【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.03.14XML: ウクライナ軍の敗北が明確になる中、米政府が提案した時間稼ぎを露政府が拒否

櫻井春彦

 ロシア軍は3月13日、クルスクでウクライナ軍の拠点になっていたスジャを完全に制圧した。地下に埋設されたパイプラインを利用して工業地帯の北東部を抑えて掃討作戦を展開、3月12日には街の中心部へ入っていた。ウクライナ軍がクルスクへ投入した虎の子の部隊は大きな損害を受けているが、その程度はロシア軍の15倍から20倍と推測されている。クルスク以外のそれ以外の戦線でもロシア軍が圧倒、キエフのクーデター体制を樹立させ、支えてきた欧米諸国にとって厳しい状況だ。

 こうした状況でロシア側が「即時暫定30日間停戦」に応じる可能性は小さかったが、ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官はアメリカの停戦案について、「これはウクライナ兵の一時的な時間稼ぎであり、それ以上のものではない」と発言した。ウシャコフはアメリカ側に停戦案を拒否すると伝えたようだ。ドナルド・トランプ政権は、ウクライナへの武器と情報提供を再開するというが、戦況に変化はないだろう。アメリカ政府はロシア政府が拒否すること予想できなかったとは思えず、武器供与を再開するための芝居だと見る人もいる。

 アメリカのバラク・オバマ政権は2014年2月、ネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデター体制を拒否、軍や治安機関の約7割が離脱したと言われている。つまりクーデターの直後、新体制は脆弱だった。そこで欧米諸国はクーデター体制の戦力を増強する時間が必要になる。その時間稼ぎのために使われたのが2014年のミンスク1と15年のミンスク2だ。​アンゲラ・メルケル元独首相​や​フランソワ・オランド元仏大統領​は後にその事実を認めている。

 ロシア政府はNATO諸国に対し、NATOの東方への拡大を止め、モスクワを標的にできる攻撃システムをロシアの隣国へ配備しないことを法的に保証、NATOなど西側諸国によるロシア国境近くでの演習を禁止、NATOの船舶や航空機はロシア国境から一定の距離より内側へ入らないこと、定期的な軍同士の協議、ヨーロッパに中距離核兵器を配備しないこと、そしてネオ・ナチの排除などをロシアは要求している。

 トランプ大統領が今回のような脅しがロシアに通用すると本当に考えているとするならば、彼はロシアが経済的に悪い状態にあると信じているのだろうが、それは誤情報だ。アメリカの情報機関が大統領に対して偽情報を伝えていることになる。

【追加】

 3月13日にはトランプの特使としてスティーブ・ウィトコフがモスクワでプーチンと会談、ウクライナの停戦について話し合ったというが、ロシア側の姿勢を変えることは無理だと見られている。それにもかかわらずトランプが特使を派遣したのは、彼の「御伽話」を西側で信じさせるための演出なのかもしれない。

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