書評:林千勝『プランデミックの衝撃 WHOの大罪』 ―トランプ大統領が脱退を表明したWHOの負の側面と、「医産複合体」の本性を暴く書物 嶋崎史崇
映画・書籍の紹介・批評トランプ大統領のWHO脱退宣言の背景を知るために
トランプ氏が2期目のアメリカ大統領に返り咲き、初日に大統領令を発出して早速WHOやパリ協定からの脱退を表明するなど、話題になっています(WHO脱退については、後に条件次第で見直しも示唆)。実は1期目も脱退を宣言していましたが、いずれも後にバイデン氏により撤回された、という経緯がありました。
2024年12月、徳間書店から、歴史家の林千勝氏による好著が発売されました。1961年生まれの林氏は「WHOから命をまもる国民運動」の共同代表として、反WHO運動の先頭に立ってきました。日米戦争やロスチャイルド家に関する著作があり、過去の出来事と現在進行形の出来事を連続的に捉え、いわば立体的な議論をしていることが本書の特長です。
日本は世界で最もWHOに忠実な国の一つかもしれないので、その負の側面を知るために、我々日本人こそ、このような書物を繙く必要があります。
以下の新聞記事には、日本の主要メディアが寄せる「世界の感染症対策の司令塔」としてのWHOへの圧倒的な信頼感と、脱退を表明したトランプ氏への猛烈な反発の姿勢が、如実に表れていると思います。
『東京新聞』:「<社説>WHO米脱退へ「感染症」取引に使うな」、2025年2月3日付。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/383489
WHOというと、公衆衛生のために奉仕する正義の組織といった印象が強いかもしれませんが主要出資者にゲイツ財団等、ワクチン推進組織が入っていることを忘れてはなりません。ただし、WHOでも、分野によっては、現場の職員らが地道な努力を重ねて優れた成果を上げている、という肯定的な側面があることまでを、私が否定するわけではありません。
WHOの財源:https://www.who.int/about/funding/contributors
「ワンワールド、ワンヘルス」という美辞麗句に潜むグローバリズムの影
WHOの前身である国際連盟保健機関(LNHO)に、ロックフェラー財団が予算の半分近くを援助し、組織面で支配していた(107頁)という林氏の指摘には、歴史の根深さを感じさせられます。
世界のコロナ対策に影響を与え、特に、どれだけの副反応被害者が出たかわからないmRNAワクチンを一方的に推奨した組織でもあります。
「ワンワールド、ワンヘルス」というWHOの旗印は、地域ごとの特性を無視して、一律の基準を全世界に押し付けるグローバリズムの弊害面を象徴している、とも解釈することができるでしょう。
仕組まれたパンデミック疑惑としての「プランデミック」
表題の「プランデミック」とは、計画的に仕組まれたパンデミック、といった意味です。
著名なウイルス研究者で、林氏が「アンチ・ファウチ」「アンチ・ビッグ・ファーマ」「アンチ・ディープ・ステート」の「急先鋒」(60頁)とみなすジュディ・マイコヴィッツ博士による造語です。同名のドキュメンタリーの日本語字幕版もあります。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm39516678
新型コロナ人工説や、感染者数水増し、アンソニー・ファウチ博士が主導した治療法の誤り等を巡る疑惑に迫る衝撃的な記録映画です。「医産複合体」との闘いで不当にも投獄すらされたマイコヴィッツ博士には、日本語に訳された以下の著作があります。
伊藤裕幸訳『腐敗した医療製薬複合体によるワクチン薬害』(ケント・ヘッケンライヴェリーとの共著)、幻冬社、2023年。
「プランデミック」という言葉は、いわゆる陰謀論の極致とみなされるかもしれません。しかし、実際に、米国の研究機関であるジョンズ・ホプキンス・センターが「SPARS PANDEMIC」といった名称で、パンデミックの詳細な想定シナリオ、シミュレーションを書いている事実に鑑みると、不可解な疑問を感じざるをえません。
https://ia902805.us.archive.org/25/items/spars-2025a-2028/spars%202025a2028_text.pdf
日本では、原口一博衆院議員も、「プランデミック」を題名とした書籍を上梓しています。
藤井良彦さん:「登校拒否新聞書評欄:原口一博著『プランデミック戦争 作られたパンデミック』(青林堂、2024年10月)」2024年12月28日。
https://isfweb.org/post-48664/
