☆寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月20日):シリアに新たな内戦と惨劇が始まるかも知れない―シリア政変後のシリア国民の声をRTが取材
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
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世界中の多くの国からテロ組織に指定されている悪名高いハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)が率いるシリア反政府勢力がシリアを制圧し、バッシャール・アサドによる24年間の統治を終わらせるまでには数週間を要した。
ハヤト・タハリール・アル・シャムは長年、イスラム原理主義の思想と残虐行為で知られている。2018年には米国務省がテロ組織一覧にHTSを追加し、同組織の代表逮捕に協力した者に1000万ドルの賞金を出すと約束した。現在、西側諸国がHTSを一覧から外す案を検討している中、シリア国内の少数派は今後どうなるかを懸念している。
日曜(12月8日)早朝、ダマスカス陥落のニュースが流れるとすぐに、何千人もの人々がシリア首都やシリア各地の都市の通りに繰り出し、「残忍な政権の崩壊」と称する出来事を祝った。
しかし、他の多くの人々にとって、バッシャール・アサド政権の崩壊は懸念の兆しであり、RTはそれぞれ異なる場所から来たシリア人3人に連絡を取り、以前の体制の崩壊に対する彼らの見解と、彼らとこの地域の将来がどうなるかの取材に成功した。以下は彼らによる談話である。
彼らの身の安全上の理由により、実名は公表しない。
2024年12月13日、シリアのダマスカスにあるウマイヤド・モスクで、アサド政権崩壊後初の金曜礼拝に数千人が参加した後、古い城壁の上に立って祝賀の旗を振る人々。© クリス・マクグラス / ゲッティイメージズ
かつて多数派だったアラウィー派の少数派に属しているダマスカス在住のマリアさん
私は眠っていたのですが、通りから発せられる混乱で目が覚めました。人々が走ったり、車を運転したり、歩いたり、話したり、混乱状態になったりする音が聞こえました。人々は処刑されることを恐れていました。私は血の気が引きました。最初は荷物をまとめて出て行こうと思いましたが、もう遅すぎることに気づきました。
自分の気持ちを分析する時間さえありませんでした。悲しいのか、動揺しているのか、裏切られたと感じているのか(ロシアに逃亡したと報じられている大統領に:編集者注)裏切られたと感じているのか、わかりませんでした。私が考えていたのは家族のことと、家族をどう救うかだけでした。そこで私が最初に決めたのは、ダマスカスでの居場所を変える必要があるということでした。次の段階は、シリアからレバノンへ向かうことで、今、私の家族はそこにいます。
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そこでは、家族は犯罪者から離れて安全です。しかし、私はレバノンに留まることができませんでした。すぐにダマスカスに戻りました。国民を助ける必要があったからです。彼らの多くが、処刑されるかもしれないという恐怖を目にしていたことを想像するだけでもいてもたってもいられませんでした。
現在、ダマスカスの状況は落ち着いているように見えます。しかし、ホムスやハマなどの地域では、公正な裁判を受けないままの処刑がすでに多くおこなわれており、今後何が起こるのか不安です。
私はアラウィー派ですが、反政府勢力が政権を握った今、私たち少数派だけでなく他の少数派にとってもシリアで暮らすのは厳しいものになるでしょう。私は、間もなく起こるかもしれない混乱を恐れています。もちろん、次に何が起こるかを判断するのは時期尚早であり、多くは国際協定とシリア国民の意志にかかっています。しかし、私たちは紛争が続くことを予想しています。なぜなら、これらの反政府勢力は分裂しており、それが不安定さを増すだけだからです。だからこそ、私は移住してこの混乱を後にしようと考えています。
2024年12月13日、シリアのラタキアで、「シリア革命旗」を掲げてモスクとその周辺に集まり、国の自由と「新しいシリア」を求める呼びかけを唱えている人々。©アブドゥルラーマン・エル・アリ/アナドル経由ゲッティイメージズ
