【連載】櫻井ジャーナル

【櫻井ジャーナル】2025.05.05XML: イランとの戦争へ米国を引き込もうとしていたウォルツ大統領補佐官を解任

櫻井春彦

 国家安全保障担当補佐官を「辞任」したマイケル・ウォルツをドナルド・トランプ大統領は国連大使に指名すると発表された。この人事はイエメンに対するアメリカ軍の爆撃計画に関するチャット漏洩が原因だと言われている。この漏洩は3月24日に発覚した。

 今回の人事を議会が承認すれば、ウォルツはマルコ・ルビオ国務長官の下で働くことになる。要するに降格だ。ルビオもトランプと同じようにシオニストだが、ウォルツほど狂信的ではない。大統領の考え方を体現しているのはスティーブ・ウィトコフと言えるかもしれない。

 この機密事項に触れるチャットは安全性が高いとは言えないメッセージング・ソフトウェアのSignalを利用して行われた。参加したのはJD・バンス副大統領、ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官、ピート・ヘグセス国防長官といった政府高官、そしてアトランティック誌のジェリー・ゴールドバーグ編集長だ。ゴールドバーグは本来、参加できない人物だったが、国防総省の幹部が彼を参加者リストに載せたのだという。ゴールドバーグが受け取ったメッセージの中には攻撃の予定表と配備される航空機が含まれていた。この漏洩問題に関し、バンス副大統領らはウォルツ大統領補佐官の更迭をトランプ大統領に提案していたと伝えられている。

 ​ワシントン・ポスト紙によると、トランプ大統領がウォルツ大統領補佐官を解任したのは漏洩事件だけの問題でなく、積み重なった不満の結果だという​。元グリーン・ベレー隊員に対する不満が徐々に蓄積された結果だった。

 ウォルツは大統領執務室の上司よりもはるかに軍事力行使に積極的だと見られ、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しいことでも知られている。トランプ大統領と大統領執務室で会談する前に、イランに対する軍事オプションについて綿密な調整を行うような間柄だったという。

 ネタニヤフの父親はアメリカでウラジミール・ジャボチンスキーの秘書だったベンシオン・ネタニヤフであり、この親子はジャボチンスキーを結成した「修正主義シオニスト世界連合」に属している。ベンヤミンを背後から操っているのは、これまでさまざまな秘密工作に参加してきたネオコンのエリオット・エイブラムス。この人物はトランプ大統領をイランと戦わせようと画策、ウォルツはその仲間とも言えるだろう。

 ジャボチンスキーはオデッサで生まれ、ウクライナで独立運動を率いていたシモン・ペトリューラと連携したが、ペトリューラは1918年から21年にかけての時期、ロシアで3万5000人から10万人のユダヤ人を虐殺したと言われている。(Israel Shahak, “Jewish History, Jewish Religion,” Pluto Press, 1994)

 トランプ政権のイランに対する「制裁」のターゲットはイランの石油を輸入しているインドや中国ではないかという見方もある。インドはパキスタンとの間で軍事的な緊張が高まり、アメリカ軍は中国と戦争する準備を進めてきた。

 2017年11月にアメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更し、さらにJAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なるものが作られている。​アメリカの軍事顧問団は金門諸島と澎湖諸島に駐留して台湾の特殊部隊を訓練​。2020年6月になるとNATO(北大西洋条約機構)事務総長だったイェンス・ストルテンベルグはオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言し、2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。

 また、アメリカの軍事戦略に基づいて2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設されたのに続き、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設が完成。これは中国や朝鮮を攻撃する準備にほかならない。今後、南西諸島の周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性がある。

 ​共同通信は3月16日、日本政府が九州に陸上配備型長距離ミサイルの配備を検討していると報じた​。緊急事態の際に敵の標的を攻撃する「反撃能力」を獲得する取り組みの一環だという。そのミサイルとは、射程距離が約1000kmの12式地対艦誘導弾能力向上型で、配備は2026年3月に始まるとされている。

 アメリカの軍事戦略を​国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年の4月に説明している​。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表したのだ。

 彼らは日本を侵略の拠点と認識、軍隊を駐留させ、日本人を傭兵化してきた。日本が大陸を攻撃するための「大型航母」だとするならば、台湾は「小型空母」であり、朝鮮半島は橋頭堡だ。この構図は明治維新以降、変化していない。戦争が勃発した場合、朝鮮半島では地上戦が想定され、朝鮮軍と韓国軍が衝突することになるだろう。

 ロシアのドミトリ・ペスコフ大統領報道官は4月26日、ロシア軍のバレリー・ゲラシモフ参謀総長がウラジミル・プーチン大統領に対し、ウクライナ軍からクルスクを解放する作戦が完了したと報告したと発表した。ロシア政府や朝鮮政府は朝鮮軍の将兵1万数千人がクルスクでの戦闘に参加したと推測されている。この地域の戦闘で7万6000人以上のウクライナ軍兵士が死傷、その程度の戦闘が展開されたということで、朝鮮軍部隊が戦況に大きな影響を及ぼしたとは考えられない。またロシア軍はこの先の戦闘を睨み、余裕を持って戦っている。

 朝鮮軍部隊は包括的戦略的パートナーシップ条約に基づいて戦闘に参加したのだろうが、明確なロシア領であるクルスクは「最適な場所」だと言えるだろう。その場所で朝鮮軍の将兵は実戦で現代の戦い方を学んだ。これまで資源などの不足から大規模な演習ができず、武勇伝の中で生きていたであろう朝鮮軍が現代戦の世界を経験できた意味は小さくない。こうした経験は帰国後に軍全体に伝えられるだろう。万一、朝鮮半島で戦争が始まった場合、ロシア軍が支援することも予想できる。

 ウクライナへはアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、リトアニア、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が入り、戦闘に参加している。しかも​2022年3月1日の時点で約70人の日本人が志願、そのうち約50人は「元自衛官」だとされている​。

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