【連載】情報操作を読み解く(浜田和幸)

第1回 救世主になるのか?ウクライナ戦争の陰で進む昆虫食と人工肉!

浜田和幸

そんな食糧危機が迫りくる中、国際的に関心が高まってきているのが「昆虫食」に他なりません。国連食糧農業機関(FAO)も昆虫食を推奨する報告書をまとめたほどです。それによれば「2050年に世界人口は90億人に達すると予測される中、地球温暖化による異常気象が顕在化しており、温室効果ガスの発生を抑え、地球の負荷の少ない食料としての昆虫食が優れている」とのこと。

Young man eating insects, seasoned grasshoppers, entomophagy concept, mexican food

 

確かに、昆虫全般に当てはまるのですが、タンパク質を多く含む種類が多いのです。イナゴもコオロギも高タンパク質低脂肪が特徴となっています。それ以外にも、昆虫にはカルシウム、マグネシウム、リン、銅、亜鉛などミネラル分を豊富に含むものがいくつも存在しているのです。また、昆虫はタンパク質に加えて、身体に良いとされる不飽和脂肪酸を含むものが多く見られます。

FAOの報告書によれば、「昆虫食こそ今後の食料としては最適」とのこと。なぜなら、第一に、飼料変換効率が抜群であるからです。例えば、牛肉を1㌕増やそうと思えば、10㌕の餌が必要となります。ところが、コオロギの場合は2㌕の餌で十分です。しかも、コオロギの可食部率は80%と高く、変換効率で比較すれば牛肉の12倍にもなります。

第二に、メタンや二酸化炭素など温室効果ガスやアンモニアの排出量が少ないため、地球温暖化に対する抑制効果が期待できるわけです。メタンは牛など草食動物の腸内発酵によるゲップに多く含まれています。

第三に、環境汚染の低減や土地や水の節約にも役立つという点が指摘されています。なぜなら、人間の廃棄物で昆虫を育てることが可能であり、廃棄される生ごみを半減させることにもつながるからです。しかも、家畜と比べはるかに狭い土地と少量の水で飼育できる点も強みになります。

実は、地球は「虫の惑星」でもあります。極地を除けば、地球上にあまねく存在しているからです。日本だけでも10万種類を超える昆虫が確認されています。あのビル・ゲイツ氏やジェフ・ベゾス氏、そしてハリウッドスターのデカプリオ氏らも代替肉や昆虫食に関心を寄せ、投資に熱心と言われているほどです。

しかし、最近、その昆虫類にも絶滅の恐れが出てきたとの指摘が相次いでいます。というのも、熱帯雨林が毎日8万エーカーも消滅中のため、そこに生存してきた昆虫類の75%から90%が絶滅の危機に瀕しているというのです。

「人類の生き残りにとって切り札になる」と期待の高まってきた「昆虫食」ですが、決して楽観できそうにありません。なぜなら、気象学の専門家によれば、毎日200種類の植物、鳥、動物、魚、両生類、昆虫、爬虫類が絶滅中であり、既に2万6000種類は絶滅の危機に瀕している模様ですから。

ウクライナでの戦争が米ロの核兵器の応酬になりかねない事態も憂慮されますが、地球全体が人も魚も動物も住めない環境に陥っていることも大いに気になります。それだけ生物圏(地表、水、大気)が汚染され、破壊されてしまえば、人類だけが生き残れることはあり得ない話です。そうした危機的状況を受けて、先のFAOの報告書がまとめられたに違いありません。それだけ、人類にとっては「食生活、生活スタイル」を根本から見直す必要があるということでしょう。

「ウクライナが困っているから武器やお金を送れ」ということでは済まない危機的状況が全人類を飲み込もうとしているのです。しかも、FAOが提唱する「昆虫食」ですが、肝心の昆虫そのものが絶滅の危機に瀕しているわけで、これでは人類は救われません。

そこで、「待ってました」とばかり登場してきたのが、救世主を自任するビル・ゲイツ氏。コロナ用のワクチンでも大儲けしていますが、食糧危機にかこつけて「代替肉(プラントベースミート)」の普及に本腰を入れています。「ゲイツ氏に続け」とばかり、今や世界では70を超える企業が人工肉の生産に着手しているのです。

Germantown, MD, USA 01-15-2021: Two popular vegan meat alternative brands Impossible and Beyond beef are sold side by side on a grocery shelf. These are plant based cholesterol free products.

 

要は、肉も魚も野菜も全て人工的に作るという壮大な「人類救済計画」が緒に就いたわけです。果たして、どのような結末となるのでしょうか? 人工肉の人体への影響は「未知の世界」です。これだけ生物圏の崩壊が続けば、「人類だけが生き残れることはあり得ない」という悲観的な結論に至るのも当然で、起死回生の一打となれば良いのですが……。

今なら、春夏秋冬、自然の恵みを思う存分に楽しめます。とはいえ、そうできるのは「あと4年しか時間的猶予がない」のかも知れません。人間と自然の共存共栄に舵を切る最後のチャンスを生かせるかどうかで、我々の未来は決まるはずです。

ビル・ゲイツ流の「代替食」に望みを託すのか、それとも、人間が自然の一部であることにもっと思いを致し、今こそ日本的な「もったいない」の省エネ・ライフスタイルと「助け合い」の精神を発揮するのか。健康長寿の食文化と自然との共生を世界標準とすることで、人類の滅亡を食い止める先頭に日本が名乗りを上げる好機到来とすべきだと思います。

 

※ウクライナ問題関連の注目サイトのご紹介です。

https://isfweb.org/recommended/page-4879/

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https://isfweb.org/2790-2/

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浜田和幸 浜田和幸

国際未来科学研究所代表、元参議院議員

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