【櫻井ジャーナル】2025.01.27XML:トランプ大統領がJFK、MLK、RFK暗殺に関する記録の機密解除を命じた意味
国際政治ドナルド・トランプ米大統領は1月23日、ジョン・F・ケネディ大統領(JFK)、ロバート・F・ケネディ上院議員(RFK)、マーティン・ルーサー・キング牧師(MLK)の暗殺に関する記録の機密を解除するように命じる大統領令に署名した。この大統領令は、JFKの全暗殺記録を完全公開する計画を15日以内に提示し、RFKとMLKの暗殺に関しては記録を見直した上で完全公開する計画を45日以内に提示することを求めている。
ジョン・F・ケネディ暗殺
JFKは1963年11月22日、MLKは1968年4月4日、RFKは1968年6月6日にそれぞれ暗殺されたが、いずれもアメリカの情報機関や治安機関が関係していると言われている。JFKの場合、有力な「親米国家」も関係していると推測する人もいる。これまで記録の公開が進まなかった理由のひとつはこうしたところにあるのだろう。
しかし、推測通りCIAやFBIを含む政府機関が暗殺に関与していたとしても最も重要な情報は口頭のみで行われ、文書にはされていない可能性が高い。それに準ずる重要な情報の書かれた文書はすでに廃棄されているだろうが、想定外の場所に文書が眠っている可能性がある。
ケネディ大統領は大統領に就任した直後、インフレを回避するために鉄鋼会社の経営者と労働者に協力を求めた。鉄鋼価格を引き上げないという前提で賃金を据え置いて欲しいと大統領は1962年4月に提案、労働者は受け入れたのだが、業界のトップ企業だったUSスチールの会長は4月、大統領と会談した翌日に3.5%の鋼材値上げを発表すると通告、実際に値上げを発表、業界第2位のベツレヘム・スチールなども後を追うのだが、この決定に大統領は怒り、鋼材の購入先をまだ値上げを発表していないルーケンスに変更した。このやり取りでケネディ政権と鉄鋼産業の関係は険悪になっている。
第2次世界大戦後、アメリカの軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画していた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、それに対してソ連はキューバへ中距離ミサイルを持ち込む。この事実をアメリカがわは1962年8月に察知、9月には地対空ミサイル発射装置を確認した。(Jeffrey T. Richelson, “The Wizards of Langley,” Westview Press, 2001)
1962年10月19日にケネディ大統領は統合参謀本部のメンバーと会うが、その多数派はカーチス・ルメイのような好戦派。運び込まれたミサイルを空爆で破壊すべきだと主張した。空爆してもソ連は手も足も出せないはずだというのだが、ケネディ大統領はこうした好戦派の主張を拒否する。
そして10月22日に大統領はキューバにミサイルが存在する事実をテレビで公表、海上封鎖を宣言したが、戦略空軍はDEFCON3(通常より高度な防衛準備態勢)へ引き上げ、24日には一段階上のDEFCON2にする一方、ソ連を空爆する準備をしている。
10月27日にはルドルフ・アンダーソンが乗った偵察機U2がキューバ上空で撃墜され、シベリア上空ではチャールズ・モールツビーが乗ったU2をソ連のミグ戦闘機が迎撃していた。モールツビーは事態を司令部に報告、引き返すように命じられてアラスカへ向かう。同時にアメリカ側はF102Aを護衛のために離陸させ、ミグよりも早く米軍機がU2を発見、無事帰還できた。こうした出来事を受け、ロバート・マクナマラ国防長官はU2の飛行停止を命令したが、その後も別のU2がモールツビー少佐と同じコースを飛行している。(Richard J. Aldrich, “The Hidden Hand,” John Murray, 2001)
結局ケネディ大統領とソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフはキューバ危機を外交的に解決するが、ダニエル・エルズバーグによると、その後、国防総省の内部ではクーデター的な雰囲気が広がっていたという。ちなみに、ジョン・フランケンハイマーが監督した映画「5月の7日間」はケネディ大統領自身の勧めで制作されているが、映画が完成する前にケネディは暗殺された。(Peter Dale Scott, “The American Deep State,” Rowman & Littlefield, 2015)
