維新のウソを暴き参院選へ 、「れいわ対維新」のバトル激化
政治・山本太郎代表の街宣回数最多は大阪
れいわ新選組の山本太郎代表は2022年5月20日、東京都内で記者会見を開き、参院選東京選挙区(定数6・7月10日投開票)からの出馬を表明した。同選挙区には前新宿区議の依田かれん氏が出馬表明をしていたが、全国比例に回ることになった。「リサーチを行ない、間違いなく当選のラインに絡んでこられるような状態」との結果を受けて、9年前に初当選した東京選挙区での出馬を決めたとその理由を説明している。
今回改選の東京選挙区は自民と立憲民主が2、公明と共産が1議席を占め、すでにそれぞれの党の現職4人が出馬を表明。加えて自民・立民は新人を擁立し現状維持を狙う一方で、維新、都民ファースト、社民などからの公認候補も出馬予定だ。また、3年前の参院選では維新の元都議が立民の2人目を抑えて6議席目を獲得した。今回も自民と立民の現職と公明・共産が「当確」とされ、残り2議席を自民・立民の新人2人と、前回議席を得た維新や地元の都民ファが争うと予想されていた。
そこにれいわの山本代表が参戦することで、ますます激戦区になり、2021年の総選挙で議席4倍増の日本維新の会の滑り込みを阻止する形となる可能性も出てきたのだ。
山本代表が衆院議員辞職願を出し、参院選出馬会見を開いたのは4月15日。冒頭で「参院選が終わると(2025年の夏まで)最大3年間、国政選挙が行なわれない可能性がある」と切り出し、「『黄金の3年間』とも呼ばれる政治的空白期間に行なわれるであろう政権与党の暴走を、なんとしても食い止めないといけない」と鞍替えの理由を語った。
現状の議席数(衆院3、参院2)では国会論戦の機会が乏しく、政治の暴走を食い止めるには不十分と判断。議員辞職しても次点の櫛渕万里氏が繰り上げ当選となるため、半年足らずで議員バッヂを外して、参院選で再び“山本太郎カード”を使い自党の議席増を狙ったわけだ。
なお参院選出馬会見で山本代表は「比例ではなく選挙区から立候補する」とも明言していた。直後から全国街宣行脚を始め、「街宣をした地域から出る可能性が高い」とも語った。政治的空白期間に自民党が暴走する危険性を各地でアピール、参院選への関心を高めると同時に、「どこから出馬するのか」を探るメディアの関心も引き寄せる狙いも兼ねたものだった。
議員辞職後、最も街宣回数が多かったのは、維新の牙城・大阪。大阪選挙区(定数4・現職維新2、自民・公明1)には元タレントの八幡愛氏が出馬表明をしていたが、22年5月3日の大阪駅前での街宣で山本代表は、大阪選挙区からの出馬(八幡氏は出身地の兵庫選挙区へ鞍替え)の可能性も示唆した。
そこで私が大阪街宣最多の理由について聞くと、山本代表は「大阪の成長を止めるな」というキャッチフレーズに代表される維新の“虚言癖”と地元メディアの垂れ流し報道を問題視したうえで、次のように訴えた。
「(維新のキャッチフレーズと違って)大阪は成長していない。みんなの賃金は上がっていない。日本の中で大阪はむちゃくちゃ大きな都市なのに大阪を成長させる力がない。コロナの中でも全国で一番住民の命を奪った。そのような行政能力のなさが、このマスコミの洗脳、垂れ流しによって正確な判断ができなくなっているのですね。ここに対してインフォメーション(情報提供)をした方がいいだろうということで大阪に入っています」。
れいわの街宣の特徴は、大型モニターに文書やデータを映し出して説明することだ。この日も山本代表は、すぐに大阪を含む府県別の実質GDPと県民所得の推移をグラフで示し、「(両グラフとも)大阪は滋賀県にも負けて京都府にも負けて兵庫県にも負けて全国平均にも負けている。『大阪の成長を止める』などころか、大阪を成長させていない」と結論づけたのだ。
