☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月7日):2025年は第二のルネサンス、あるいは混沌
国際※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。
ルネサンス期のフィレンツェから、いまや記憶に残る人類の数少ない頂点のひとつ、炎に包まれた2025年を慎重に歩こう。
フィレンツェ―それは眩しいトスカーナの冬の朝、私はドミニコ会の伝説的なサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の中にいる。この教会は13世紀初頭に設立され、1420年に最終的に聖別された。この教会は、美術史において非常に特別な場所にある。遠近法の巨匠パオロ・ウッチェッロが1447-1448年に描いた「大洪水」を描いたモノクロのフレスコ画の真正面だ。
パオロ・ウッチェッロ:「大洪水」。1448年、フィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェッラのフレスコ画。撮影:ペペ・エスコバル
まるでパオロ・ウッチェッロが私たちを描いたかのようだ。そこで、新プラトン主義のスーパースター、マルシリオ・フィチーノ(ギルランダイオがカッペラ・トルナブオーニでシックな赤い衣をまとって不朽の名声を残した)に触発され、私は未来に戻り、パオロ・ウッチェロが現在の大洪水を描く際に、誰が、何を登場させるかを理想的に想像してみた。
まずはプラス面から始めよう。2024年はBRICSの年であり、その功績はすべてロシア大統領の精力的な活動によるものである。
2024年は「抵抗の枢軸」の年でもあった。ただし、ここ数カ月の間に連続的な打撃を受けることになった。それまでは「抵抗の枢軸」の回復を推進するほんものの挑戦であった。
そして2024年は、ウクライナにおける代理戦争の結末を決定づけた年であった。「ルールに基づく国際秩序」がノヴォロシアの黒い土のどこまで深く埋まるかは、まだわからない。
さて、これからの明るい展望に目を向けよう。2025年は、中国が地球上で最も重要な地政学的勢力として確固たる地位を築く年になるだろう。
2025年は21世紀を象徴する戦い、ユーラシア対NATO関係国の戦いが、予測不可能な方向性の中で鮮明になる年になるだろう。
そして、2025年はユーラシア統合の決定的要因である、連結回廊の進展の年になるだろう。
ホルムズ海峡(世界の石油の少なくとも23%が毎日通過している)から、西アジアと南アジアを結ぶチャー・バハール港に至るまで、イランがこの連動した連結性の中心にあるのは偶然ではない。
注目すべき接続回廊は、代表的なパイプラインのひとつである全長1,800kmのトルクメニスタン-アフガニスタン-パキスタン-インド(TAPI)パイプラインの復活、3つのBRICS(ロシア-イラン-インド)とBRICSのパートナー候補数カ国を結ぶ国際北南輸送回廊(INSTC)である;中国・パキスタン経済回廊(CPEC)、一帯一路構想(BRI)の旗艦プロジェクト、そして最後に、急速に進む北方海路(中国側は北方シルクロードと呼んでいる)である。
ワシントンでの「第二次トランプ政権」の開始の数日前に、ロシアとイランは最終的に、正式にモスクワで、2年越しの包括的な戦略的パートナーシップ契約に署名する予定だ。2つのトップBRICSの間の重要な取引であり、ユーラシア統合の条件に計り知れない、連鎖的な影響を与える。
完全に封印された交渉のチャンネル
ロシアの外交防衛政策評議会の尊敬されるメンバーであるドミトリー・トレニンは、ウクライナにおける代理戦争の受け入れ可能な終結のための、これまでのところ最も現実的な行程表を持っている。
「受け入れ可能」という言い方はこの場合お話にならない。というのもこの戦争に農地と銀行を賭けている西側の政治的「エリート」集団からすれば、ロシアの戦略的敗北以外は何も受け入れられないからだ。そしてそんなことは絶対起こらない。
現状では、プーチン大統領は、蛇の頭を切り落とすだけでなく、胴体も切り落とすことに賛成するモスクワのエリート層を実際に取り込んでいる。
トランプとしては、さらなる泥沼に引きずり込まれる気持ちはまったくない。そんなことは何も考えずに飼い主に仕えるヨーロッパの「チワワ」諸国に任せておけばいいのだ。
したがって、不安定な「平和」合意に向かう可能性のある動きは、グローバル・マジョリティにとっても都合がいい。言うまでもなく、戦争がビジネスにとっていかに悪いことかを理解している中国にも都合がいい(少なくとも、軍需産業に身を置いていなければ) 。
常に可能性のある「実存的」なエスカレーションに関しては、まだ森から出ているというわけではない;偽旗作戦を使った何らかの大規模なテロを煽るクーデターにはまだ3週間残っている。
2025年の最初の二カ月は、妥協案を描く上で決定的なものになるだろう。
RUSSTRAT(ロシアのシンクタンク)のエレーナ・パニーナは、何が起こるかわからないという簡潔かつ冷静な戦略的評価を示している。
トランプが本質的に渇望しているのは、マクドナルドのハンバーガーのように、究極の指導者のように自分を見せることだ。したがって、プーチンの戦術的な交渉戦略は、トランプのタフな男の行動を弱体化させることに焦点を当てるものではない。問題は、トランプのポップスターの力を損なうことなく、そしてNATO関連国の戦争挑発の火種にさらに燃料を追加することなく、どうやってそれを成功させるかである。