ケネディ大統領はイスラエルの核兵器の開発を懸念していたことでも知られている。ダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙を送りつけ、核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になるという警告されていた。(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007)
その一方、ケネディ大統領はイスラエル建国のために故郷を追われて難民化したパレスチナ人の苦境に同情、住んでいた家へ戻り、隣人と平和的に暮らす意思のある難民の帰還を認めた国連決議194号の履行を支持している。(Seymour M. Hersh, “The Samson Option,” Random House, 1991)
キューバ危機を外交的に解決したケネディ大統領は1963年6月にアメリカン大学の卒業式で「平和の戦略」と呼ばれる演説を行い、はソ連と平和共存する道を歩き始めると宣言した。
アメリカが軍事力で世界に押しつける「パックス・アメリカーナ(アメリカ支配による平和)」を否定することから演説は始まり、アメリカ市民は「まず内へ目を向けて、平和の可能性に対する、ソ連に対する、冷戦の経過に対する、また米国内の自由と平和に対する、自分自身の態度を検討しはじめるべき」(長谷川潔訳『英和対訳ケネディ大統領演説集』南雲堂、2007年)だと語りかけた。
平和は不可能であると同時に非現実的だとする考えを「危険な敗北主義的」だとケネディ大統領は批判、そうした考え方は人類の破滅という結論に続いていると訴え、「関係者すべての利益になる一連の具体的措置と有効な協定に基づく、実際的で達成可能な平和に力を注ごう」と主張する。これはケネディ以降の大統領とは正反対の考え方だ。
また、ケネディ大統領は通貨制度へもメスを入れようとする。1913年に連邦準備法が制定されて以来、アメリカでは通貨政策を民間の銀行が支配、連邦準備制度に加盟する市中銀行の出資する連邦準備銀行が紙幣も発行していた。第2次世界大戦後にドルが世界の基軸通貨になったことから米英の巨大金融資本が世界の金融に大きな影響力を及ぼすことになった。
この仕組みが財政問題の根本にあると考えたケネディ大統領は1963年6月にEO11110と呼ばれている大統領令を出し、連邦準備制度の枠外で銀兌換紙幣を発行するように命令するが、1963年11月22日に大統領は暗殺され、この命令は取り消されてしまう。市中に流通していた紙幣は回収された。
マーチン・ルーサー・キング牧師暗殺
公民権運動の指導者として知られるマーチン・ルーサー・キング牧師は1967年4月4日、ニューヨークのリバーサイド教会で開かれた「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」主催の集まりに参加した。主催者の発表した声明の冒頭部分に書かれていた「沈黙が背信である時が来ている」という主張にキング牧師は賛成、「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」というタイトルで演説している。
ところがロン・ポール元下院議員によると、キング牧師の顧問たちは牧師に対し、ベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。そうした発言はリンドン・ジョンソン大統領との関係を悪化させると判断したからだが、牧師はそうしたアドバイスを無視、「リベラル派」とされる人々と対立することになる。キング牧師が暗殺されたのはリバーサイド教会での説教から1年後の1968年4月4日のことだ。ダニエル・エルズバーグは宣誓供述書の中で、キング牧師を暗殺したのは非番、あるいは引退したFBI捜査官で編成されたJ・エドガー・フーバー長官直属のグループだと聞いたとしている。(William F. Pepper, “The Plot to Kill King,” Skyhorse, 2016)
ロバート・ケネディ暗殺
キング牧師暗殺から2カ月後の1968年6月6日、その年に予定されていた大統領選挙で最有力候補だったロバート・ケネディ上院議員が暗殺された。検死をしたトーマス・ノグチによると、議員には3発の銃弾が命中、致命傷は右耳後方のもので、銃口は1インチ(2.5センチメートル)以内の距離にあり、残りの2発は議員の右脇に命中していたのだが、逮捕されたのは議員の60センチメートル以上前を歩いていたサーハン・サーハンだった。しかも命中した銃弾はサーハンのピストルから発射されたものでもなかった。
JFK、MLK、RFK、いずれの暗殺とも公式見解に説得力はなく、事実に基づく非公式の調査が続けられてきた。そうした事実に基づく調査を封印するため、JFK暗殺の直後から唱えられ始めた呪文が「陰謀論」である。
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