隊をフィリピンに派遣する予定だという。ワシントンとフィリピンは、2023年に島嶼部でアメリカ軍が利用できる基地の数を5か所から9か所に増やすことで合意している。
アメリカの東アジア戦略は米英を中心とするアングロ・サクソン系諸国のほか、アメリカ、日本、韓国の軍事同盟が重視されている。明治維新以来の完璧なアングロ・サクソン従属国である日本はともかく、韓国は国民が朝鮮半島での戦争を拒否している。中国、ロシア、そして朝鮮との緊張を緩和させることを望んでいる人が少なくない。そうした国民の意思を踏み躙る政策を推進してきたのが現大統領、尹錫悦だ。
その尹と緊密な関係にある金龍顯は朝鮮からの攻撃を誘発するために朝鮮の首都、平壌へドローンの編隊を飛ばすように命じたとする情報が流れている。ドローンを朝鮮へ侵入されたのは戒厳令を宣言するための準備だった可能性があり、ドローンを飛ばすように命じたのは呂寅兄中将だと民主党の朴範桂議員は軍内部からの情報に基づくとして、語っている。10月中旬に朝鮮は韓国が平壌へ飛ばしたドローンを発見したと主張、同じようなことが繰り返されたならば報復すると警告した。
しかし、アメリカの操り人形である尹大統領が独断でそうしたことを行うとは考えにくい。東アジアの軍事的な緊張を高めるため、アメリカ政府の命令で行われたと考えるべきだろう。
2024年11月29日、ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相が朝鮮を訪問した。
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