【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月1日):劣化した英国メディアのイーゴリ・キリロフ中将暗殺の報道は真相を闇に追いやる可能性がある。

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

モスクワでのロシアの最高司令官の暗殺をめぐる英国のニュースメディアの熱狂ぶりは、いくつかの点で、顕わになっている。

まず第一に、これはジャーナリズムともいえないようなところまで成り下がった報道媒体の、胸が悪くなるような惨めな姿である。イーゴリ・キリロフ中将の血まみれの死体が雪の中に横たわっているのを見た英国のメディア関係者の祝賀ムードは、見下げ果てた敬意欠如としか言いようがない。英国文化の底知れない堕落を物語っている。

それに比べて、米国のメディアによる暗殺報道は比較的淡々と事実に沿ったものだった。

英国ではそうなっていない。英国のメディアはほとんど陶酔したような反応だった。

国防総省の対応は重要だった。パトリック・ライダー報道官は、殺害へのアメリカの関与を否定した。彼は、アメリカ人はこの暗殺について予告されていなかったと述べ、米国はそのような行動を支持しないと付け加えた。

もちろんそのような否定的コメントは、常に眉に唾をつけて聞く必要がある。

しかし、そのおぞましい出来事にアメリカ人は控えめな態度をとる良識があったが、イギリス人はいかにも軽率な振る舞いだった。

ロンドンタイムズの編集委員会は、キリロフ中将は暗殺の「正当な標的」であると宣言した。

デイリー・テレグラフ紙は、ハミッシュ・ド・ブレトン=ゴードンの論説を掲載した:「プーチンの化学兵器の子分キリロフは本当の悪人だった。彼は死んで当然だ」。

一方、BBCは、外務省がキリロフを「クレムリンの偽情報の悪名高い代弁者」と表現したことを、あまり深く考えずに利用して、今回の殺人を暗に正当化した。

ガーディアン紙のロシア恐怖症者ルーク・ハーディング記者は、ウクライナの軍事情報機関(SBU)の「成功」を美化することで、ジャーナリズムの基準を放棄し、こう付け加えた: 「SBUは、残忍な超法規的裁きを独自に行なう組織としての評判を確固たるものにした。それは、まるで天から降ってきたかのように、予測もつかない迅速な復讐となっている」。

ウクライナの秘密機関が関与していたことは間違いない。SBUは犯行声明を出しており、モスクワのアパートの外で起きた爆破事件のビデオを西側の報道機関に配布している。この爆破事件でキリロフと彼の助手は火曜日(12月17日)の朝、建物から出てきたところを殺された。

ロシア保安庁(FSB)は29歳のウズベキスタン人を逮捕したと報じられている。ウクライナの諜報員がキリロフ容疑者のアパートの道路側の出入り口に爆発物を積んだスクーターを設置するよう彼を誘導したと語っている。容疑者は、10万ドルの支払いとヨーロッパのパスポートを約束されたと言っている。

それはすべて、暗殺にNATO軍の諜報機関がより多く関与していることを示している。米国のCIAと英国のMI6は、ウクライナの軍事情報の背後にいる2つの主要な機関だ。

しかし状況を見るとMI6が今回の暗殺に関与しているようだ。

英国は10月、ウクライナの戦場での化学兵器使用を監督していたとしてキリロフを非難したが、ロシアは強く否定した。英国は信頼できる証拠を提供せず、陳腐な主張だけを繰り返した。さらに、ロシアが今回の紛争に決定的に勝利していることを考えると、その主張は筋が通らない。なぜロシアは化学兵器を使う必要があるのか?