キリスト教徒、スンニ派、アラウィー派の混血家族に属している、家族が今もラタキアに住んでいるナンシーさん
12月初旬にアレッポが陥落したとき、私は予測不可能なことが起こり得ると感じました。その後ハマが陥落し、CNNのインタビューを通じて世界にアブ・モハメッド・アル・ジョラニが紹介されました。ジョラニは元の名前であるアハメド・アル・シャラーを復活させましたが、これは米国が彼の印象を一新し、シリアの新たな「穏健派」指導者に世界を準備させようとする試みでした。
そのインタビューを見たとき、ダマスカス陥落が差し迫っていることが分かりました。問題はいつ陥落するかだけでした。
その日曜日(12月8日)の朝、私はシリアの混乱から遠く離れたヨーロッパの自宅にいましたが、そのニュースを聞いたとき、シリア国家とその世俗主義を信じるすべての人々、そして国家を維持するために血を捧げ、子どもを犠牲にした何百万人に何も告げずに、アサドが恥ずべきことに国外に逃亡したという事実に、悲しみ、喪失感、孤独感、裏切られた気持ちを感じずにはいられませんでした。
シリアの少数派や世俗的な人々は、体制や大統領、軍隊を信じていました。宗教のようなものではなかったですが、それが彼らの教義でした。そして、そのすべてが突然、まるで神が倒れたかのように消え去ったのです。それは大きな出来事でした。もはやアサドがこんな行為を取るとは。突然、本質、過去と未来、今何をすべきか、どこへ行くべきか、誰を信じるべきか、ということに疑問を抱くようにされたのです。
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西側諸国はアサド政権の崩壊を祝い、反政府勢力がシリアを政治的独裁者から解放したと主張していましたが、真実は反政府勢力が独裁者を宗教的独裁者に置き換えただけだったのです。シリアは以前より良くなったのでしょうか? 家族、親戚、友人との日々の交流を通じて、現地の状況が安定からは程遠いことを私は知っています。反政府勢力とその仲間は裁判所や書類を燃やしています。彼らは入国管理局やパスポートセンター、警察署に火を放ち、刑務所を開けてISISテロリストを含む危険な犯罪者を自由に歩き回らせています。
人々の生活を便利にし、改善しようとする試みはいくつかありますが、当面は単なる約束に過ぎません。シリアでは以前と全く同じように電力と燃料が不足しており、店では生鮮食品はほとんど手に入らず、窃盗は至る所でおこなわれています。ただし、新統治者は窃盗犯に対し、行為をやめなければ起訴すると警告しています。
さらに、危険信号もあります。反政府勢力はバシャールの父親の墓を焼き、ハマ近郊で数人のアラウィー派を殺害し、キリスト教徒の居住地域に侵入して女性たちになぜ髪を覆っていないのかを問い詰め始めました。しかし、これはまだ始まりに過ぎません。
今のところ、これらの「戦闘員」はシリアの「解放」を見守る外の世界を落ち着かせようとしています。今のところ彼らは暴力を振るってはいませんが、これは国際社会に認知してもらうためだけのことであり、長くは続かないでしょう。
私はシリアが将来バルカン化の道をたどるのではないかと懸念しています。もう一つの可能性は、シリアでもリビアやアフガニスタンで目撃してきたのと同じことが見られるかもしれないということですが、唯一の違いはシリアのISIS戦闘員がアフガニスタンのムジャヒディーンよりもはるかに狂信的で装備も充実しているということです。
また、法令とビザが許可されればシリアからの移民の大波が来ると私は予想していますし、アル・ジョラニがHTSを解体しようとすれば、これらの過激派の間で復讐と戦いが起こることも危惧していますし、さらに悪いことに、シリアの分裂が起こる、と私は確信しています。
実際、分裂はすでに始まっています。侵攻の前日、トルコのエルドアン大統領は「我々は大きな地政学的変化の真っ只中にあり、国境は変わるだろう。トルコは行動を起こす準備をする必要がある」と述べました。トルコにとっての次の一歩は緩衝地帯を作ることです。クルド人もまた、トランプの支援を受けて、自分たちのためにも領土の一部を確保したいと考えているでしょう。南部はイスラエルが占領するでしょう。この過程はすでに始まっており、分裂は避けられません。