山本代表の批判の矛先は、在阪メディア(特にテレビ)にも向かっていた。維新の嘘を垂れ流して“巨人化”させている要因だと批判した。
「この悪質な維新に加担しているのはテレビです。(拍手)皆さん、カメラマンのせいではないですよ。『テレビに映っているから何となくやってくれるのではないか。男前やな、勢いがあるから頑張ってくれるのではないか』(と思わせている)。でもデータで見て」
・カジノ誘致でも維新の嘘
れいわ新選組は政権与党(自公)だけでなく、 今や“第二自民党安倍派”のような維新との対決姿勢も鮮明にしてきた。21年の総選挙直後の東京・新宿街宣でも山本代表は、維新キラーこと大石晃子衆院議員(比例近畿ブロック)とともにマイクを握り、自民以上に憲法改悪に前のめりな維新を「火事場泥棒」と一刀両断。維新の目玉政策であるカジノ(IR)誘致についても候補地・大阪で反対する街宣を繰り返してきた。
大阪へのカジノ誘致の是非を問う住民投票の署名活動が3月25日に始まった翌日には、「一か八か、カジノで大儲け!あなたは賛成?反対?」と銘打った街宣を大阪駅前で行なった。この時は山本代表と大石議員に加えて八幡氏がそろい踏み。カジノ誘致の問題点を説明しながら、住民投票を求める署名への協力も呼びかけたのだ。
山本代表は2020年11月、大阪都構想の住民投票にも否決のために尽力していたが、その時に匹敵するほどの“全力投球”だった。当時も大阪に長期滞在してゲリラ街宣を繰り返し、強面2人組とキャバ嬢の会話から都構想の問題点を解説するミニ動画「仁義なき都構想(抗争)」も制作、今回もカジノ大阪誘致の嘘を暴くミニ動画を作り、モニターに映し出した。
参加者の反応は上々。維新代表の松井一郎・大阪市長が「違うんですよ。IRに公金を投入しません」と叫ぶ場面から始まり、次に「夢洲整備費総額1500億円超 大阪市が試算」と報じた今年2月のニュースが映し出される。「大阪市はカジノの建設地の整備に公金788億円が必要と試算」、しかし「予定地全体では2697億円を使うようです」と、松井発言の嘘を暴く流れになっていた。
続いて動画では維新副代表の吉村洋文・大阪府知事の「民営事業ですから公でお金を出すものではありません。勘違いされていると思いますが」という発言も紹介。維新ツートップの嘘を浮き彫りにしたところで終了した。すかさず山本代表が再びマイクを握って「『公金たっぷり投入してるやん』というお話です」と強調、署名への協力も呼び掛けたのだ。街宣場所のすぐ隣には署名のテントが設置されていた。
カジノの予定地は、大阪湾の人工島・夢洲。廃棄物を使って埋め立てたことから「ゴミの島」とも呼ばれる。当然、軟弱地盤であることから地震で液状化する恐れがあり、有害物質の無害化も必要。公金を投入せざるを得なくなったのはこのためだ。しかも、さらに膨らむ恐れがあると山本代表は警告を発していた。
「(カジノ事業者の米国企業)MGMに撤退されないためにどんどんお金を投入していく。当然、しわ寄せがいくのは、皆さんの行政サービスが削減されていくことにつながっていく。だからカジノ賛成でも反対でもどちらでもいい、その意思を示せるような場をみんなで作りませんか」。
住民投票条例制定を知事に請求するのに必要な署名数は、有権者の50分の1(約14万6千人)。有効な署名数がこれを上回れば、吉村知事は議会を招集、意見を添えて条例案を提出しなければならない。維新のトップに決断を迫ることができるのだ。
1957年山口県生まれ。選挙取材に定評をもつ。著書に『亡国の首相安倍晋三』(七つ森書館)他。最新刊『岸田政権の正体』(緑風出版)。