第2回 自衛隊鹿屋基地への無人偵察機配備がもたらす日米軍事一体化の流れ
安保・基地問題なぜ、それが鹿屋に来るのか?
「アーミテージ・ナイ・リポート」と呼ばれる文書がある。リチャード・アーミテージ(元国務副長官)、ジョセフ・ナイ(ハーバード大教授)ら知日派の米高官らがまとめた「日米同盟」に関する対日勧告文書だ。その「第4次アーミテージ・ナイ・リポート」(2018年公表)に、
「日米は、米軍と自衛隊が別々に使用している基地の統合と共同使用に向けて動くべきだ。最終的に在日米軍は、日本の国旗を掲げた基地から部隊運用すべきだ」とある(下線部は“Japanese flagged bases”と書かれている)。
同リポート提言が「日米同盟」がめざす方向を先取りしてきたのは周知の事実だ。第1次~3次(2000年、07年、12年)提言は「時代遅れの集団的自衛権」、「武器輸出3原則の撤廃」に置かれ、それは安倍政権の「安保法制」により果たされた。つぎの目標が「基地オープン化」、すなわち「自衛隊基地の米軍使用」なのだ。鹿屋ケースが自衛隊基地使用の第1号になる(逆のケース「米軍基地の自衛隊使用」は沖縄で徐々に本格化しつつある)。
そのことを念頭に置くと、「鹿屋基地への米軍一時展開」は、やがて日本の自衛隊基地すべてに及ぶ可能性があると受けとめておかなければならない。つまり「日米軍事一体化」といわれる現象は、鹿屋を突破口として全国の自衛隊基地に波及する、と認識する必要がある。
辺野古新基地のケースを考えてみればいい。返還合意から四半世紀以上たってもまだ完成しない。米軍基地の新設はそれほど難しい。そこで、基地の効率的な運用や一体的な作戦行動のために、米軍が自衛隊基地を使用できるようにして、「最終的には、すべての在日米軍は日本国旗を掲げる基地から運用すべきだ」というのが米軍側の狙いとなる。
自衛隊基地は全国各地にあり、自治体や地元住民と良好な関係も築いてきたので、コスト面も、政治的なハードルも敷居は高くない、そう踏んでいるのだろう。とくに九州・沖縄の自衛隊基地は、対中包囲網の形成にあたり地政学的に重要な拠点になりうる。
使いたい基地を、使いたい時に、使いたい期間だけ使う――鹿屋基地への米軍の一時展開は、そんな方向に向かう地ならしになりかねない。
だから「MQ9鹿屋移駐」を、「米軍基地拡張の一形態だ」と受けとめなければならない。米軍への基地提供は「日米地位協定」第2条に規定されている。そこでは「a 米軍が基地を使用していないときは自衛隊が一時的に使用できる」、またb項では「自衛隊基地を一定の期間を限って米軍が使用する」場合が定められている。
だから「1年程度」と期限を区切っているのだろう。だから問題なし、と防衛省は判断した。しかし、そのような基地拡大政策を許してはならない。
MQ9リーパーは、正確には「無人偵察機」ではなく「無人攻撃機」である。中国側もそう受けとめているだろう。配備段階から、鹿屋市は中国に「標的」とされる。戦闘になれば真っ先に攻撃目標になる。
第2に、100人以上とされる運用要員が配備期間中、「鹿屋市内のホテルに滞在する」という問題も大きい。海自鹿屋基地に受け入れ能力がないためといわれるが、配備期間中、ホテルは実質的な「米軍基地」となる。こんな「基地」は初めてだ。そうした既成事実がまかり通れば、全国どこにでも「米軍基地」ができてしまう。
こんな形の「全土基地化」が進行している事実を、ぜひ知っておいてほしい。
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1938年福岡県生まれ。長崎放送記者を経て71年よりフリージャーナリスト。著書に『棄民の群島 ミクロネシア被爆民の記録』(79 年時事通信社)、『戦略爆撃の思想 ゲルニカ―重慶―広島への軌跡』(88年 年朝日新聞社)など。近著『敵基地攻撃論批判』(2020年 立憲フォーラム)、『進行する自衛隊配備強化と市民監視』(21年 平和フォーラム)など