【連載】今週の寺島メソッド翻訳NEWS

☆寺島メソッド翻訳NEWS(2025年4月2日):ポール・クレイグ・ロバーツ。「ロシア軍による軍事的勝利の方が、交渉よりも平和を速める」

寺島隆吉

※元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。

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交渉というものは、合意をめぐる論争や個人の性格上での対立、怒りや軽蔑の喚起、交渉者の自分勝手さの関与など多くの欠点が見受けられるものだ。そしてこの交渉はロシアにとって良い結果をもたらさなかった。ウクライナはすでにプーチン大統領がトランプ大統領と結んだ部分的停戦協定に違反している。

ロシアでは、ウクライナのドローン攻撃により、欧州連合に供給するガスパイプラインが炎上している。クルスク(ロシア)とスミ(ウクライナ)の国境付近で巨大な火柱が上がっているのが目撃された。一方、ロシア外務省は「ウクライナ側はすでに停戦に違反している。トランプ大統領は、この狂ったテロリストたちにどう対処するのだろうか?」と不満を漏らしている。

トランプ大統領とプーチン大統領が「エネルギー基盤施設」に対する停戦に合意したのは、今週の初めのことだ。「プーチン大統領は同意し、直ちにロシア軍に適切な命令を伝えた。プーチン大統領の命令は非常に効果的だったため、すでにウクライナに向けてドローンを発射して目標に向けた攻撃を開始していたロシア軍は、プーチン大統領の命令により、問題の発生を回避するため、ロシア自国の防空軍事設備を使って自国のドローンを撃墜した!」
https://halturnerradioshow.com/index.php/news-selections/world-news/ukraine-Attacks-russian-gas-pipeline-energy-infrastruct

ナデジダ・ロマネンコ記者は停戦協定の即時違反について報告している。

「この最新の事件は、突発的に発生したものではありません。この事件は、ずっと前からおこなわれてきた欺瞞と挑発に満ちた手口のひとつにすぎません。そんな事例はきちんと文書でも残されています。ロシアからの善意に基づく合意がおこなわれた時には、特にこういうことが行われてきたのです」と。

「別の展開を予想していた人もいたようですが」と同記者は付け加えた。たしかに、プーチンとラブロフはそれを予想していた。西側諸国との交渉はクレムリンの得手ではないようだ。おそらく、ゼレンスキーからの停戦合意は部分停戦には適用されなかったため、トランプ大統領がゼレンスキーと再び会談する前にウクライナはロシアのエネルギー基盤施設を攻撃したのだ。
https://www.rt.com/russia/614599-kiev-gas-攻撃-trust/

英国首相は、プーチンが停戦協定に違反した場合、ロシアに「壊滅的な結果」をもたらす、と脅していた。同首相は、ウクライナ軍の航空支援のために英国のジェット機を派遣することを検討している。英国の海軍提督は、トライデント・ミサイルを搭載した英国の潜水艦1隻でロシアの40都市を焼き尽くすことができ、プーチンを恐れさせるはずだ、と語った。言い換えれば、米国の「同盟国英国」とNATO・欧州の大半は、ウクライナへの航空支援と、おそらく英国とフランスによるウクライナへの核支援で和平協定を妨害するつもりである、ということだ。我々が直面している問題は、トランプとプーチンの和平協定がNATOの死を意味するかどうかである。

一方、プーチン大統領が紛争に勝つために武力を使うことを望まないことで、ロシアは日々新たな恥ずかしめを受けている。3月20日には、ロシア中部のエンゲルスにあるロシア空軍基地に対してウクライナから大規模なドローン攻撃がおこなわれた。

プーチンは、紛争での勝利を遅らせることで、ロシアの兵器設備をすべて西側に明らかにし、西側が兵器設備に補償調整を加えることを可能にした。こうして、プーチンはロシアの兵器設備における優位性を無駄にした。また、戦争を終わらせないことで、プーチンは西側がロシアの防空武器設備のすべての脆弱性を知ることを許した。プーチンは、交渉の仕方と同じくらい、戦争の仕方にも精通していないようだ。まったく、プーチンは何のために交渉しているのか?

どうやら交渉はプーチンが抵抗できない罠のようだ。この停戦はミンスク合意の時と同様、プーチンにとってさらなる8年間の欺瞞になるのだろうか?

