【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.04.04XML:イスラエルはアメリカにイランを攻撃させたがっている

櫻井春彦

 イスラエルはアメリカにイランを攻撃させたがっている。イスラエルはアメリカ抜きにイランを攻撃できないのだ。

 これは以前から指摘されていたが、イスラエルによる空爆の報復として、昨年10月にイランはイスラエルをミサイル攻撃した。その攻撃でイスラエルの防空システム「アイアン・ドーム」が無力だということが判明している。80から90%が標的に命中したとイラン側は主張しているが、現地から流れてきた映像はその主張を裏付けている。イランがその気になればイスラエルに大きな打撃を与えることができることが示された。

 イスラエルは防空能力だけでなく攻撃能力も劣ることが一連の攻撃で判明している。イスラエルは航空機でイラク、シリア、イランの防空軍を破壊した上で侵入し、選ばれた標的を破壊するはずだったのだが、イランの領空へ侵入することができなかった。防空システムを破壊するための長距離ミサイルを搭載したイスラエルの航空機はイランから70キロ以内に近づかなかったと言われている。

 イスラエルの航空機はテヘラン上空に未知の防空システムを発見したとされているが、これはアメリカの「ステルス戦闘機」を攻撃できるロシアの防空システムだった可能性があるという。ちなみに「ステルス」とは兵器メーカーの宣伝文句にすぎない。どうしてもイランを攻撃したいなら核兵器を使うしかないだろう。

 そうしたトランプ政権の動きに対し、イランは自国が攻撃されたならディエゴガルシア島を標的にすると警告しているが、戦争が始まったならイランは中東全域のアメリカやイスラエルの基地、軍事施設、主要インフラ、石油施設に対する報復攻撃を実施すると推測されている。

 イスラム世界にはイスラエルとの関係を強めようとしている国が少なくない。アラブ首長国連邦を中心とする国々はハマスの降伏と指導者のガザから退去を求めている。こうした要求をハマスは拒否しいた。

 これと似たような出来事が1981年から82年にかけてレバノンで引き起こされている。1981年6月にイスラエル軍はイラクのオシラク原子炉を空爆、その翌月、ベイルートにあったPLOのビルに対する大規模な空爆を実施。1982年1月にイスラエルのアリエル・シャロン国防相がベイルートを極秘訪問、キリスト教勢力と会い、レバノンにイスラエルが軍事侵攻した際の段取りを決めた。

 1月の終わりにペルシャ湾岸産油国の国防相は秘密会合を開く。イスラエルがレバノンへ軍事侵攻してPLOを破壊してもアラブ諸国は軍事行動をとらず、石油などでアメリカを制裁しないことを決め、アメリカに伝えることが目的だった。6月に3名のパレスチナ人がイギリス駐在のイスラエル大使、シュロモ・アルゴブの暗殺を試みた。

 イスラエル人ジャーナリストのロネン・ベルグマンによると、暗殺を命令したのはイラクの情報機関を率いていたバルザン・アッティクリーティだという(Ronen Bergman, “Rise and Kill First,” Random House, 2018)が、この組織には相当数のイスラエルのエージェントが潜入していて、暗殺の目標を決めたのもそうしたエージェントだったともされている。この事件を口実にしてイスラエルは6日、レバノンへ軍事侵攻、1万数千名の市民が殺された。(Alan Hart, “Zionism: Volume Three,” World Focus Publishing, 2005)

 イスラエルは1982年6月にレバノンへ軍事侵攻、8月30日までにPLOは多国籍軍の監視の下、レバノンから撤退する。レバノンのパレスチナ難民キャンプ、サブラとシャティーラでパレスチナ難民が虐殺されたのはその直後のことだ。殺害された難民の人数はイスラエル側によると700名、パレスチナ側によると2750名だ。この虐殺はファランジスト党の武装勢力はイスラエル軍の支援を受けながら無防備の難民キャンプを制圧したうえで実行したと言われている。ハマスがガザからの撤退を拒否する理由のひとつはここにある。

 サブラとシャティーラの虐殺をペルシャ湾岸の産油国は黙認したが、これは支配層の話にすぎない。外交官でもイスラエルに対する怒りは高まっていた。

 西側でもイスラエルが主導したパレスチナでの大量殺戮に反発した人は少なくない。反イスラエル感情はイギリスだけでなくヨーロッパ全体に広がった。それを危惧したロナルド・レーガン米大統領は1983年、メディア界に大きな影響力を持つルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスを呼び、軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」について話し合っている。それがBAP。このプロジェクトの特徴として編集者や記者が参加していることが指摘されている。その結果、有力メディアのプロパガンダ機関化が強化され、状況は悪化し続けている。

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