【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年5月7日):ポール・クレイグ・ロバーツ:トランプ大統領二期目就任から100日。歴代大統領と比較した通知簿

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

約1ヶ月前の3月23日、このウェブサイトにレーガン政権時代の回顧録を掲載した。この回顧録は、読みやすい季刊誌「The Independent Review」に掲載されたばかりのものだった。大統領に任命された者が大統領の政策を実際に支持することがいかに難しいかを克明に記していたため、予想以上に多くの反響をいただくだろう、と私は予想していた。https ://www.paulcraigroberts.org/2025/03/23/my-time-in-the-reagan-administration/

その際、レーガン政権は遠い昔のこと、つまり1981年から1988年の間だったことを思い出した。レーガン大統領の任期は37年前に終わった。つまり、今日50歳の米国民は、レーガンの二期目が終わった時13歳だった。レーガンが大統領に選出された時、その年代の人は5歳だった。つまり50歳の米国民はレーガン政権を経験したことがない、ということだ。60歳の米国民は、レーガンが就任した時はまだ15歳だった。今日生きている米国民の大多数は、レーガン政権について、売女報道機関や政治的思想を振り回す歴史家たちの話以外、何も知らない。それでも、どういうわけか、米国民は最後の米国大統領である、といえるレーガンを懐かしがっている。

トランプ大統領就任から100日が過ぎ、MAGA支持の米国民は彼の成功を大々的に宣伝し、民主党は彼の「失敗」を大々的に宣伝している。

真に成功した大統領、ロナルド・レーガンについて語ろう。おそらく彼は、20世紀で唯一の成功した大統領だ。レーガンには二つの大きな成功があった。私自身も彼の政権内の一員だったからこそ、その成功を知っている。レーガンは供給側重視政策によってスタグフレーション(インフレと失業の同時上昇)を解消し、ソ連との冷戦を終結させた。さて、これほどまでに並外れた成功を収めた米国大統領は他に誰がいるだろうか?

レーガンの成功は、「テフロン(傷つきにくい鍋)大統領」という報道機関の誇大宣伝やネオコンのイラン・コントラ事件、そしてデービッド・ストックマンとポール・ボルカーによる「レーガン財政赤字」によって覆い隠された。

アメリカの歴史家、つまり自国の政府が犯した様々な残虐行為を正当化することで自らの経歴を保証している学者たちは、米国の歴代大統領トップ5を、エイブラハム・リンカーン、ジョージ・ワシントン、フランクリン・D・ルーズベルト、セオドア・ルーズベルト、ドワイト・D・アイゼンハワーの順に格付けしている。https ://www.c-span.org/presidentsurvey2021/? page=overall

リンカーンは、建国の父たちが構想した州の権利に基づく憲法の枠組みを破壊した。リンカーンは、敵軍との戦争において不可欠な要素として、民間人に対する戦争を導入した。今日なら、国際刑事裁判所はリンカーンを戦争犯罪者として認定し、逮捕状を発行していたことだろう。

独立宣言を起草したトーマス・ジェファーソンは、日本政府が米国側に和平を懇願していたときに日本の民間都市2つを核攻撃したハリー・S・トルーマンに次いで7位である。

ジョン・F・ケネディは8位、ロナルド・レーガンは9位、7カ国を爆撃したバラク・オバマは10位、そして「LBJ、LBJ、今日何人の子どもを殺したの?」というリンドン・ジョンソン大統領は11位だ。

この結果から見えてくるのは、リベラル派が、米国初代大統領や独立宣言を書いた建国の父、殉教者ジョン・F・ケネディ、高い人気を維持するレーガンを失敗した大統領にさせたくないがために、ジェファーソンやケネディ、レーガンを成功した大統領の第2層に含めることで、党派による偏りを回避している様だ。

