【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.01.11XML: イスラエルにパレスチナ人を虐殺させているのは米英独を含む西側諸国

櫻井春彦

著名な医学雑誌​「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した​。ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告しているが、これはランセットの推計値の59%にすぎないということ。この時点で国連などは1万人以上の遺体が瓦礫の下に埋まっていると推定されていた。病気、あるいは飢餓で死亡する人は戦闘で殺される人よりも多いと見られている。非戦闘員の犠牲者が多い理由は、イスラエルがそうした人びとを狙っているからにほかならない。現在、4万5338名が殺されたと言われているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くになる。

 ガザで戦闘が始まった直後、​ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、その中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたと主張、パレスチナ人虐殺を正当化している。​

 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。

 そうした中、ローマ教皇フランシスコは2023年12月21日、ガザでの爆撃は残虐行為であり、戦争ではないと非難、ピエルバティスタ・ピッツァバラ枢機卿がガザへ入れなかったことを批判した。22日にイスラエル当局は枢機卿のガザ入りを許可したが、その日、教皇はイスラエルがガザで続けている子どもの虐殺を改めて非難している。

 今年1月10日にジョー・バイデン米大統領はローマ教皇庁を訪問する予定になっていた。アイルランド系でカトリック教徒の家に生まれた人物が大統領に就任したのはジョン・F・ケネディ以来だが、行ったことは正反対だった。その彼が教皇庁訪問をキャンセルしたようだ。バイデンがバチカンを訪問した場合、教皇フランシスコはイスラエルによるガザでの虐殺、そしてその虐殺を支援しているバイデン政権を非難しなければならなかった。教皇もバイデンも訪問を中止したかっただろうと考えられている。

 イスラエルは生活物資や軍事物資を国外からの支援に頼っている。そうした支援をする国や団体が存在しなければ、破壊、殺戮、略奪という三光作戦を実行することは不可能だ。​SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている​。輸送などでの支援にイギリスが果たしている役割も小さくない。この3カ国の責任は特に重い。

 中東で戦火が燃え上がったのは2003年3月のことだ。ジョージ・W・ブッシュ政権がアメリカ主導軍にイラクを先制攻撃させ、サダム・フセイン体制を倒したのだ。侵略の口実として「大量破壊兵器」が使われたが、これは嘘だった。当初の予定ではイラクに親イスラエル体制を築くことになっていたが、これは失敗に終わる。

 この侵略に対し、ギリシャ正教総主教区の公式広報官を務めていたテオドシオス・ハンナ大修道院長はアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、イギリスのトニー・ブレア首相、ジャック・ストロー外相がキリスト教の聖地、エルサレムの聖誕教会へ入ることを禁じた。この政治家たちをハンナらは破門し、堕落者とみなしたという。この事実を西側の有力メディアは大半が無視したが、​イギリスのインディペンデント紙はイスラムの動きに絡め、固有名詞抜きで簡単に触れている​。

 シリアに対する外部勢力の軍事作戦が始まった翌年の6月、シリアへ入って調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。​紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告​している。それ以降、現在に至るまで西側の有力メディアは真実を語ろうとしていない。イスラエル絡みだけではないのだ。

 自国軍を投入したジョージ・W・ブッシュ大統領とは違い、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を傭兵として使い、体制転覆プロジェクトを始めた。リビアやシリアもそのターゲット国だった。西側では「自由の戦士」扱いのHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)やRCA(革命コマンド軍)も基本的にそうした傭兵集団だと言える。

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