キリロフ中将はロシア陸軍の放射線・化学・生物兵器防衛部隊のチーフであった。彼の調査員は、ウクライナにあるペンタゴンが運営する秘密かつ違法な生物兵器研究所のネットワークを発見した。この調査は、生物兵器研究所がアメリカの大統領レベルで認可され、アメリカの大手製薬会社が関与していたという実質的な証拠を提供した。いつものように、西側諸国はその情報を検証することなく、「クレムリンの偽情報」としてその主張を一蹴した。

言い換えれば、キリロフの仕事は主にNATOが管理する大量破壊兵器を阻止することであり、英国が主張するようにその使用を監督することではなかった。

キリロフは、3年前にウクライナ紛争が勃発して以来、殺害されたロシア軍司令官のなかで一番地位の高い人物だ。

英国の目的は、キリロフを「化学兵器の子分」「悪人」として悪者扱いすることだった。この動きに続いて、ウクライナの秘密機関がこのロシアの将軍を「戦争犯罪人」として非難した。今週、暗殺の前日に、ウクライナ側は死亡通知を発表した。

生物兵器に関する彼の調査が関係者を罪に問う可能性があり、それがバイデン大統領に関与していることを考えると、米国は英国よりもキリロフを排除する動機があったと主張することもできる。

しかし、間違いなく、それは今回の暗殺の動機ではなかった。彼は心理作戦のための知名度の高いターゲットに過ぎなかったのだ。

ウクライナの野党政治家ビクトル・メドベドチュクは、英国がキエフ政権の背後にある主要な諜報機関として米国から引き継いだという重要な見解を述べている。英国はウクライナの傀儡大統領ウラジミール・ゼレンスキーとその取り巻きを使って、ウクライナに送られた米国と欧州の資金の多くを資金洗浄し、ロンドンの銀行に入れている、と彼は言っている。

ドナルド・トランプ次期米大統領がウクライナ紛争を収束させ、キエフ政権への資金援助を断ち切ることに懸念を示すなか、英国はそのような動きを妨害しようとしている。英国としては紛争と金もうけを長引かせたいのだ。

モスクワでロシア軍司令官を暗殺するのは、クレムリンに恥をかかせ、4週間後に就任するトランプ大統領との和平交渉を台無しにする形で紛争をエスカレートさせるのが狙いだ。

イーゴリ・キリロフと彼のアシスタント、イリヤ・ポリカルポフの殺害をほくそ笑む英国メディアは、英国の悪辣な手の内を明らかにしている。

被害者は中傷され、非難されただけでなく、殺害は美化された。特にBBCは、爆発直後にモスクワ市民が感じた「深い衝撃」を伝えることに強い関心を示した。

国営放送BBCはこう論評した: 「この地域に住む人々は、深いショックをBBCに語った。ロシアがウクライナに本格的に侵攻してから3年近く経つが、多くのモスクワ市民にとって、戦争は遠く離れた場所で起きていることであり、テレビや携帯電話で見るものでしかない。モスクワでのロシア軍将軍の殺害は、この戦争が非常に現実的で身近なものであることを示している」。

ロシアはイゴール・キリロフ殺害への報復を誓った。ゼレンスキーとキエフの彼の取り巻きたちは、間違いなく身構えている。ロンドンの英国版「人狼たち」も、警備体制を再確認した方がいいかもしれない。

ロシアの警備体制には疑問がある。クレムリンからわずか数キロしか離れていないのに、どうしてこんなにも簡単に侵入されるのか。先週、上級ミサイル科学者であるミハイル・シャツキーがモスクワでウクライナのシークレットサービスによる攻撃で射殺されたばかりだ。

しかし同時に、ロシアが復讐を果たすのに甘すぎるのではないかという疑問も投げかけられるべきだ。キエフの傀儡を超えたテロ活動の首謀者も、英国人が好んで言うように「正当な標的」にすべきではないのか。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月1日)「劣化した英国メディアのイーゴリ・キリロフ中将暗殺の報道は真相を闇に追いやる可能性がある。」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。
また英文原稿はこちらです⇒British media gloating betrays masterminds behind Kirillov’s killing
筆者:フィニアン・カニンガム(Finian Cunningham)
出典:Strategic Culture Foundation  2024年21月19日
https://strategic-culture.su/news/2024/12/19/british-media-gloating-betrays-masterminds-behind-kirillov-killing/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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