リンカーンは州の権利に基づくアメリカ合衆国憲法を破壊した。彼は、モリル関税(輸入関税)を支払う余裕のない農業社会に対して、南部を犠牲にして北部を工業化するために、戦争犯罪にあたる戦争を遂行した。南部が滅亡するや否や、北軍はアメリカ平原インディアンに対する殲滅戦争を開始した。南部を強姦し略奪した同じ北軍の将軍、シャーマンとシェリダン、そして同じ北軍兵士たちが、残された先住民に対しても同じことを繰り返した。リンカーンは、この大量虐殺の報いとして、米国の歴史家たちから史上最高の大統領、つまり第一位の大統領に選ばれている。

フランクリン・D・ルーズベルトは、議会の権力を規制機関の権力に置き換えたため、第 3 位に格付けされている。

セオドア・ルーズベルトは、米国側の帝国主義と覇権主義の政策を確立したため、第4位に格付けされている。

アイゼンハワーが5位に格付けされているのは、彼が第二次世界大戦で米国に勝利をもたらしたとされているからだ、と考えられる。

トルーマンは日本に核攻撃を仕掛け、ソ連に警告を与えたため6位に格付けされている。

これらの功績を見ると、ワシントンとジェファーソンは別として、一覧の9位にあるロナルド・レーガンは、経済的大惨事と、熱戦に発展する可能性があった冷戦から米国を救った唯一の人物である、といえる。

リベラル派や自称左翼は、レーガンは単なる偽物、ソ連の破壊に専心する戦争屋の一人だった、と言う。

しかし、偽物の大統領が私を経済政策の責任者に任命したり、冷戦終結に反対するCIAの主張を検証したり反証したりするための大統領の秘密委員会に私を任命したりすることは決してないだろう。私は、偽物の大統領が大統領人事や重要な外交政策問題の決定を下すのを絶対に望まない人物だからだ。

さて、トランプ大統領就任後100日間の祝福と非難の報告がすべて揃った今、それらは何を意味しているのでしょうか?

トランプ大統領は、バイデン政権の反米政権によって陥れられた米国民を恩赦し、釈放したことで、正義のために良いおこないをした、と言える。彼らは憲法上の権利を行使して不正選挙に抗議した。しかし、無実の米国民を陥れた腐敗した者たちは、当然逮捕・起訴されるべきであるにもかかわらず、逮捕・起訴されていない。なぜトランプ大統領は、無実の米国国民を「反乱分子」に仕立て上げた者たちではなく、ウクライナ問題に焦点を絞っているのだろうか?

民主党は、DEI指定者と移民侵入者のために民主党が創設した法的特権をトランプ大統領が撤回することに強く抵抗する姿勢を示している。法的機関において最下層に位置する民主党の地方裁判所判事は、アメリカ合衆国大統領の統治権を決定する権利を主張している。これに対し、トランプ大統領は司法判断に従うと反論している。トランプ大統領は最高裁が地方裁判所の判決を覆すことを期待しているが、もしそれが実現しなかった場合、トランプ大統領は戦うのだろうか?

トランプ自身がゼレンスキー大統領と取引を交わし、プーチン大統領はそれを受け入れなければならない、と主張している。これは全く馬鹿げている。この対立は米国とロシアの間の問題であり、取引はトランプとプーチン大統領の間で成立させなければならない。

本当の問題は、米国の覇権をめぐるネオコンの教義にある。米国の外交政策がポール・ウォルフォウィッツの教義に基づいている限り、平和はあり得ない。

トランプは米国の覇権主義を否定していない。彼がそれを否定しない限り、プーチンはどうして彼を信頼できるだろうか?
※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年5月7日)「ポール・クレイグ・ロバーツ:トランプ大統領二期目就任から100日。歴代大統領と比較した通知簿」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒After 100 Days Where Are We?
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:自身ブログ 2025年5月1日
https://www.paulcraigroberts.org/2025/05/01/after-100-days-where-are-we/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

ご支援ください。

ISFは市民による独立メディアです。広告に頼らずにすべて市民からの寄付金によって運営されています。皆さまからのご支援をよろしくお願いします!

Most Popular

Recommend

columnist

執筆者

一覧へ