【連載】沖縄返還50年、日米南西諸島ミサイル要塞化(新垣邦雄)

第2回 戦争をする国へ、慰霊の日と参院選 

新垣邦雄

「日本を守る」。参院選公約の発表で自民党・高市早苗政調会長は高らかに言い放った。安倍晋三元首相の姿がだぶる。「中国を念頭に防衛力を強化」、「防衛費を倍増、10兆円に」。日々の紙面を勇ましい言葉が埋める。防衛強化論は野党をも巻き込んでいる。メディアや世論も同調する気配だ。この国はどこへ向かおうとしているのか。

「中国との戦争」が現実味を帯びる中で、「戦争をする国」への国の形の大きな変革に向き合わされているときに、この問題が参院選の大きな争点になっていない。政党、新聞・言論、世論が「総翼賛体制」化した去る大戦前の状況を思い返さざるをえない。

News headline that says “war” in Japanese

 

昨年末、共同通信は「台湾有事で日米共同作戦計画」「南西諸島、米軍攻撃拠点に」「住民巻き添えリスクも」(沖縄タイムス)と報じた。記事を書いた石井暁・編集委員は、『世界』3月号で、米軍が自衛隊側に「台湾有事の共同作戦計画を早期に策定すべきだ」と強く圧力をかけていた内幕を明かしている。

China and Taiwan relationship illustration. Shadow of China’s ambitions for Taiwan.

 

そのなかで、自衛隊幹部が「彼ら(米軍)の頭の中には軍事的合理性しかない。日本の政策も国内法も関係ない。ましてや南西諸島の住民の存在など、はじめから考えていない」と語っていたことを記している。

当の自衛隊幹部が「南西諸島住民の犠牲」を憂慮していること、「住民の犠牲」を織り込み済みで「日米共同作戦計画」が立案、作成されていた事実。このような事柄が新聞、雑誌、メディアに公然と報じられ、本土国民の中から異論の大きな世論が湧き上がっていないこと。「沖縄の犠牲は仕方がない」。そのような風潮がまん延してはいまいか。日本にとっての国益は何なのか。国益の中に、沖縄の命は含まれていないのか。

「日米共同作戦計画」とは何か。『世界』3月号で石井編集委員は、年初の「2プラス2」日米外務・防衛閣僚協議後の岸信夫防衛相との記者会見質疑を記している。

岸防衛相「共同計画に関する詳細については答えを差し控えさせてもらう」。
記者「(共同作戦計画)原案に、南西諸島に米軍の攻撃用軍事拠点を臨時に設置することが含まれるが、答えられないというのは、南西諸島住民に対してたいへん失礼な話だと思うがいかがか」。
岸防衛相「申しわけないが、答えは差し控えさせていただく」。
記者「住民の生活とか人生とか命がかかっているのに、それでも答えられないのか」。
岸防衛相「答えは差し控えさせていただく」。

「住民の生活、人生、命が関わる問題」に防衛大臣が答えない。その一方で、「南西諸島は日本防衛の最前線」(岩屋毅元防衛相)、「台湾有事は日本有事」(安倍元首相)、「(台湾の)次は沖縄」(麻生太郎元副総理)と「台湾防衛」と「日本防衛」をイコールに結び付け、中国脅威論をあおり、中国との戦争の防波堤に沖縄を位置付けて恥じない政治家の無責任な言辞が積み重ねられていく。

岸田文雄首相は日米首脳会談に続くアジア安全保障会議で、中国を念頭に重ねて「防衛力の抜本強化」を表明し、アジアの「有志国」に「安保協力」を呼びかけた。日本の首相として初めてNATO(北大西洋条約機構)首脳会議にも出席を予定し、日米欧亜の「中国軍事包囲」の先頭に立つ構えだ。その一方で中国の習近平国家主席とは、昨年10月に電話会談して以降、対面、電話会談を行っていないという。なぜ習主席と「戦争だけは避けよう」と話し合わないのか。

沖縄は中国との戦争の最前線に位置付けられている。県民はこの事態にどう向き合うべきか。「日米共同作戦」なるものの正体を見極めることが第一だろう。作戦から実戦へと緊密一体化する日米共同作戦の内実を見据えることから始めるべきだと思う。

石井編集委員は「共同作戦計画」を「共同計画」と記述する言い替え「ソフトなイメージの誤魔化し」に触れている。軍事シャーナリストの前田哲男氏は『世界』7月号で、日米ガイドラインなどの「ウォー・プラン」の表記に言及している。「共同作戦」とはつまり、「ウォー・プラン」戦争計画にほかならないであろう。

