【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.01.30XML:ネオ・ナチ支援国がアウシュビッツで記念式典を開催、露国が排除される倒錯劇

櫻井春彦

 第二次世界大戦中、ポーランドにはドイツの強制収容所が存在していた。その象徴的な存在がアウシュビッツ(オシフィエンチム)の施設にほかならない。ユダヤ人、ロマ(かつてはジプシーと呼ばれた)、ソ連兵、心身障害者、同性愛者などが収容されていたが、9割程度がユダヤ人だったという。

 その強制収容所は1945年1月27日、ソ連軍によって解放された。解放から80年目にあたる今年、ポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館で記念式典が開催されたのだが、ポーランド政府はロシアの代表を排除している。

 ドイツ軍は1941年6月にソ連侵略作戦、いわゆるバルバロッサ作戦を開始した。この作戦で東へ向かったドイツ兵は約300万人、西部戦線に残った兵士は90万人と言われている。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したが、アドルフ・ヒトラーがそれを退けたという。この非常識なヒトラーの「判断」は背後からイギリスなどが攻撃してこないことを「予知」していたからではないかと思える。

 ドイツ軍は1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫る。ソ連軍は敗北し、再び立ち上がることはないと10月3日にアドルフ・ヒトラーはベルリンで語り、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官で、後にNATOの初代事務総長に就任するヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測している。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015)

 ソ連の敗北を予想しながら動かなかったイギリスが動き始めるのは、1942年11月にソ連軍がレニングラードで猛反撃に転じ、ドイツ軍25万人が完全に包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名が降伏した後だ。ドイツの敗北が決定的になり、慌てたということだ。

 チャーチル英首相はフランクリン・ルーズベルト米大統領やフランスのシャルル・ド・ゴールと1943年1月にモロッコのカサブランカで急遽会談している。「無条件降伏」という語句が出てきたのは、この会談の時。ドイツの降伏を遅らせ、米英が軍事作戦を行う時間的な余裕が欲しかったのだろうと言われている。そして1943年7月に米英両国軍はシチリア島へ上陸、ハリウッド映画で有名になったノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は44年6月になってからだ。

 ヒトラー率いるナチがドイツで実権を握ったのは1933年に国会議事堂が放火された後。ナチが実行したと見られているが、コミュニストの犯行だと宣伝され、それが成功したわけだ。この年の8月にシオニストはナチ政権との間でユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意している。「ハーバラ合意」だ。

 ナチによる弾圧で少なからぬユダヤ人がヨーロッパから脱出したが、パレスチナへ向かった人は多くなかった。大半はオーストラリアやアメリカへ逃れたとされている。ヨーロッパの文化、風習、自然環境などに親しんだ人たちがそうした国へ逃れるのは当然だったが、それをシオニストは見通せなかったのだろう。大戦後、パレスチナに住むユダヤ人を集めるため、イラクなどでユダヤ人を狙ったテロ攻撃を実施している。

 ナチはアウシュビッツだけで人びとを虐殺したわけではない。例えばウクライナではステファン・バンデラが率いていたOUNのバンデラ派(OUN/B)と手を組み、ユダヤ人、知識人、ロシア人、コミュニストなどを殺している。ウクライナでは、そのバンデラ派が2014年のクーデター以降、実権を握っている。そのウクライナをポーランド政府は支援してきた。

 それに対し、ロシアのウラジミル・プーチン政権はウクライナからナチ勢力を一掃するとしている。その条件はロシアにとって譲れない。ドナルド・トランプ米大統領はロシアがウクライナでの戦闘で100万人を失い、西側の「制裁」で経済が破綻しているという前提でウクライナ問題を語っている。そうしたことを本当に信じているのだとすれば、彼の停戦案は相手にされない。ロシア政府は「ミンスク合意」の過ちを繰り返すことはないだろう。2022年2月以降に犠牲になったウクライナ兵は80万人程度、ロシア兵はその1割程度だ。

 ロシアが苦境に陥っているという「御伽話」をトランプに吹き込んだ人物がいるとするならば、それはCIAの担当者か、彼がウクライナ担当特使に指名したキース・ケロッグ退役陸軍中将なのだと推測されている。

 もし、トランプがそうした戦況を認識しているのだとすれば、そうした発言はカモフラージュで、ウクライナへの支援を止めて成り行きに任せるつもりかもしれない。そうした場合、1カ月程度でウクライナは戦争を継続できなくなる。

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