プーチンは、欧州、英国、中国、ウクライナそのもの、そして「南半球」全体に関連する、さまざまな切り札を胸に秘めている。
影響圏の決定は、可能な合意の一部となるだろう。重要なのは、具体的な詳細を漏らしてはならないということだ。そして西側の情報機関が入り込めないようにしなければならない。
つまり、パニーナが指摘するように、トランプはプーチンとの交渉において、MI6でも解読できないような完全に密封されたチャンネルを必要としている。
レバノンとシリアにおける旧約聖書の精神病理学的勝利と、それがテヘランを弱体化させたことで、ディープ・ステート全体の特権的なシオニスト-ネオコンの中枢が眩暈(めまい)を起こしているのだから、それは無理難題というものだ。とは言っても、イラン、ロシア、中国、BRICSのつながりが危いというわけではない。
欧州の中央銀行
プーチンと安保理は、かなり複雑で段階的な外交ゲームを実施する用意ができているはずだ。敗北し、最高に怒った民主党や英国、そしてウクライナ大統領府の三者がトランプに最大限の圧力をかけ、トランプを「アメリカの敵」あるいはそれに類する戯言に仕立て上げることを知っているからだ。
モスクワは停戦も現状凍結も受け入れない:真の解決策だけを求めるだろう。
それがうまくいかなければ、戦争は戦場で続くことになり、モスクワはそれにも、さらなるエスカレーションにも問題はない。混沌の帝国の最後の屈辱は、その後、完全になるだろう。
一方、中米間の「第二次冷戦」は、実質的なものよりもむしろ大衆的な面で進むだろう。中国の鋭いアナリストたちは、真の競争はイデオロギーをめぐるものでなく、もともとの冷戦のように、AIから継ぎ目のないサプライチェーンのアップグレードまで、テクノロジーをめぐるものであることを知っている。
さらに、「第二次トランプ政権」は、少なくとも原則的には、台湾と南シナ海で中国にウクライナ式の代理戦争を引き起こすことには関心がない。中国はロシアよりもはるかに多くの地球経済資源を持っている。
だから、トランプが米中G2構想を持ち出していることは、必ずしも興味深いことではない。ディープ・ステートはこれを究極の疫病とみなし、死ぬまで戦うだろう。すでに確実なのは、これが実現すれば、ヨーロッパのプードルたちは汚れた沼地で溺れ死んでしまうということだ。
まあ、メドゥーサ・フォン・デア・ライアン、ならぬライイング(嘘つき)や頭のおかしいエストニア人の女の子のような脳死状態の見本をEUのトップ代表に任命する政治的な「エリートたち」なのだ;彼らは自分たちの最も重要なエネルギー供給者との戦争を開始する。24時間年中無休で、地球全体に放送される大量虐殺を全面的に支持するような人間たち。彼らは自分たちを定義してきた文化を根絶することに執着している。そして、民主主義と言論の自由に口先だけのサービスを提供しているこれらの「エリートたち」は、汚物の中でのたうち回るのが分相応というものだ。
シリアの悲劇について言えば、プーチンは本当の敵が誰なのかを知っている。サラフィー・ジハードの首切り傭兵集団でないことは確かだ。アンカラのスルタンもまた敵ではない。モスクワから見れば、トルコの学校の教科書で「中央アジア」を「トルキスタン」に置き換えるという高邁な夢を抱いているが、アンカラのスルタンは地理経済的にも地政学的にもマイナーな存在である。
そのすばらしさを測りきれないマイケル・ハドソンの言葉を借りれば、おそらく我々のマルシリオ・フィチーノ*は、パオロ・ウッチェッロがシックな赤いローブを着た作家に扮しているのだろうが、大洪水前のこの時期に、アメリカのエリートたちが「唯一の解決策はロシアと中国との全面戦争だ」と言っているようなものだ。ロシアは「ウクライナと西アジアに平和があることを願う」と言っている。中国は戦争ではなく平和を望んでいると言っている。
マルシリオ・フィチーノ*・・・イタリア・ルネサンス期の人文主義者、哲学者、神学者。メディチ家の保護を受け、プラトンなどギリシア語文献の著作をラテン語に翻訳した。プラトン・アカデミーの中心人物。近年はルネサンスの芸術思想をはじめ、魔術思想、神秘思想の面など多方面で注目される思想家となった。( ウィキペディア)
どんな妥協案であれ、妥協に達するには十分ではないかもしれない。つまり、米国の支配層はカオスの事例を押し付け続ける一方で、ロシア、中国、BRICSは「BRICSラボ」で脱ドルモデル、IMFと世界銀行の代替組織、そして最終的にはNATOの代替組織さえもテストし続けるだろう。
一方では無政府状態とテロ戦争の大混乱;一方では冷静で協調的なリアリズムがある。備えあれば憂いなし。ルネサンス期のフィレンツェから、いまや記憶に残る人類の数少ない頂点のひとつ、炎に包まれた2025年を慎重に歩こう。
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年1月7日)「2025年は第二のルネサンス、あるいは混沌」
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また英文原稿はこちらです⇒2025:A second Renaissance,or chaos?
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation 2024年12月1日
https://strategic-culture.su/news/2024/12/31/2025-second-renaissance-or-chaos/
国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授