
植草一秀【連載】知られざる真実/2025年3月 7日 (金) 焦点の高額療養費と企業献金禁止
社会・経済予算審議が参議院に移り、石破内閣が重要な判断を示す模様。
高額療養費制度改悪の凍結を判断すると報じられた。
今次通常国会での最重要テーマの一つ。
前向きの内容ではないが完全な後ろ向きを断念するということ。
7月に参院選を控えている。
このまま高額療養費制度改悪に突き進めば、参院選で大敗することが避けられないとの判断が背景だと考えられる。
本ブログ、メルマガでも最重要問題として取り上げてきた。
石破内閣が市井の声に耳を傾けて誤りを正すことは評価に値する。
これまでの独裁政治運営では考えられなかった変化。
しかし、衆院の事例もあり、正式な表明がなされるか注視が必要だ。
今次通常国会では政治資金規正のあり方についても論議される。
後半国会の最大テーマの一つ。
自民党裏金問題の真相が明らかにされていない。
旧安倍派事務局長が刑事訴追され刑事罰を科せられた。
しかし、犯罪行為の真の実行者は事務局長ではないと推察される。
真の犯罪者が無罪放免にされ、末端の事務局員が刑事訴追されることは公正でない。
まさにトカゲの尻尾切り。
旧安倍派事務局長は衆院予算委員会聴取に応じ、真相の一端を供述した。
この供述を元に旧安倍派幹部を国会に参考人招致する必要がある。
らちが明かなければ議員証言法に基づく証人喚問を実施する必要がある。
石破首相は自民党内力学を考慮する際に、旧安倍派勢力の減退を嫌わないと考えられる。
自民党内部では、これまで旧安倍派支配と表現できる状況が存在したが、これを是正したいと考える構成員は少なくない。
旧安倍派を中心とする裏金事件の真相を明らかにすることは自民党旧安倍派を抑止する上で有効だ。
このことも含めて裏金問題の真相解明が推進されることが望まれる。
政治資金規正法改正の根幹は企業団体献金の全面禁止。
資本力で優越する大資本による政治献金を認めれば、政治が大資本によって支配される事態を招く。
〈政治とカネ〉問題は古くからの重大問題。
企業と政治の癒着を断ち切るために政党交付金制度が新設された。
政治資金を国民が負担する制度が創設されたのだ。
この制度は企業団体献金全面禁止を前提に創設された。
その政党交付金制度が確立されたのに企業団体献金が維持されている。
政治が特定企業・団体・業界に利益供与する。
利益供与を受けた企業がその利益の一部を政治家や政党にキックバックする。
企業団体献金制度は〈合法の賄賂政治〉の基盤になっている。
これを是正するには企業団体献金を全面禁止するしかない。
この実現に向けて野党が結束するべきだ。
自民党は存立の根幹が企業献金である。
企業献金のために利権政治を実行していると言っても過言でない。
したがって、自民が企業献金全面禁止に動くことはかなり困難。
石破首相は念願の首相に就任したのだから、こうした大きな仕事の実現を目指すべきだ。
より大きな問題は野党の対応。
衆院で野党が過半数を握っているから、野党が結束すれば重要法案を衆院で可決できる。
野党のなかでどの政党が企業献金全面禁止に反対するのかが注目点だ。
これまでの論議では国民民主党が企業献金全面禁止に最も消極的であると見られる。
自民党が反対することを念頭に置き、全会一致での決定が重要だと主張する。
自民が反対することを前提に考えると、企業献金全面禁止に消極的であることが分かる。
国民民主は自民との連立政権に加わり、企業献金の甘い蜜を吸うことを目指しているのだろう。
このような利権政治がはびこる以上、日本政治は改善されない。
主権者である私たちは、真に主権者の立場で判断し、政策を提示し、行動する野党勢力を明確にして、その〈真の野党〉を全面支援しなければならない。
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植草一秀の『知られざる真実』2025年3月 7日 (金)「焦点の高額療養費と企業献金禁止」
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植草一秀(うえくさ かずひで) 1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。 経済金融情勢分析情報誌刊行業務の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」を発行。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門1位。『現代日本経済政策論』(岩波書店、石橋湛山賞受賞)、『日本の独立』(飛鳥新社)、『アベノリスク』(講談社)、『国家はいつも嘘をつく』(祥伝社新書)、『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)、『低金利時代、低迷経済を打破する最強資金運用術』(コスミック出版)、『出る杭の世直し白書』(共著、ビジネス社)、『日本経済の黒い霧』(ビジネス社)、『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社、2023年1月刊)など著書多数。 スリーネーションズリサーチ株式会社 http://www.uekusa-tri.co.jp/index.html メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」 http://foomii.com/00050