筆者が参加する「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は昨年末の上記の共同通信報道「台湾有事で南西諸島に軍事拠点」を受け、即日で緊急声明を発表し、「沖縄を戦場とする日米共同作戦計画の中止」と「詳細な内容開示」を日米両政府に求めた。岸防衛相は説明を拒んでいるが、沖縄県民は戦場となる当事者として「共同作戦計画」「戦争計画」の具体的な内容を知る権利がある。

Eastern Coast of China map close up in an small world globe (this picture has been shot with a High Definition Hasselblad H3D II 31 megapixels camera and 120 mm f4H Hasselblad macro lens)

 

沖縄では自衛隊ミサイル部隊が配備されるうるま市を皮切りに、北谷町、北中城村で「ミサイル要塞化写真展」が続いている。筆者は会場で説明要員に加わっている。南西諸島の島々の自衛隊ミサイル部隊の配備、米軍のミサイル配備計画を写真やイラスト、アニメ動画などで説明している。参観者は「怖い。沖縄が戦場になりかねない」と声を揃えるが、「中国も怖い。防衛も必要では」と戸惑う声も聞く。

同じ人が「ミサイル基地に反対。でも抑止論にも一理ある」と言ったりする。戦争を招く防衛強化への反発と、米国・自衛隊の「抑止力」に頼む思いが自己矛盾的に交錯していると感じる。

私は「軍拡競争は相互破滅のミサイル戦争に陥りかねない」こと。「日米共同作戦計画」が沖縄を「台湾有事の攻撃拠点」に位置付けていること。沖縄が戦場にならないために「ミサイル基地反対の声を上げることが大事」と話している。

例えばこのように説明する。

自衛隊の「島嶼防衛用高速滑空弾」。超音速で変則飛行する滑空弾の開発が進み、「島嶼防衛用」の名称通り、沖縄の島々に配備が計画される。4月2日の共同通信配信記事「米陸軍、極超音速ミサイル配備へ、23年末までに」。マッハ5以上の米軍最新ミサイルが「来年末」までに「沖縄を含む列島線に配備」と記事は明記する。

いずれも超音速、変則飛行で「防御不可能」と言われている。中国も開発配備し「防御不能なミサイルを双方が向け合う共倒れの戦争」に至りかねないこと。なおかつ共同通信の記事には核搭載可能な地上配備型中距離ミサイルの配備計画も記されている。台湾有事に日米が共同対処しようとする戦争は極超音速のミサイル戦争にほかならないこと。

自衛隊「島嶼防衛用高速滑空弾」の「運用イメージ」には、沖縄の島々を想定する一つの島から隣りの島に「高速滑空弾」を撃ち込む図が示される。この図を前に参観者はきょとんとしあ然とする。「なぜ友軍(自衛隊)のミサイルが県民の住む島に?」。「運用イメージ」には「島嶼が侵攻された場合、島を奪回するための作戦」と説明書きがある。

自衛隊の教本には「島嶼防衛は不可能」と記されている。である以上「奪われた島を奪い返す」、「島嶼奪回訓練」に日米は力を入れている。参観者から「奪われるときにミサイルを撃ち込まれ、奪い返すために自衛隊や米軍のミサイルが撃ち込まれるの? 住んでいる住民はどうなるの」と憤りの声があがる。宮古や石垣で自衛隊は「住民避難は自治体の責任」と説明する。

「ひどい。無責任じゃないの」。「法律でそうなってます」。「日米共同作戦」の共同通信の報道で制服組幹部が語った「日本が台湾有事に巻き込まれることは避けられない。申しわけないが、自衛隊に住民を避難させる余力はない。自治体にやってもらうしかない」とのコメントを紹介している。

紙数が尽きた。6月23日(慰霊の日)の地元紙紙面は沖縄戦の慰霊と、「次の戦争」への不安が交錯した。両紙社説の標題のみ紹介しておきたい。「ノーモア戦争の声を」(沖縄タイムス)、「『前夜』を拒絶する日に」(琉球新報)。沖縄は「戦争前夜」を生きている。

 

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新垣邦雄 新垣邦雄

1956年、沖縄県コザ市生まれ。コザ高校、明治大学卒業。琉球新報で社会部長、東京支社長。関連会社を経て東アジア共同体研究所 琉球・沖縄センターに所属。2020年4月から同事務局長。同センター発刊『虚構の新冷戦 日米軍事一体化と敵基地攻撃論』(芙蓉書房出版)監修。22年3月退任。「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」事務局。

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