2024年12月に公開されたアメリカ連邦議会下院の最終報告書でも、新型コロナウイルスは研究所起源である可能性が高い、という結論が出されました。武漢ウイルス研究所への米国からの資金提供や技術支援も含め、疑惑は深まっています。ただし、意図的にウイルスが散布された、という具体的な証拠があるわけではありません。いずれにせよ、これまで主流だったウイルスの自然発生説は厳しくなっています。
FINAL REPORT: COVID Select Concludes 2-Year Investigation, Issues 500+ Page Final Report on Lessons Learned and the Path Forward
本書で解説される内容は、一般メディアでは重視されませんが、脅威を感じさせるものです。
・ウイルスの能力をわざわざ高める機能獲得研究や、高リスクな動物感染実験
・定足数を満たさないなど、無法な仕方で可決された改正国際保健規則(IHR):いわゆるパンデミック条約と合わせて、WHOに主権国家以上の公衆衛生上の権限や、誤・偽情報対策と称した検閲の権限を与える恐れが指摘されている(草案段階によって違いがある)
・日本には無人島が多くあるのにもかかわらず、東京都内や長崎市内の市街地で稼働する高リスクなウイルス実験施設(いずれもエボラウイルス等を研究)
・政府による偽・誤情報対策を含む「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」
・既存のmRNAワクチンの安全が保障されていないのに、世界に先駆けて投入された新型のレプリコン(自己増殖型)ワクチン
長崎大学高度感染症研究センターウイルス感染動態研究分野:
https://www.ccpid.nagasaki-u.ac.jp/annex/nanbo/index.html
「エボラウイルスをマウスに感染させる実験、国立感染症研究所が開始…地域住民らに説明」、『読売新聞』2024年3月27日。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20240327-OYT1T50178/
改定IHR(国際保健規則)を巡る問題点:無法な採決、強制性、検閲、主権侵害を巡る懸念
特に改定IHRについて、林氏は国民主権や基本的人権等の憲法秩序と矛盾し、法律事項や財政事項を含むため、本来なら国会承認が必要な国際約束のはずだ、と指摘します。にもかかわらず、当時の上川陽子元外相は、「IHRはWHOの規則なので国会の承認を求めなくてもいい」という趣旨の重大な答弁を、原口一博衆院議員に対してしています(184頁以下)。
第213回国会衆議院予算委員会第3分科会第1号2024年2月27日:
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121305268X00120240227¤t=5
しかもIHRが採決されたWHOのA委員会の議長が、厚労省参与の中谷比呂樹氏なのですから、日本は被害者であるというより、非常に主体的に動いているといえます(194頁以下)。
「世界中、80億人に見てもらいたいA委員会の全貌 林千勝」、『Channel Grand Strategy』、2024年4月27日。https://www.youtube.com/watch?v=bpQl09nfPcA
IHRについては、武見敬三前厚労相が、「強制措置」を明記することに失敗したことを認めました。しかし合意が見送られたいわゆるパンデミック条約に、「強制措置」を盛り込んでいくことに意欲を示していました。その強制措置に、mRNAワクチン強制接種が含まれるかどうか、気になるところです(強制措置については、本書204頁以下も参照)。
高橋清隆の文書館:「『必要な強制措置があってもおかしくない』と武見氏、パンデミック条約成立に意欲」、2024年6月28日。
http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/2062838.html
武見大臣会見概要(2024年6月28日):
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00706.html
関連記事:
嶋崎史崇:「5月31日の反WHO巨大デモを振り返る ―左派・リベラルは右派・保守主導の反グローバリズム運動にどう向き合うのか?(上)」、『ISF独立言論フォーラム』、2024年6月18日。https://isfweb.org/post-38874/
嶋崎史崇:「5月31日の反WHO巨大デモを振り返る ―左派・リベラルは右派・保守主導の反グローバリズム運動にどう向き合うのか?(下)」、『ISF独立言論フォーラム』、2024年6月19日。https://isfweb.org/post-38878/
なぜあえて「医療のマンハッタン計画」なのか?
