【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.01.20XML: ウクライナとシリアで失敗した戦闘の凍結をロシア政府は今後、行わないだろう

櫻井春彦

 COVID-19騒動で世界が疲弊する中、ウクライナ、シリア、パレスチナで戦闘が続いてきた。ウクライナではロシアとアメリカ/NATOが衝突してロシアの勝利が決定的であり、シリアではアメリカ/NATOが操る傭兵集団がバシャール・アル・アサド政権を倒し、パレスチナでは米英が支援するイスラエルがパレスチナを破壊し、住民を虐殺している。

 こうした中、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領は包括的戦略パートナーシップ協定にモスクワで署名した。INSTC(南北輸送回廊)の構築、貿易、エネルギー、技術、インフラなどを含む様々な分野での協力を強化することを目指す一方、相互防衛を誓約した。一方の国が攻撃を受けた場合、もう一方の国はいかなる形でも攻撃者を支援しないとされている。

ウクライナ

 ウクライナの戦乱が始まったのは2014年2月のクーデターからだ。ロシアを制圧するプロジェクトの一環として、中立政策を掲げる体制をネオ・ナチによって倒したところから始まるのだが、計画通りに進んだとは言い難い。軍や治安機関の約7割はネオ・ナチ体制を嫌って離脱、一部は東部ドンバスの反クーデター軍に合流したと言われている。当初は反クーデター軍が優勢だった。

 そこで、アメリカ/NATOは2014年から22年にかけてウクライナへ兵器を供与して兵士を訓練、ヒトラーユーゲントのような団体を組織して年少者に思想教育や軍事訓練を施し、さらにマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカに築いた地下要塞を結ぶ要塞線を構築して戦力を増強した。

 そうした時間を稼ぐために利用されたのが「ミンスク合意」にほかならない。これは​アンゲラ・メルケル​元独首相や​フランソワ・オランド​元仏大統領も証言している。この合意によって戦闘は凍結されたのだが、それによってウクライナの東部や南部に住む少なからぬ人びとが死傷している。再び戦闘を凍結するような愚かなことをロシア政府は行わないだろう。

 しかし、アメリカ/NATOが行った時間稼ぎによる戦力増強策は失敗してしまい、すでにウクライナなる国は存在しないとまで言われる状況になっている。もっとも、ウクライナの大統領を名乗ってウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関MI6のエージェントであり、そのハンドラーはリチャード・ムーアMI6長官である可能性が高い。

シリア

 アメリカの対外政策を支配してきたネオコンは1980年代からイラクやイランと同じようにシリアを制圧、親イスラエル体制を樹立させようとしていた。ロラン・デュマ元仏外相によると、2009年にイギリスを訪問した際、イギリス政府の高官からシリアで工作の準備をしていると告げられ、バラク・オバマは大統領として2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を利用し、地中海の南部や東部の沿岸で体制転覆工作を仕掛けた。ターゲット国のひとつがシリアにほかならない。2011年3月にシリアは外国勢力が送り込んだ傭兵に侵略されるものの、持ちこたえた。

 そこで、オバマ大統領はアメリカ/NATO軍を介入させるため、住民虐殺や化学兵器の使用といった話を広めようとするものの、いずれも嘘が短期間のうちに発覚している。

 その一方、オバマ大統領はリビアから戦闘員や兵器を輸送するだけでなく、政権転覆を目指す傀儡軍への支援を強化したが、そうした行為は危険だと警告するアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は政府に警告している。

 ​DIAはオバマ政権のジハード傭兵を利用した計画を危険だとする報告書を2012年に政府へ提出​。反シリア政府軍の主力はAQIであり、その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、さらにオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告したのだ。その時にDIAを率いていた軍人がマイケル・フリン中将にほかならない。

 この警告通り、2014年には新たな武装集団ダーイッシュが登場、この集団はこの年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック、ハイラックスを連ねてパレードし、その後、残虐さをアピールする。そうした危険な武装勢力を制圧するためにアメリカ/NATO軍が介入する必要があるという筋書きだったが、アメリカ/NATO軍が介入するより前にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させた。

 ところが、シリア政府はイドリブに立てこもったアル・カイダ系武装集団を壊滅させず、戦闘は凍結された。その武装集団が昨年12月8日にアサド政権を倒し、カリフ制を導入する。イドリブで傭兵たちはCIAの訓練を受け、ウクライナから供給されたドローンで武装していた。反アサド勢力の中核でトルコを後ろ盾とするHTS(ハヤト・タハリール・アル・シャム)やアメリカやイギリスを後ろ盾とするRCA(革命コマンド軍)もイドリブにいた。

 なお、HTSはアル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織。そのアル・ヌスラはシリアで活動を始める前、AQI(イラクのアル・カイダ)」と呼ばれていた。この集団には、首を切り落とすことで知られている新疆ウイグルの人間も含まれているという。

 西側の政府、有力メディア、人権団体などはシリア政府の残虐を宣伝していたが、そうした主張を裏付ける証拠は見つかっていない。アサド政権が崩壊した直後、ヨルダンで待機していた西側の「ジャーナリスト」がアサド政権を攻撃していたが、CNNの捏造報道がすぐに発覚するなど、怪しげな話のオンパレードだ。シリアで拘束されていた囚人の多くがダーイッシュのメンバーだったことは確認されている。

パレスチナ

 著名な医学雑誌​「ランセット」は1月9日、2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した​。ガザの保健省は24年6月30日時点の戦争による死亡者数を3万7877人と報告していたが、これはランセットの推計値の59%にすぎない。現在、4万5338名が殺されたと言われているので、それにランセットの推計を適用すると7万7000人近くになる。

 パレスチナでは1月16日、イスラエルとハマスが停戦協定を結んだという。42日間の停戦と捕虜交換が含まれているのだが、残念ながら、イスラエルやアメリカは約束を守らない。しかも、合意の中にはイスラエルが合意を破棄し、爆撃と軍事作戦を再開する「権利」が含まれているという。

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