多くの人にとって、このような展開は控えめに言っても問題があり、シリア国民が、状況が許せばすぐに立ち去りたいと考えているのはこのためです。
シリア、カミシュリー。© Global Look Press、ZUMA Press経由 / Carol Guzy
カミシュリー在住のオサマさんはクルド人少数派に属している。
バッシャール・アサド政権が終焉を迎えるというニュースを聞いた瞬間を私は決して忘れません。当時、私はアンマンで国連機関との対策委員会に参加する準備をしていました。
しかし事態は急速に悪化し、アサド政権は崩壊しつつありました。私はすぐにヨルダンへの旅行計画を取りやめました。アサド政権の崩壊を目撃するまで、そのあと3日しかかかりませんでした。12月8日の朝、私はその日をシリア建国記念日とみなしています。
当時、私は悪夢がようやく終わったと信じ、深い希望を感じていました。シリアの人々に新しい時代をもたらす平和が近づいている、と思いました。ダマスカスを再び訪れるのは時間の問題だ、と心から感じていました。
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同時に、シリア政府による抑圧を経験したシリアのクルド人として、私は複雑な感情を抱いていました。一方では政権が崩壊したことに安堵し、他方では懸念が高まっていました。過激派民兵がマンビジとコバニでシリア民主軍(SDF)と戦い始め、ソーシャル・メディア上の特定の個人によって煽られたクルド人とSDFに対する憎悪の波が広がり始めました。
2004年にアサドに最初に反旗を翻したシリアのクルド人達の極めて重要な役割を人々が認識していないのは残念なことです。私は以下の伝言を伝えたいです。今こそシリアを共に再建する時です。クルド人はシリア社会の不可欠な一部であり、私たちが耐えてきたすべての悲劇の後、私たちをさらに抑圧することは非常に不公平です。私たちはシリアで調和して共に暮らすことができます。さらに、特に世界をISISから救うために犠牲を払ったクルド人達を国際社会が認めるべき時が来た、と私は信じています。手遅れになる前に今こそこの民族に忠誠心と認識を示す時です。
私が最も恐れているのは、再び紛争の悪夢に陥るかもしれないということです。具体的には、SDFとHTSの間で戦闘が勃発したり、トルコがこの地域を攻撃する可能性を心配しています。しかし、HTSとの問題を解決し、クルド人を暫定政府に含める好機はまだあると私は信じています。さらなる悲劇を避けるためには、協力と対話が不可欠です。
シリアが分裂する可能性について議論されていることは知っていますが、私はそういう展開には同意しません。私は、SDFとHTS の合意を含む、より良い前進の道がある、と信じています。国際連合とアラブ諸国は、そのような合意を促進する上で重要な役割を果たすことができます。この道は、分裂や混乱ではなく、統一と進歩への道を切り開くでしょう。
私はシリアを離れたいと思ったことは一度もありませんし、今もそう思っていません。シリアに留まることを選んだ他の多くのシリア人と同様に、私は大きな困難に耐えてきましたが、祖国への忠誠心は変わりませんでした。私はすでにここに留まることを決めており、後悔しないことを望みます。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2024年12月17日)「シリアに新たな内戦と惨劇が始まるかも知れない―シリア政変後のシリア国民の声をRTが取材」
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また英文原稿はこちらです⇒‘People fear they might be executed’: Syrians come out for a frank talk with RT
シリアが新たな統治者に慣れるにつれ、少数派は希望、恐怖、絶望の感情を発信
筆者:エリザベス・ブレイド(Elizabeth Blade)特派員
出典:RT 2024年12月16日
https://www.rt.com/news/609446-syrian-residents-talk-with-rt/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授