林氏は、日本で世界に先駆けて承認、使用されているレプリコンワクチンを、「日本人への3度目の原爆」と表現したことで、批判されることもあります。しかし、CDC元長官のロバート・レッドフィールド氏が、新型コロナ研究所流出説を念頭に、「バイオセキュリティーは核危機同様の危機」と発言したことも併せて考える必要があります(163頁以下)。ウイルスの機能獲得研究で世界的に知られる東大名誉教授の河岡義裕氏が、人獣共通感染症の研究計画を、非常に不吉にも、「医療のマンハッタン計画」と位置付けていることも、我々全員が知っておくべきことです(37頁以下)。なぜあえてこのようないわくつきの名称を、人命を救うための医療計画につけるのか、考える必要があります。
河岡義裕氏:「人獣共通感染症並びに新たな医療分野の研究開発体制」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/tyousakai/dai3/siryou05-2.pdf
「WHOから命をまもる国民運動」と、国際的連帯による希望
一般のメディアがほとんど報道しないうちに、日本は存亡の危機に立たされているのかもしれません。しかし林氏が主催者の一人である「WHOから命をまもる国民運動」は、東京で24年に3度にわたって、数万人単位の巨大デモを平和裏に成功させました。特に9月28日の有明での集会には、世界各国から心ある科学者らが応援に駆け付けました。巨大な危機の中、国際的連帯という希望が芽生えています。
「科学にシステムとしての自浄作用はなく、個人の倫理によるところが大きい。それなのに『科学の部外者は介入するな』というのは『非科学的』としか言いようがありません」(75頁)という林氏の言葉には、勇気づけられます。
トランプ新政権で、薬害との闘いに生涯を捧げてきたロバート・ケネディ・ジュニア弁護士が厚生長官に指名されました。林氏が『The Real Anthony Fauci』(上・中・下、経営科学出版、2023年)や『パンデミック13のひみつ』(経営科学出版、2024年)等の著書に解説を寄せ重視するケネディ氏が、上院で実際に承認されるかどうかも焦点です。
林氏の今後の活動に加えて、なるせゆうせい監督による反WHO国民運動についてのドキュメンタリー映画も注目に値します(クラウドファンディングは既に終了)。
https://camp-fire.jp/projects/793110/view
関連情報:
嶋崎史崇:「反WHOデモの呼び掛け人、佐藤和夫さんへのインタビュー:ウクライナ問題等国際情勢にも通じ、『大同団結』と日本の真の独立を目指す行動の人」、2024年7月4日。https://isfweb.org/post-39678/
ISF主催公開シンポジウム:「WHOパンデミック条約の狙いと背景〜差し迫る人類的危機〜」(全3部、2023年11月19日開催)
https://isfweb.org/post-43189/
https://isfweb.org/post-43191/
https://isfweb.org/post-43194/
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1984年生まれ。東京大学文学部卒、同大学院人文社会系修士課程修了(哲学専門分野)。著書に『ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機』(2023年、本の泉社)。主な論文は『思想としてのコロナワクチン危機―医産複合体論、ハイデガーの技術論、アーレントの全体主義論を手掛かりに』(名古屋哲学研究会編『哲学と現代』2024年)。 論文は以下で読めます。https://researchmap.jp/fshimazaki ISFでは、書評とインタビューに力を入れています。 記事内容は全て私個人の見解です。 記事に対するご意見は、次のメールアドレスにお願いします。 elpis_eleutheria@yahoo.co.jp Xアカウント:https://x.com/FumiShimazaki