【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月3日):タリック・シリル・アマール「EUとウクライナ抜きでの米露会談がなぜ平和への唯一の道なのか」

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


2025年2月18日にサウジアラビアのリヤドでおこなわれたロシアと米国の会談に出席中のロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の外交政策顧問ユーリ・ウシャコフ氏(右から2番目)© ロシア外務省/配布資料/アナドル経由ゲッティイメージズ

サウジアラビアの首都リヤドでおこなわれるロシアと米国の高官級会談が歴史に残るものとなることはすでに確実だ。

ウラジーミル・プーチン大統領とドナルド・トランプ大統領の最近の電話会談、およびドイツにおけるJ・D・ヴァンス米副大統領とピート・ヘグゼス国防長官の発言と合わせて、リヤド会談は、非常に危険な状況が終わったことを示している。すなわち、米国の妨害行為によって課せられていた、世界最大の二大核保有国間の奇妙な非対話期間が終わった、ということだ。

我々は今、再び(少しだけだが)より正常な世界に戻り、米国側は外交の最低条件である対話が 維持できる状況に戻ったことを、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が会談後の記者会見で強調した。さらに、米国代表団は、このような会談は参加国の国益を反映すべきである、と明確に認めた。これは、もうひとつの重要かつ潜在的に非常に有望な回帰である。つまり国際関係について考える手段としての固有名詞としての「現実主義(*)」にも、夢想するのではない健全な習慣としての現実主義にも、両国が則ろうとしている、ということだ。ラブロフ外相もその側面を指摘していた。
*国家間の力の競争や勢力均衡を重視する考え方

答えるのがより難しい質問は、リヤドで何が始まったのかということだ(そして、明らかにまだ何も終わっていない)。何かが始まったことは疑いようがないからだ。ラブロフ外相によると、会談は「非常に有益」で、単に「聞く」だけでなく、実際に「お互いに耳を傾ける」という特徴があったという。この表現は形式的な言い回しではない。明らかにロシア側は、少なくとも行き詰まっていないと感じている。そして、米国側からも反対のことは何も出てきていない。これまでのところ、順調だ。

これから何が始まるかは、誰もが知っている。それは明らかに、ウクライナ戦争の終結だ。それに加えて、ロシアと米国の新指導部は、両国関係のより広範な正常化、つまり第2幕の緊張緩和とでも呼んでいい、そんな状況の実現に関心がある、と明言している。このような状況は、ひいては国際政治全般に影響を及ぼす可能性がある。そして最後に、両国が政治だけでなく、明らかに重要視している経済面への影響がある。


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地政学の面では、米国側が期待すべきではないことが一つある。それは、ロシアとロシアの現在の同盟諸国や友好諸国との間に亀裂を生じさせようとするいかなる試みも失敗する、ということだ。例えば、ロシア当局はイランとの関係は危ういものではない、とすでに明言している。

経済面で衝撃的だったことは、ロシア当局がロシア直接投資基金(RDIF)のキリル・ドミトリエフ総裁をリヤドに派遣したことで、米国とロシアが西側諸国の経済戦争という愚行を捨て去る可能性が高まったのと同時に、ヴァルディス・ドンブロフスキスEU委員が、政治的に無力で経済的にも衰弱したEUは、自らを大いに傷つける制裁に固執するだろう、と示唆したことだ。まあ、うまくいくといいが。しかし、長くは続かないだろう。

ロシアがウクライナのEU完全加盟を受け入れる可能性があることを示唆していることは、ロシアがその方向について何も恐れていないことの証拠である。実際、ウクライナに残されたものをEUに負担させることはロシア側にとって有利にさえ見えるかもしれない。

EUが米国よりもさらに好戦的になり、米国の支援がなくてもウクライナ戦争を継続するために頑固な同盟をまとめようとする現在の必死の試みは、感心できない。その理由は単純だ。米国の関与があったとしても、西側諸国とウクライナのゼレンスキー政権はロシアに敗北したからだ。米国の関与がなければ、敗北はより悲惨なものになるだけだったろう。さらに、ラブロフ外相は、ロシアがNATO 軍を「平和維持軍」として裏で投入することには同意しない、と明言している。

そして、リヤドの会議での最期の要点は、NATO-EUの欧州「支配者層」とゼレンスキー政権を締め出すことは、効果的であり、成果や協力、平和を促進するものになる、ということだ。おそらく、欧州-ヨーロッパとウクライナの国民も、自分たちの「支配者層」を排除し始めるべきだろう。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年3月3日)「タリック・シリル・アマール「EUとウクライナ抜きでの米露会談がなぜ平和への唯一の道なのか」」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Shutting the EU and Ukraine out of the talks is the only way to peace
ロシアと米国がようやく交渉の席に着いたことで、私たちが暮らす世界は今、少しだけ正常になった。
筆者:タリック・シリル・アマール(Tarik Cyril Amar :イスタンブールのコチ大学でロシアやウクライナ、東欧、第二次世界大戦の歴史、文化的冷戦、記憶の政治について研究しているドイツ出身の歴史家)
出典:RT 2025年2月18日
https://www.rt.com/news/612964-russia-us-talks-peace/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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