エネルギー基盤施設に限定された停戦の署名のインクがまだ乾かないうちに、合意の翌日にはウクライナ領内の何者かが発射したミサイルやドローンがロシアのクラスノダール地方の石油貯蔵庫を襲い、先週金曜日にはスジャのガス計量ステーションを爆破した。

ロシアはどうしたか?プーチンは24時間以内に相手側が合意に違反した、と発表し、3年間ぐずぐず続けた戦争の末、ついに紛争を終わらせるために必要な武力を行使したのか?いや。軍事的勝利は交渉を排除することになり、交渉はロシアにとって完璧な失敗例となってきた事実にもかかわらず、プーチンは交渉こそが最も価値がある、と考えているようだ。交渉を継続する決意をしたロシア政府は、いつか行使できる「報復する権利を留保」している、とでもいうのだろうか。

プーチン大統領は、交渉を続けるために勝利を遅らせるつもりのようだ。プーチン大統領は、米国側との代理戦争はロシアの軍事的勝利ではなく、交渉による解決で終わらなければならない、と決意しているようだ。

プーチン大統領は、条件の一つは、ロシアが再編入した地域がロシア領であると米国側が認めることだ、と述べている。ロシア側の報道によると、プーチン大統領は、この承認と引き換えに、黒海の港湾都市オデッサとロシアの都市ハリコフを占領しないことを提案した、という。ロシアはこれら2つの都市も奪還するという選択肢もあるはずなのに。
https://www.rt.com/russia/614638-moscow-issues-warning-kiev/

停戦協定違反であるスジャ攻撃に対するトランプの反応はまだ明らかになっていない。おそらく、あれだけ大騒ぎになった後でも、トランプは協定違反が発覚するまで24時間しか続かなかったことを認めたくないのだろう。このように考えているのは、トランプだけではない。どうやらプーチンもこの協定違反を違反とは考えておらず、違反した協定を継続しているようだ。両首脳はゼレンスキーによる違反を違反と見なすつもりはないようだ。したがって、トランプとプーチンの交渉は継続しており、希望は残っている。
https://sputnikglobe.com/20250321/sudzha-strike-zelensky-slaps-trump-in-the-face-by-subverting-ceasefire-deal-1121663106.html

繰り返すが、この紛争を終わらせる最善かつ最速の方法は、トランプがロシアに対する米国側の代理戦争を放棄し、武器や資金、標的情報の供給を止め、制裁を解除し、紛争の解決をプーチンとゼレンスキーに委ねることだ。プーチンが求めることは、交渉の相手として相応しい選挙で選ばれた政府を持つために、ウクライナで選挙をおこなうことだろう。この紛争の解決には、戦地の現状を反映することと、ロシアがウクライナ全土を奪取したり、欧州を脅かすつもりがないことを証明することが必要となるだろう。

ロシアはウクライナに慈悲深くなるだろう。なぜなら、ウクライナは歴史的に見て、ソ連政府の内部政治崩壊後に米国当局によってロシアから切り離された国だからだ。ウクライナが独立国として存在したのはわずか30年だ。ロシアに再編入された地域は、ソ連指導部によってソ連のウクライナ州に編入された、かつてのロシア領土である。

覚えておいてほしいのは、もし米国側とNATOがミンスク合意に従っていたら、ウクライナ紛争は起きなかっただろうし、クリミアを除く現在ロシアの一部となっている領土は、今もウクライナの一部だっただろう、ということだ。西側諸国はロシアに紛争を押し付け、今や紛争の責任をロシアに押し付けている。フランス大統領とドイツ首相が公に述べたように、わが米国は合意を利用してプーチンを騙し、その間に米国はウクライナ軍を作った。紛争は米国側の責任であり、米国側が紛争から撤退すれば簡単に終わらせることができる。トランプの立場から見ればこの紛争に利害関係はない。問題は、交渉を主導することでトランプが望まない利害が生じること、だ。そうなった際、トランプの自分勝手さが頭を持ち上げてきたらどうなるのか、だ。

※なお、本稿は、寺島メソッド翻訳NEWS(2025年4月2日)「ポール・クレイグ・ロバーツ。「ロシア軍による軍事的勝利の方が、交渉よりも平和を速める」」
http://tmmethod.blog.fc2.com/
からの転載であることをお断りします。

また英文原稿はこちらです⇒Is Negotiation the Best Way to End the Proxy War with Russia?
筆者:ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)
出典:自身ブログ 2025年3月24日
https://www.paulcraigroberts.org/2025/03/24/is-negotiation-the-best-way-to-end-the-proxy-war-with-russia/

寺島隆吉 寺島隆吉

国際教育総合文化研究所所長、元岐阜大学教授

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