
【櫻井ジャーナル】2025.05.22XML:ナチスと同じようにロシア侵攻を目論むNATOを許さないロシア
国際政治ドナルド・トランプ米大統領は5月19日にウラジミル・プーチン露大統領と電話で会談した。トランプはウクライナでの停戦を短期間で実現すると宣伝していたが、状況をウォッチしていた人なら、そうした展開にならないことを予測していたはずだ。戦況はロシアが圧倒的に優勢であり、基本的に自給自足のロシア経済は西側資本の撤退でビジネスチャンスが膨らんで好調、兵器の生産力も強化されてきた。こうした実態をトランプは知らされていないのではないか、と言う人もいる。
戦死者の遺体交換を見ると、今年5月はウクライナ兵909名に対し、ロシア兵は34名、約27対1だ。これは戦死者数の比率が反映されていると考えられている。ウクライナでは街頭で男性が徴兵担当者に拉致される様子が撮影され、世界に発信されているが、そうした強引なことをしても兵士は足りなくなっている。拉致され、前線に送られた人たちは数週間で殺されているともいう。
2023年8月31日までイギリスの国防大臣を務めていたベン・ウォレスは同年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘していた。現在の状況は当時よりはるかに悪化している。ウクライナを舞台として戦争でNATOやウクライナはロシアに負けたのだ。しかもロシアは欧米から煮湯を飲まされてきたのであり、安易に停戦するはずはない。
トランプとの電話会談でプーチンは危機の根本原因を排除することが最も重要だと語ったと伝えられている。根本原因とはNATOの東への拡大、つまり「ネオ-バルバロッサ」の阻止にほかならない。
バルバロッサとは、1941年6月22日に300万人以上のドイツ軍がソ連を侵略した軍事作戦。ウクライナとベラルーシを経由してロシアへ攻め込んだ。奇妙なことに、この時、西部戦線に残ったドイツ軍は約90万人にすぎない。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したが、アドルフ・ヒトラーに退けられたという。NATOの東方拡大はバルバロッサの再現にほかならない。(David M. Glantz, The Soviet-German War 1941-1945,” Strom Thurmond Institute of Government and Public Affairs, Clemson University, October 11, 2001)
1991年12月にソ連が消滅したとき、西側の支配層は自分たちが冷戦に勝利したと考えた。その後、ロシアではボリス・エリツィンが大統領に就任、その娘であるタチアナ・ドゥヤチェンコがクレムリンの利権を握ったと言われている。その周辺を徘徊、西側の巨大資本の代理人として活動、自分たちも富豪になったのがオリガルヒだ。エリツィン時代に西側資本はロシアで富を略奪、軍や情報機関を弱体化させ、ライバルとして復活できないようにしたはずだった。
しかし、エリツィン時代にロシア人は西側が宣伝していた「自由」や「民主」が幻想に過ぎないことを悟り、欧米信仰に毒された人は急速に減少、反欧米感情が高まり、プーチンの登場につながる。プーチン体制になると西側の手先として暗躍していたオリガルヒに対し、クレムリンに従うことを要求、その要求に従わない人びとは摘発されていく。そして軍や情報機関を立て直し、軍事産業も復活する。
ソ連時代、ロシアはソ連圏の国々を養っていたことから、ロシア人は労働に見合った見返りを得ていなかった。ソ連消滅でロシア人は自分たちの稼ぎが自分たちの利益につながるようになり、国の急速な復活につながったと考える人もいる。
ロシア制圧を目指していた米英支配層にとっても、米英による侵略から自国を守ろうとしてきたロシアにとっても、ウクライナは重要な意味を持っている。そのウクライナを支配するため、アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月にキエフでクーデターを始めた。2014年に入るとクーデターの前線にネオ・ナチが登場、2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ大統領の排除に成功した。
NATOがウクライナを支配するのは時間の問題だと考えた人もいたのだが、ソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部や南部はヤヌコビッチの支持地盤で、住民はクーデターを拒否した。
ロシアの弱体化を目論む西側の勢力はウクライナを均一の国であるかのように主張するが、実際は違う。故ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は2014年3月5日付けワシントンポスト紙で書いたように、ウクライナは複雑な歴史と多言語多文化他宗教の国である。キッシンジャーはこうした国で一方が他方を支配しようとすれば内戦または分裂につながると警告していたが、その通りになった。
ナチスはユダヤ人、ロマ、スラブ人、その他の有色人種などを「劣等人種」として蔑視したが、ドイツ人と同じゲルマン系のアングロ・サクソン人の中にはナチスと同じようにそうした人びとを蔑視しする人が少なくない。こうした蔑視は今も存在、ロシアを殲滅することは容易だという思い込みにつながった。
1993年にマーストリヒト条約が発効したことに伴って誕生したEUの前身はEC(欧州共同体)。このECについて堀田善衛は、その「幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります。」(堀田善衛著『めぐりあいし人びと』集英社、1993年)と書いている。
またEU首脳のほとんどは、ビルダーバーグ・グループとアメリカのエリートが選出しているとも言われている。EUの首脳はネオコンの命令通りに動く「首のない鶏」にすぎない。こうしたエリートは差別意識を持ち、傲慢な政策を打ち出してくる。そうした意識をなくすことは難しい。意識がなくならなくても、ロシアはNATOを拡大させない仕組みを作ろうとするだろう。ネオコンをはじめ、欧米の支配層はそのロシアを殲滅しようとしてきたが、失敗した。失敗の原因は彼らの差別意識だ。
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「ナチスと同じようにロシア侵攻を目論むNATOを許さないロシア 」(2025.05.22ML)
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